ANA,JAL,航空,決算
(写真=PIXTA)

航空各社の第2四半期決算が発表された。特にJAL(日本航空 <9201> )とANA (全日空ホールディングス <9202> )の業績では、減収減益となったJALと減収ながらも増益を維持したANAとの明暗がはっきりと分かれた。

ここ数年は原油安の傾向に加えて、一時の円高傾向など航空各社にとっては追い風ともいえる経済状態が続いていた。しかし今後は米国大統領選後の急速な円安やOPEC減産合意を受けた原油市況の上昇などが次第に航空各社の企業業績を圧迫する要因となっていきそうだ。

ちなみに第二四半期までのJALとANAの業績を見ると、前年同期比でJALの売上高は5.2%減、営業利益は23%減となり、一方のANAの売上高は2.9%減、営業利益3.2%増となっている。ちなみに通期の業績予想は両社ともに下方修正を行っている。

外部環境が厳しくなることが予想される中、減収増益を成し遂げたANAの企業努力がどのようなものだったのだろうか。

JAL決算ハイライト 熊本地震後、復興割を利用して九州観光活性化に注力

決算書に目を通すと、JALの場合には、熊本地震の影響による九州発着の路線の旅客需要の減少がみられたものの、その後の復興割を利用した九州の観光事業の活性化に力を入れているようだ。その甲斐もあって、国内線の旅客収入の減少は前年同期比で1.3%の減少に抑えられている。

また海外から日本への旅客数は堅調に推移している一方で、日本から海外への旅行需要が減少しているようで、これが減益の要因につながっている模様だ。国際線の旅客数は前年同期比で9.6%と大きく下がってしまっている。

インバウンド需要のさらなる取り込みを目的としたJALとドラえもんのコラボイベントなどを行うも、日本から海外への旅行需要の減少を穴埋めしきれなかったようだ。

ANA 決算ハイライト 成田-プノンペン路線の開設など

一方で、ANAの場合には、まず国内線においては熊本地震等の震災の影響があり旅客収入の減少の割合が前年同期比で1.7%の減少となっている。国内線でみるとJALとの違いはほとんどないといえる。

9月に台風災害時の釧路~札幌間の臨時経由を定めたり、熊本震災の復興を目指すとの名目のもと「九州復興割」制度を活用した旅行商品を充実させたりといった一定の対策を打っている。

一方で海外からの客足は、ビジネス面で活用する顧客も多く、前年同期比で客足は0.2%の減少にとどまっている。路線ネットワークでは、日本から唯一の直行便となる成田-プノンペン線を新規開設したり、フランス・スペイン・ベルギーなどに欧州発プロモーション運賃を宣伝したりすることでインバウンド需要の取り込みに努めたようだ。

国際線旅客収入が大きく減少したJALと減少幅を小さくとどめたANAでまず売上高減少幅に違いが生じたといえる。それに加えてANAの決算書にあるように事業規模を拡大しながらもコストマネージメントにおいて費用抑制に努めている模様だ。売上が微減ながらも営業利益増を成し遂げることができた理由はこのあたりにありそうだ。

為替や原油などの商品市況の経済環境は同じ条件の下で、業績における両社の差は国際線の旅客収入を維持できたかどうかと費用を抑制できたかどうかという2点がおおきく影響したようだ。

今後は、経済などの外部環境が航空産業にとって厳しい状況になるほど国際線を使用する旅客数をいかに増加させるかという「本業のちから」と「新たな試み」が試されるといえそうだ。

株価推移は?

JALの株価は順調推移していたものの、現在は調整中だといえる。2016年が開始されるまでは4345円と高値付近で推移していたものが現在は3315円と23.7%の下落幅となっている。一方でANAの場合には、2016年開始時には342円だった株価が現在310円と10%ほどの下げにとどまっている。

業績の下方修正幅の大きさがやはり株価にもしっかりと反映されているようだ。新興エアラインのスターフライヤーのように年間ベースで株価の上昇がみられる企業とは大きく異なる様相を呈しているものの、大手の航空企業にしてはANAの株価の底堅さが確認できる。

ただ、現在のANAの株価を業績面からみてみると同業他社に比べて割安とは言えないようだ。

株価に対する業績の割合を指標面(PER=低いほど割安)から確認してみよう。ANAが13.59倍、スターフライヤーが7.45倍、JALが7.46倍とANAの株価の割高さが目立ってしまっている。

今後、業績の下振れなどがみられるようであれば、ANAの株価も落ち込む可能性があることは否定できないだろう。

結局のところ外部環境による影響は両社ともそれほど大きな違いはなく、企業利益の差をつけたのは本業がうまくいっているかどうかなのだ。日本でもカジノの実現や海外からの顧客増が予想される。航空業界の今後の展開から目が離せない。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学を卒業後、証券会社において証券ディーリング業務を経験。ヤフーファイナンスの「投資の達人」においてコラムニストとしても活動。2015年には年間で「ベストパフォーマー賞」「勝率賞」において同時受賞。個人ブログ「 インカムライフ.com 」を運営。著書に『元証券ディーラーたにやんの超・優待投資 草食編 Kindle版』(インカムライフ出版)がある。

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