要旨

  1. 東南アジア5カ国およびインド経済は、足元で緩やかな回復の動きが見られる。景気の牽引役である民間消費は低インフレの継続と安定した雇用・所得環境による家計の実質所得の増加によって堅調を維持している。またインフラ整備や低所得者対策、消費刺激策の実施といった財政政策、緩和的な金融政策の継続も景気をサポートしている。一方、依然として輸出は低調で、投資も景気の先行き不透明感から低迷している。
  2. 先行きの消費者物価上昇率は、原油価格の緩やかな上昇と通貨安に伴う輸入インフレを主因に上昇基調が続くと予想するが、経済成長は緩やかなものとなることから上昇幅は限定的となるだろう。
  3. 先行きの金融政策は、緩やかな物価上昇および米国の利上げペースの加速を背景とした資本流出の懸念があることから、各国の中央銀行は追加緩和には慎重になるだろう。もっとも景気への配慮から可能な限り緩和的な金融政策を継続して米国追随の利上げを当面見送るだろう。
  4. 経済の先行きは、短期的には各国固有の要因から景気が下振れる国が多いが、17年に入って持ち直し、消費主導の緩やかな成長が続くと予想する。消費は物価上昇で実質所得が目減りして伸び率が若干低下するものの、堅調な伸びを見込む。また輸出の増加傾向と資源価格の上昇を受けて企業の投資マインドが持ち直し、投資も回復に向かおう。一方、財政政策・金融政策による景気の押上げ効果は弱まるだろう。

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