中国人,愛国,反日
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2012年の反日暴動時、「日本車に乗っていたため」に暴徒に襲われ大けがを負った被害者と、懲役刑を受けた加害者の今を伝えるネットニュース(騰訊新聞)に、大きな反響があった。

中国人に「愛国とは何か」をを考えさせる象徴的事例である。ユーザーコメントにはさまざまな意見が飛び交っている。4年前の言論風景とはどう変わったのだろう。

反日暴動の加害者のSとはどんな人物か?

2012年9月15日、日本の尖閣諸島国有化に伴う反日暴動は、陝西省・西安市でも吹き荒れた。当時21歳だったSは憤怒の反日デモの隊列にいた。一方R氏は国内生産のトヨタ・カローラに乗っていて偶然、群衆と遭遇する。

車は群衆に包囲され、R氏は車外へ引き出された。そのとき興奮したSは、持っていた大型のU字鍵をR紙の頭に振り下ろした。Sの白いTシャツはR氏の赤い血に染まった。

Sの故郷は西安から420キロ離れた河南省の南陽蒲山鎮である。節電のため厨房や倉庫には灯りを付けたことがなかった。18歳までそうした地方の貧しい家で暮らしたSは、子供のころいじめられっ子だった。14歳から建設現場のアルバイトに出た。日当は18元(約300円)だった。

Sの義理の兄は西安のペンキ職人になり、200元の日当を得ていた。それを聞いたSは西安へ引き付けられる。そして西安へ移り住んだSは、家に引きこもって激烈な戦争ゲームを好み、また抗日ドラマの戦闘シーンに興奮していたという。

翌2013年、有期徒刑10年の判決を受けた。「自己の感情をコントロールできず、過激な行為に走ってしまった。被害者を傷つけたことは深く後悔している」と供述している。Sの弁護士も彼の行為を、衝動的な暴発にすぎずない。愛国とは無関係だと評した。

被害者のR氏のその後の経過

襲撃を受けたR氏の頭は不規則にへこんだ。病院では30~40針も縫った。あれから1542日、彼はまだ西安中心医院神経外科に入院したままである。

脳の損傷はR氏の右半身の機能を奪った。特に右の手のひらは収縮している。今も毎日2時間のリハビリが日課となっている。以前はフィットネスセンターでの鍛錬を欠かさなかった。とても頑健な体であった。

R氏はかつて大手電機工場の営業をしていたが、その後はタクシーの運転手に転じた。やがて中古車ブローカーへ経て独立し、中古車販売店を開業した。4~5人の従業員を雇い、さらに業容を拡大しようとしていたところだった。あの日は、結婚する息子の新居ために、夫婦揃って家具市場を物色した帰りであった。

事件の数日後、西安市公安は、西安中心医院へ係員を派遣した。R氏は係員に対し、私はSを憎む、Sの無知を憎む。トヨタカローラは早々に国産化している。なぜ殴られなければならないのかと語った。

日本問題の専門家らの見解は?

北京大学国際関係学院の日本問題専門家は、民族主義には好ましい面ばかりではなく、暗部もある。Sの事件はこの暗部を浮き立たせた。愛国名義の犯罪である。極端な愛国情緒が、R家S家の双方を被害者にしてしまったと述べた。

4年前R氏を搬送した救急隊員K氏も取材に対し、彼ら加害者たちは愛国とは無関係だ。ただ怒りがあっただけであると答えた。

S家には裁判で命じられた賠償金を支払う能力はなかった。それに代わりR氏は今年8月、関係各部門から52万元の救済金を受け取っている。実はR氏夫妻も抗日ドラマはよく見ていた。内容に誇張のあることはわかっていたが、勝利の感覚を味わえるのは好きだった。
最後にに記事は以下のように結んでいる。

愛国とは、何もかも包含する幅広い言葉なのだろうか。R氏はそうではないという。一方でこう自問する。2日にわたった中国女子バレーチームの激戦(リオ五輪金メダル)を見て半日泣いたのは、愛国なのだろうか?そうではないのだろうか?

これに対しネットユーザーからコメントが殺到(3万4000件)した。

議論は深まる方向へ

ネットニュース騰訊新聞から代表的なものを挙げてみる。

  • 愛国の名を借りて自分の不満を吐くな。
  • 長江三峡発電所の鋼材は日本からの輸入。中国身分証の中心技術も。日本製は高品質の代名詞。
  • 国はすべての日本車に制限をかけろ。
  • 国内生産でどれほどの雇用が生まれていると思う?愛国だけで飯が食えるか。
  • 世界は一体化している。日本の成果を中国が吸収するのはよくないことか?
  • 愛国は合法的に。暴力や排斥は人の心を寒くする。
  • 日本車を不買?では何を買う?ドイツ?アメリカ?みな西欧列強ではないか。

これでも4年前の日本たたき一色から見れば、意見は多様化した。日本を評価するコメントに対する反論は減少している。まだまだ時代遅れの感情的見解も多い。しかし議論は紆余曲折を重ねながら、正しい方向へ向かうのではないだろうか。そう信じたいものだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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