ストレスチェック,職場,労働環境
(写真=PIXTA)

ストレスチェック制度が義務化され、ちょうど1年。職場のメンタルヘルス対策として導入されたが、報告義務はあっても実施しないこと自体に罰則規定がないことから、いまだ実施していない企業も多い。

実施した企業でも、「実施して終わり」となってしまい、あまり効果を感じていないという声がよく聞かれる現状は非常にもったいなく残念に思う。

どう活用したらいいか分からないのが課題解消のため、せっかく実施したものを無駄にしないためにすべきことを、心理カウンセラーの視点からお伝えする。

ストレスチェックは健康診断と同じ

ストレスチェックは健康診断と似ている。年に1度受診する点だけでなく、分かるのが現状であって健康になれるかどうかはその後の本人の取り組み次第という点も同じだ。ストレスチェック後の取り組みも、体の健康と同様に考えると分かりやすい。

この視点からまず取り組んで欲しいことは、ストレスチェックの習慣化である。血圧や血糖値、コレステロール値など、正常の範囲であっても気になる数値は病院に行くなどして定期的にチェックするだろう。これは自分の健康へ関心を持つ意味でも、病気を未然に防ぐ意味でも効果的だが、同じことをストレスについても行うべきだ。

厚生労働省のWebサイト「こころの耳」にある「 5分でできる職場のストレスセルフチェック 」など、インターネット上で無料でできるものも多く、これで十分なので、3カ月に1度はチェックするのが望ましい。

繁忙期や、異動などで職場の人間関係に変化があった後はメンタル不調を起こしやすいので、これに該当する時期には欠かさず行い、結果を記録として残しておくと良いだろう。

カウンセリングは早めに受けるべき

2つ目に挙げるのは、カウンセリングの受診である。「カウンセリングは病んでる人が受けるもの」と考えている人も多い。だが私は「病まないために受ける」人がもっと増えて欲しいと思っている。というのも、カウンセリングでお会いする方の多くは、もっと早くに相談していれば休職や離職をせず、そこまで苦しまなくて済んだはずというケースが多いからだ。

最近では、体の健康向上のためにパーソナルトレーナーについてもらい、トレーニングに励む人も増えているが、心理カウンセラーも同様のイメージで考えると良い。

特にストレスで困っているわけでなくても、もう少しメンタルを強くしたいと考えているのであればカウンセリングは有効だ。現状にあったメンタル強化プランを提案し、継続サポートも受けられる。仕事をより意欲的に取り組めるようになるので、メンタル不調の予防だけでなく、日常への満足度向上も期待できるはずだ。

正しい知識は心を守る

心理学を学ぶなどしてメンタルヘルスのリテラシーを向上させることも勧めたい。ストレスやメンタルヘルスという言葉は当たり前のように聞かれるようになったが、まだまだ心の問題について正しい知識を持っている人は少ない。

たとえばメンタル不調にしても、労働時間や職場環境ばかりが問題視されるが、実際にはそれだけではなく、個人個人が持っている思考のパターンが大きな影響を及ぼしていることはあまり知られていない。心に関する正しい知識を持つことは、ストレスに強く慣れるだけでなく、職場のメンタルヘルス向上への貢献にもなる。最低限、「ストレスとは何か」「心を苦しめる思考パターン」「精神的に弱っている人との接し方」くらいは学んでおくべきだろう。

他にも、アドラー心理学やマインドフルネスなど最近注目されているものは抑えておくと良いだろう。1点、可能であればこれらの学びは従業員研修として企業が専門家を呼び、従業員全体に実施することが望ましい。職場全体に、心の健康を意識させることができるためだ。

ストレスチェックはきっかけに過ぎない

最後の4つ目として勧めるのは、仲間を作ることだ。何事もそうだが、ストレスチェックを無駄にしないための取り組みも、仲間がいてこそ続けられるもの。チェックの結果などについて気兼ねなく話し合うことは、メンタルヘルスへの関心を維持する効果が期待できる上に、そうした話し合い自体がストレス発散にもなる。

ストレスチェックはその結果よりも、自身の心に関心を持つきっかけとなることに大きな意味がある。この機会に、手軽にチャレンジできそうなことから、是非行ってみてほしい。

藤田大介 DF心理相談所 代表心理カウンセラー この筆者の 記事一覧

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