保育士,低賃金,長時間労働,少子化
(写真=ucchie79/Shutterstock.com)

需要はありながらも給与が低いことが問題になっている保育士の待遇改善に向け、厚生労働省は2017年度から「副主任保育士」「専門リーダー」の役職を設け、給料アップを図る考えを明らかにした。来年度予算に540億円を計上するとしており、保育士の3人に1人が4万円を受け取れる見込みという。

そもそもなぜここまで保育士の給与は低いのだろうか。

保育士のは平均年収は332.5万円

保育士の月額給与は平均で約21.6万円(平均年齢34.8歳、勤続年数7.6年)、平均年収は約332.5万円だそうだ(厚生労働省の公表資料)。数字は都道府県や公立か私立によってもバラつきがある。

特に地域間の格差は相当なものがあり、全国平均は約332.5万円だが、高い都道府県では、東京都(369万円)、大阪府(347万円)、神奈川県(333万円) など。低いほうでは、佐賀県(220万円)、福島県(243万)、山形県(259万円)といった具合に、年収における地域格差は非常に大きい。地方は生活するのに首都圏ほどお金が掛からないとは言うものの、最高と最低の地域格差は早急に改善が必要だろう。

週末などには行事もあるし、時間外労働もある。保護者に対する対応がシビアになっているので精神的ストレスを抱えることも多く、結局、給与と労働のバランスが崩れている事からそれが離職率にもつながっている。一般的に保育士は年齢や経験に応じた給与の上昇幅が狭いとされていて、例えば同じ保育施設で長く働いても給与の上昇はさほど期待できないのが現状であると言える。

給与と離職率の関係

離職率についてみると、2014年度時点では10.3%だが、公立は7.1%で私立が12.0%となっている。職場の改善項目としては59.0%が給与・賞与等の改善を希望し、賃金が希望と合わないから就業を希望しないと47.5%もの資格保有者が回答している。

待機児童問題がある中で資格を持っていても働いていない「潜在保育士」の数は全国に約76万人以上いる。

なぜ保育士の給与が上がらないのか

なぜこれまで保育士の給与が上がらないのか。理由の一つは財源。認可保育施設の場合は公的な補助金と保育料からで成り立っていてそこから保育士の給与が支払われている。市場原理とは程遠い仕組みとなっており、多くの子供を受け入れて儲けを出すといった事はできない。

定員が決まっていて負担金や補助金は税金が使われている為に過大に保育料を上げる事も出来ないし保育料は公定価格で決まっている。その為に事業者が勝手に保育料を上げることも難しいのだ。

ちなみに保育料は主に保護者の世帯所得を基に算出する。その為、保育料は世帯の収入によって決まるので、個々の保育園で独自の保育料を設定するのは難しい。

したがって保育園の大半が切り詰めた運営を強いられているのが実態だ。この事から給与の底上げには直接的な処遇改善は元より、自治体で負担する補助金の増額や保育料の算定方法も見直す事も必要だ。

もちろんこれだけが理由ではないし、最近は企業の参入も進みつつある。保育園の設置の目的や幼稚園との違いという事情もある。これらをあわせて考えなければ、事態の打開はできないだろう。

とはいえ種々の問題解決には、保育士を増やすことが欠かせない。それには財源が必要だ。保育料の見直しも必要だろうが、一番は政策的に予算配分を高めることが欠かせない。保育料を含む子育てにお金がかかりすぎることも、若い世代が子づくりを躊躇している大きな要因であることは疑いようがない。

保育所の整備は少子化を食い止める事につながる。安心して子供を産み育てられる国にするために、まず必要なことだ。国作りは人作り、人作りは国作り。百年後の未来に向けた施策を国には期待したいものである。(ZUU online 編集部)