相続は、被相続人(亡くなった人)の死亡によって自動的に開始される。相続が開始すると、法定相続人はやはり自動的に被相続人の財産をすべて引き継ぐこととなる。このとき、相続した財産に不動産などの固定資産が含まれていた場合には、名義変更(相続登記)を行う必要がある。
今回はこの相続登記とはなんなのか、どのように行うのかをまとめた。不動産の相続が発生する可能性のある方は、ぜひ確認していただきたい。
相続における登記とは
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の名義を被相続人から相続人へと変更する手続きのことをいう。
しかしこの相続登記には法律で期限等が定められておらず、行わなかったとしても罰則等が課せられることもない。ではなぜ相続登記を行う必要があるのかというと、それは相続人の間で起こりうるトラブルを防ぐためだ。
具体的には、相続登記が行われていない不動産についてはたとえ管理している者が実質的に所有している財産であっても、その権利を主張することができない。そのため、遺産分割協議によって法定相続分を超える相続分の不動産を相続したときなどは、相続登記を行う必要がある。
例えば、被相続人である父親が住宅を所持しており、これを被相続人の子である長男と二男が相続した。遺産分割協議においてその住宅を長男が相続することになり、その後長男が亡くなり更なる相続が発生したとする。
このとき長男に子供がいれば、遺産分割協議はその子供たちの間で行われることになるが、もしも相続登記を済ませていなかった場合には、二男もこれに関与する権利を持つことになるのだ。
このケースにおいては二男が遺産分割協議及び遺産分割協議書に同意すれば良いだけなので、必ずしも問題が発生するわけではない。しかし相続登記を行った場合と比べると手続きは複雑化しやすく、もしも二男が自身の相続分を主張し始めてしまえばなおさらだ。
相続人以外の第三者に対して不動産の権利を主張する場合にも相続登記は必要だ。具体的には、不動産を担保として金融機関から融資を受ける場合などがこれに当たる。
手続きが面倒だからとおざなりにせず、ぜひ将来的に起こりうるトラブルや発生する手間を防ぐためにも、相続登記は行うべきと言えるだろう。
相続登記の流れ
相続登記の大まかな流れは、次の通り。
①登記事項証明書(登記簿謄本)を取得(所有者の確認)
②戸籍、住民票、評価証明書等を取得(相続人の確定)
③相続登記申請書類の作成
④相続登記の申請
相続登記は自分の手で行うことも十分可能だ。必要書類の取得や申請書の作成には手間が伴うものの、権利関係が明白であればそこまで専門知識を必要とするわけではない。もちろん自分の手で行うことが難しければ司法書士などの専門家に依頼しても良いし、あるいは法務局へ行き直接アドバイスを求めても良いだろう。
相続登記にかかる費用
相続登記に際しては、各書類の取得費用も含めると、登記事項証明書代・戸籍、住民票、評価証明書等の取得費用・法務局への交通費(または申請書の郵送料)・登録免許税
以上の費用が発生する。登録免許税以外の費用はいずれも数百円~数千円程度を見積もれば十分だが、登録免許税は不動産の評価額によって必要な納税額が異なる。
具体的には、不動産の「固定資産税評価額 × 0.4%(住宅家屋用の軽減税率適用の場合は0.3%)」が登録免許税として課税されることとなる。なお固定資産税評価額とは、不動産の実勢価格(実際の取引価格)などではなく、固定資産課税台帳に記載された評価額のことだ。この評価額は固定資産評価証明書や固定資産課税台帳を閲覧(縦覧)することによって確認できるほか、固定資産税の納付通知書などにも記載がなされている。
もしも相続財産のほとんどが固定資産である場合などは、こういった費用への対策として生命保険へ加入するなどといった方法も効果的だろう。
相続登記に必要な申請書と書き方
実際に相続登記を行う上では、その相続がどのようにして行われたのかによって作成する申請書がやや異なってくる。具体的には、「法定相続分による相続」、「遺産分割協議による相続」、「指定相続分(遺言書)による相続」などがあり、それぞれの相続登記に合わせて法務局ホームページ上にフォーマットが用意されている。
記入する内容は主に「相続人の情報(氏名や住所)」と登記する「不動産の情報(所在地や評価額」などで、申請書のフォーマットと合わせて用意されている記載例を参照すれば特に迷うこともないはずだ。
相続登記は必要ではないが、行うべきもの
そもそも不動産の登記情報というのは、その不動産を誰が管理しているのか、誰が所有しているのかなどを第三者が把握できるようにするためのものだ。これを行わなければ、今回挙げたようなケースに限らずさまざまなトラブルが発生する可能性は少なからずある。不動産を相続した際には、速やかに相続登記の手続きも視野に入れて対応するべきだろう。