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(写真=PIXTA)

今回の大統領選挙でトランプ氏が大統領となった。そして、金融市場はリスクオフ(円高・株安)になるとの予想を覆し、リスクオンに向かった。トランプ大統領が誕生したことで、今後日本へどのような影響があるのか、金融市場、通商、安全保障の面からみてみたい。

ドル円への影響は? 想定外の円安・トランプ相場に潜むリスク

トランプ氏はこれまで、ドル安・低金利が米国の国益にかなうとし、日本の円安を官製相場と正面から非難していた。ところが、選挙後は反対のドル高円安・金利上昇に動いている。積極財政・大規模減税で、レーガン政権時代のように、財政赤字が拡大→経済成長が加速→インフレ率上昇→金利上昇・ドル高、との思惑だ。リスクオンに円安も重なり、棚ぼた的に日本株も上昇している。

しかし、トランプ相場は薄氷の上にある。なぜなら、金利高・ドル高の副作用は大きいからだ。例えば、ドル高は海外の対米輸出企業の競争力を引き上げ、皮肉にもトランプ氏の掲げる「米国製造業の復活」の妨げとなる。また、新興国からの資金流出による金融危機や、経済成長率が低下してインフレ率が加速する「スタグフレーション」が起こる可能性もあるのだ。

大幅な関税引き上げはあるか? 日本製造業への打撃は回避可能?

トランプ氏は新興国製の安い製品が輸入されたためにアメリカの雇用が失われたとし、関税の大幅引き上げの可能性に触れ、ことあるごとに日本も関税引き上げの対象にしている。

日本の製造業の収益は北米市場に依存しており、NAFTA(北米自由貿易協定)によってメキシコやカナダで生産した自動車を関税ゼロでアメリカに輸出している。関税引き上げが行われたら、アメリカへ輸入している部分については影響を受けるだろう。しかし、日系企業はアメリカの国内生産の割合も高い。国内収益を考慮した場合、アメリカも簡単には関税引き上げを実施できないといえる。交渉がソフトランディングすることで甚大な影響は回避できるかもしれない。

トランプ氏の通商政策について、意外に各国の製造業の経営者は冷静だ。これは、NAFTAの撤廃等を通じた関税引き上げは、貿易戦争を引き起こすことが明白なため、トランプ政権は現実的路線に変更するとみているからである。NAFTAからの脱退・再交渉やTPPからの離脱は経済成長を抑制する要因となりえるだろう。

また、中国やメキシコなど相手国からの輸入に高い関税をかければ、輸入インフレをもたらすことで経済成長庶民の生活は苦しくなり、相手国が報復措置をとれば、米国の輸出企業に大きな打撃となる。

日本の安保政策への影響は? 発言通りなら防衛費増・国際関係不安定化も

日本は、米軍の駐留費用の約半分を負担しており、その額は年間20億ドル(約2,200億円)となっている。可能性は低いが、在日米軍が完全撤退し単独で自国を防衛しようとすれば、防衛費が現在のGDP比1%から世界の平均的レベル2%程度に膨張すると、追加額は5兆円となる。また、同盟国との安保強化や、憲法改正論議が高まる可能性もある。

トランプ氏の政策は理論的に矛盾だらけと指摘する経済学者もいる。今後、その矛盾がどういう帰結を迎えるのか、不安と期待が渦巻く4年間となるかもしれない。(提供: 百計オンライン

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