人材コンサルティング会社Universumが「新卒が希望する初任給ランキング」を発表した。本ランキングではITなどエンジニアリング系の学生と一般的なビジネス部門の学生の2つに分けてランキングを公表している。ここでは、ビジネス部門の新卒が希望する初任給ランキングの特徴やそこから読み取れる事柄について解説していこう。
北欧勢と産油国が上位にランクイン
まずはランキングの上位20ヶ国を見てみよう。
1位 $79,435 スイス
2位 $57,932 デンマーク
3位 $52,655 アメリカ
4位 $52,036 ノルウェー
5位 $46,578 ドイツ
6位 $44,483 カタール
7位 $42,466 スウェーデン
8位 $41,583 オーストラリア
9位 $39,523 アラブ首長国連邦
10位 $38,635 イギリス
11位 $37,917 フィンランド
12位 $37,505 フランス
13位 $36,909 カナダ
14位 $36,442 アイルランド
15位 $34,733 クウェート
16位 $34,676 オーストリア
17位 $33,319 オランダ
18位 $32,423 ベルギー
19位 $32,034 韓国
20位 $29,128 日本
新卒が希望する初任給ランキングでは多くの北欧諸国が上位にランクインする結果となった。また、クウェートやアラブ首長国連邦、カタールなどの産油国も上位にランクインされている。
実は各国の1人あたりGDPランキングでも同じような現象が見られ、北欧諸国や産油国が上位にランクインする傾向がある。つまり、1人あたりGDPが高いほど新卒が希望する初任給も高くなりやすい傾向が見られるということだ。当然といえば当然だが、国の給与水準が高いほど新卒の初任給の相場も高くなるようである。
北欧諸国と産油国の1人あたりGDPが高い大きな要因は人口と比較して土地や資源などが豊富にあることだ。たとえば、ノルウェーやデンマークなどには北海油田があり、クウェートなどの産油国は当然豊富な石油資源を持っている。1人あたりの資源が豊富な国は豊かになりやすく、豊かな国の収入は当然高くなりやすいのだ。今回の初任給ランキングにもそうした国全体の豊かさが反映される結果となっている。
スイスが大差をつけ初任給ランキング1位に
新卒が希望する初任給ランキングはスイスが2位に2万ドル以上の大差をつけ1位となった。スイスの希望初任給は7万9435ドルとなっており、2016年12月23日現在の為替レートで計算すると900万円を超える計算になる。日本の平均年収の約2倍の額である。
スイスの初任給相場がこれほどまで高い理由は、まずスイスの物価の高さが一つの要因だと考えられる。スイスに旅行した経験がある方なら物価の高さをよくご存知だろう。スイスはとにかくモノとサービスの値段が高いのだ。タクシーに乗ればものすごい勢いでメーターが跳ね上がっていき、宿泊費も非常に高い。スイスは様々な物価ランキングや生活費ランキングでトップ3の常連である。物価が高い国では給与も高く設定する必要があり、結果として給与が高くなりやすい。
また、スイスは高付加価値産業も盛んな国としても知られる。高級時計や製薬会社、金融など付加価値が高い産業が発達していることも初任給を押し上げている背景だと考えられる。
スイスは物価が高いことや高付加価値産業が発達していることから一人当たりGDPも高くなっており、初任給ランキングでもスイスがトップにランクインする結果となった。
日本は20位、唯一の2万ドル台を記録
意外なことに韓国が日本を上回り19位となり、日本は上位20ヶ国のうち唯一希望初任給が2万ドル台となった。1位のスイスの半分以下であり、アメリカとも2万ドル以上の差がつく結果となった。たしかに日本では大手企業でも新卒の初任給は額面で20万円前後であることが多いのでこの結果は肌感覚とも大きな違いはないといえる。
20位ギリギリとはいえ、産油国と欧米諸国以外では日本と韓国が唯一のトップ20入りを果たしており、アジア全体ではまだまだ所得が低いことがうかがい知れる結果となった。ただ、21位はシンガポールとなっており、日本との差はわずか200ドル程度である。来年にはシンガポールが日本を抜く可能性も十分考えられる。また、香港も23位と日本を追い上げてきおり、アジア各国が日本を猛追している状況となっている。
新卒の希望初任給額はその国の経済や見通しを考えるうえで非常に参考になる指標と考えられる。今回の結果はまさに低成長に苦しむ日本と成長著しいアジア諸国という図式を反映した結果といえるだろう。今後は日本も生産性の向上や成長産業の発展などに取り組み、より高い成長率を達成や新卒をはじめ労働者がより高い給与を希望できる経済環境と競争力を整えていく必要がありそうだ。(アナリスト 樟葉空)