「トランプ・ショック」によるリスク回避ムードが一転し、10日の東京株式市場では買いの波が怒涛(どとう)の勢いで押し寄せた。日経平均株価は前日比1092円高の1万7344円まで上昇、前日の下げを解消し、今年最大の上げ幅を記録した。もっとも、このまま全体相場が復調するのかという点では不透明感が残る。まずは米国の政策転換を見極め、今後予想される展開に則した関連銘柄をマークしたい。
ここから狙う古河電工、キトーなど
米45代大統領が共和党のドナルド・トランプ氏に決まり、議会も上院、下院を共和党が制した。いわゆる「ねじれ」は解消。少なくとも形の上で、トランプ氏が政策を存分に実行できる環境は整った。
この日はインフラ投資や減税といった、米国景気に直結するポジティブな要素がクローズアップされた。しかし、一方では保護主義的な通商政策が始まる可能性も高く、日本の輸出セクターにとっては懸念材料が浮上。米国の金融政策に不確実性が強まったことも、今後円高を招く可能性があることから注意が必要だ。
こうした中、米国に生産拠点を持ち、インフラ投資の拡大の恩恵を受けるポジションにいる銘柄に思惑買いが向かっている。建機のコマツ <6301> が一気に年初来高値を更新したほか、現地でH形鋼を生産する電炉の大和工業 <5444> がストップ高。塩ビ工場を持つ信越化学工業 <4063> 、工業用ガスの大陽日酸 <4091> も急騰した。
引き続き注目できる銘柄としては、古河電気工業 <5801> 、キトー <6409> 、FRONTEO <2158> の3銘柄をマークする。
光ファイバー現地一貫生産
古河電工は主力の光ファイバーの需要好調を背景に、今3月期上期(4?9月)の連結営業利益が計画比38億円増の133億円(前年同期比45%増)と大幅に上ブレした。米国に工場があり、光ファイバーの母材となるガラス体からの一貫生産体制を備えている点で優位性がある。
同国ではグーグルとフェイスブックが西海岸と香港を結ぶ海底ケーブルの敷設投資を発表するなど、今後も光ファイバーの需要は堅調に推移する見通し。古河電工は高価格品に強く、利益への貢献も大きくなりそうだ。株価は2013年高値の3260円(株式併合調整)奪回が目前。上抜ければ4000円までフシはない。
インフラ投資など好材料
キトーは工場や建設現場で重量物を持ち上げる「巻上機(ホイスト)」の大手。北米でも業界2位(シェア約4割)に位置する。14年には現地の大手チェーンメーカーを買収し、生産体制を強化した。
インフラ投資の恩恵を直接的に受ける位置にいる上、トランプ氏の政策によって米国の製造業の稼働率が上向くケースでも業況に追い風だ。また、トランプ氏は石炭産業の保護も口にしているため、エネルギー分野での搬送機器需要が拡大する可能性もある。株価は1000円のフシに押し返されてきたが、米国関連株物色の波に乗って新局面入りが期待される。
一方、FRONTEはトランプ関連の穴株的存在。収益の米国依存度が高く、現地のナスダック市場にも上場している。AI(人工知能)技術を駆使し、法的紛争における電子データの収集、解析が主力。一見、今回のテーマには縁がないようにも思えるが、米景気が改善して企業活動が活発化すれば、それだけ訴訟も増える可能性が高い。株価は13週移動平均線を足場に巻き返しが見込まれる。(11月11日株式新聞掲載記事)
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