ドル円予想レンジ 111.20- - 115.75

「US Treasuries sell-off continues as inflation fears mount(インフレ懸念が高まる中、米国債売りが続く)」-。これは11/24の英経済紙の見出しだ。市場ではトランプ次期米大統領による、金融規制緩和、大型の国際法人減税や1兆ドルのインフラ投資、財政拡張政策、HIA本国投資法等々の観測の拡がりを見せている。

不透明なトランプ施策は「PPAP」

巷では”PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen/ペンパイナッポーアッポーペン)“の楽曲が話題だ。これを引き合いに出すならドル円と共通するのは勢いが圧倒するテンポ感となろうか。

トランプ氏の施策は最終的には財政悪化懸念に繋がるとして、米債増発/米金利上昇(債券価格下落)、そしてインフレ見通しに転じれば今後のFRB金融政策もタカ派色を強めざるを得ない、との見方がある。それを受けたドル円は半信半疑の状態のまま前月末比(11/24終値時点)で約8%、8円幅のドル高・円安がアップテンポで進行した格好だ。

しかし短期的にはドル高としても、中期的には米債乱発がドル高の持続性に繋がるかは懐疑的だ。トランプ氏の過激な主張も共和党主流派は、財政赤字の拡大に反対の立場であるため、実現可能性は不透明。

トランプ政権の新閣僚人事や経済政策の骨格が固まらない上、選挙スローガンでのドル高円安牽制や低金利政策が本当に実施されるのか確信が持てない中では、前出の“ペンパイナッポー”のようにリズムトレンドが続くとは読み難いのだ。

求められる本来のドル円「PPAP」

では、本局面では何がドル円に求められるのか。本来のPPAPとは“Production Parts Approval Process”、つまり自動車業界では「生産部品の承認手続」を指しており、自動車メーカーの設計仕様・要求仕様に則った承認プロセスを納品企業が段階的にこなす動きのことだ。対して今般のドル円“PPAP”はテンポに煽られた感が強く、ドル高プロセスとした承認手続き、仕様が見いだし難いのが実際だ。

明確なのは11/17に日銀が初めて実施した指定価格での国債無制限購入(指し値オペ)が本邦長期金利上昇の抑制となり、日米金利格差で円のインセンティブ低下を示しただけなのではないか。

11/28週のドル円は12/2の米雇用統計が好感視され、改めてドル買い大義を明確に出来るかが問われそうだ。テクニカル観点では週足一目均衡表雲の帯内(111.65-115.41)を主戦場と推考。上値焦点は3/2-10高値114.455-575、2/9高値115.75。下値焦点は11/23の22時過ぎから生じた112.30-111.20上昇帯維持。維持が失敗すれば11/23安値110.85、11/22安値110.265が試されそうだ。

為替見通し11-25

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト