手薄だった米国にもテコ入れ

さて、一方の米国ですが、グローバルブランドであるH&MやZARAといった競合がすでにシェアを確保している市場でもあり、長らく苦戦が続いてきました。現時点においても米国単体では赤字となっていますが、先日の上期業績発表では赤字幅が前年比で大きく改善しているという発表がありました。グローバル旗艦店を含むニューヨークの3店舗の売上が2桁増収と回復し、2013年の秋にオープンしたショップングモールの10店舗も順調に推移していると言います。ユニクロの米国初出店は2005年、ショッピングモールを中心に3店舗が進出しましたが、全て1年以内に撤退するという結果になってしまいました。この失敗の要因を、現地でのブランド力不足を見て、ブランド力を上げるためにマンハッタン内にグローバル旗艦店となるソーホー店をオープンします。1000坪を誇る店舗面積は、当時としては世界最大の敷地面積だったそうです。

さらに、店長としてH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ社)の責任者を引き抜き、現地色を色濃くした店舗開発を心がけました。ユニクロはラインナップや在庫の豊富さを顧客にアピールするために、商品を畳んで平置きした陳列手法を取っていましたが、ソーホー店ではH&Mと同じくハンガーで1着づつ陳列を行う方式を採用しました。しかし、実際導入してみると、個数がさばけず、結局両者の折衷を取る形になります。このように米国での店舗開発を学んでいき、大規模なPRを行って認知向上に努めてきました。高い賃料やPR費に圧迫され赤字の状態が続いてきましたが、2013年からは郊外のショッピングモールに集中出店を行い、売上げの拡大を図るフェイズに入ったようです。

2013年夏「世界最貧国」と言われるバングラデシュに進出

2013年にはグラミン銀行とともにグラミンユニクロを創設し、「世界最貧国」と呼ばれるバングラデシュに進出したことで話題になりました。グラミン銀行とは、貧困層へ低金利で小額の融資をするマイクロファイナンスを行う銀行です。元手となる資金がなく、貧困に陥っている人たちに小額融資を行うことで自立を支援しており、創設者のムハマド・ユヌス氏はノーベル平和賞を受賞しています。現在グラミンユニクロは4店舗を出店しており、地元で作られた布から生産を行い、貧困層でも購入出来る低額な衣料品の提供を行っています。グラミン銀行から融資を受けて自立を目指している「グラミンレディ」にも委託販売を行っており、現地の雇用向上や小売業技術者の育成が目的のようです。

こういった貧困層への支援ビジネスはソーシャル・ビジネスと呼ばれ、ムハマド・ユヌス氏も、「私がソーシャル・ビジネスと呼ぶのは、社会的良心を持った商売のことです。事業で投資した費用を取り戻すことは構いませんが、それを上回る利益を得るべきではありません。」とインタビューで答えています。ユニクロの柳井氏は、東日本大震災でも10億円の個人資産を寄付する等、社会貢献に手厚いことで知られていますから、今回のこの動きもビジネスというよりは支援の意味合いが強いものと思われます。

おわりに

さて、順調に海外でのシェアを伸ばすユニクロですが、それでも現在の時価総額は世界1位のインディテックス(ZARA)の3分の1、第2位のH&Mの半分ほどです。ここ数年で中華圏を中心に海外での投資が成功し始め、米国でもやっと成功の兆しが見え始めています。最近はまた、ZARAのお膝元とも言うべきスベイン・バルセロナへの出店準備も進んでいます。いずれの国にしても、成功のキーワードはグローバルブランドとして不変であり、かつ現地のための小さな調整をすることが必要であるという点です。この点を地道におさえながら、2強を抜くためのユニクロの挑戦は続きます。

【参考URL】
http://diamond.jp/articles/-/47717
http://blogos.com/article/74096/
http://www.fastretailing.com/jp/csr/community/socialbusiness.html
http://www.chinanow.jp/2014/03/01/article6477/
http://www.jetro.go.jp/world/n_america/lifestyle/201201_01.html

Photo from Uniqlo via Wikipedia cc