富裕税とは
「富裕税」とは、国民1人1人の財産の総額に応じて課される税金です。土地や建物の評価額に応じて課税される点は固定資産税のシステムと類似するものの、預貯金や株式や有価証券にも課税される点が異なります。フランス・スイス・オランダ・ノルウェー・スペイン(2008年廃止)等の欧州でよく課税されており、所得税では実現困難な「富の偏在の是正」を目的とする様ですが、あまり税収としては期待できないと言われます。
日本でも一時期富裕税が存在していました。1950年に所得税の最高税率を大幅に引き下げました(85%→55%)時、それを補完する税金として0.5%~3.0%の富裕税が課税されました。しかし、個人の財産状態を把握するのが難しく、1953年に廃止(と同時に所得税の最高税率を65%へ引き上げ)されました。
富裕税再導入が検討されつつある日本
現在の日本では富裕税の再導入が検討され始めました。政府や与党からは同様の意見が出ていないもの、共産党や日本維新の会に所属している人間の一部が富裕税の再導入を主張しています。共産党の志井委員長の発言を聴く限り、富裕税を導入することにより、毎年約20兆円の税収が見込まれる(基礎年金の支払い金額に匹敵)と言われますが、他の人間が綿密に検証した所、徴税可能な金額はどんなに高く見積もっても約13兆円に留まると言われます。また、果たして本当に富裕税の範囲に入るのか微妙ですが、固定資産税では課税されない株式や有価証券と言った分離課税により優遇されている財産に対して一定税率を課税して、全体の弱い所を埋める意見もあります。色々な意見が出てくるのは良い点です。ただし、富裕税を再導入するに当たって異論反論が多いため、実際に導入されるかどうか未定です。
富裕税のメリット:所得税とは異なる再配分が期待できる点
富裕税のメリットは、所得税では実現不可能な効果が実現可能な点です。所得税では所得に応じて課税される税金のため、財産が多くても所得が少ない人、要するに「金持ちのドラ息子」の税負担が軽い問題点を解決できません。また、日本では金融商品が分離課税される関係上、株式の取引で収入を得ている人が実労働により収入を得ている人より税負担が軽い問題点もあります。
近年、富裕層が持つ財産が急増しており、割合にして毎年約10%上昇していますが、税収は5兆円も減少しています。これは所得税の最高税率が低い(2014年時点では40%)点が要因ではなく、不労所得を優遇しているため起きている問題であって、証券取引に対しては20%、株取引に対しては10%と労働所得より大幅に優遇されており、ある統計では所得100億円の人の実効税率が14.2%でした。こう言う不公平を解消するため、富裕税を求める声が上がっています。