大学進学や専門学校に進学したいがお金がない...そういった人を対象に貸与・給付が行われているのが奨学金だ。
特に私立大学の場合は年間100万円以上かかってしまうようなケースも存在し、学生がバイトだけでまかなうにはやや厳しい値段と言えるだろう。
奨学金は家庭事情や経済状況の悪化をおぎなって進学の手助けとなってくれるものではあるが、近年その返済問題・制度については大きな議論を呼んでいる。
言い方を変えれば「借金」ともできる奨学金。今回は奨学金を利用する前に必ず知っておきたいメリット・デメリットについて見ていこう。
奨学金とは
まず奨学金とはそもそも何なのだろうか?
定義としては進学の際に必要となる学費・生活費を給付・または貸与してくれるものだ。
ひとくちに奨学金と言っても、大学が成績優秀者に対し無償で給付を行うものや、一定の金利をつけて貸し出すものなど様々な種類が存在する。
無償給付の場合は返済の心配がないため、安心して利用を行うことが出来るものの、同奨学金を受け取ることを出来るのは一部の成績優秀者のみ、といった事例が多く、やや門戸が狭く、全ての奨学金利用希望者に対して給付を行うことは不可能と言ってよいだろう。
そのために用意されているのが貸与型の奨学金だ。こちらは比較的受給のハードルが低く、無償給付型のものに比べてより多くの人が利用していると言える。詳しくは後述するが、こちらにも無利息・有利息といった違いが存在しており、利用する際にはその違いを十分に調べておく必要がある。
奨学金制度はどのような種類があるのか
先に書いた通り、奨学金の種類は非常に多い。
まず大きく分けると「給付型」「貸与型」の2つのタイプがあると言ってよいだろう。給付型は返済の必要がないもの、貸与型は返済の必要があるものだ。
また貸与型は更に2種類に分けることができる。利息が存在しない「第一種奨学金」、そして利息が存在する「第二種奨学金」だ。
より優位な条件で奨学金をもらうためには、入試時や高校在籍時の成績がボーダーを満たしていなければならないものが多いと言える。
また父母の年間所得額なども関わってくるものもあるので、自分が利用したい奨学金制度がどのような申請資格を設けているのかは必ずチェックしておきたい。
近年、貸与型、なかでも利息がある第二種奨学金における返還を期間どおりにすることが出来ずに、延納、ひいては破産につながるといった事例も出てきており、奨学金制度自体が問題視されているといったこともある。
そういった背景をもとに、給付型の奨学金を更に増やしていくとする文部科学省の動きも見られるが、奨学金問題の根は未だ深いと言えるだろう。
奨学金のデメリット
前述のように、奨学金のデメリットとしては受けたい制度のものを受けられない場合があること、そして返済がある程度長い期間続くことが挙げられるだろう。
貸与型奨学金の場合、大学卒業後に返済を行っていくわけだが、それが実質上の借金と考えることもでき、就職とほぼ同時に支払いをしていくことが精神的負担ともなる。支払い遅延や未払いが続いてしまうと「個人信用情報機関」に個人情報が登録され、クレジットカードが作成できなくなったり、ローンが組めなくなってしまったりという場合が出てくる可能性が考えられる。
奨学金返済が出来ないパターンとしては、借入者本人に支払い能力がない、というパターンが多いが、その背景には病気で働くことが出来なかったり、就職難・不況など個人では解決の難しい理由があるケースもある。大学で勉強をするために奨学金を使っているのに、大学のゼミ・研究室でのトラブルで病気となってしまい通学が困難になってしまう、というような事例も。
奨学金は貸与型・第二種奨学金であれば比較的容易に利用することが出来るが、本当に将来それを返すことが出来るのか、分からないというのが現実。あらかじめ予想できる範囲で返済計画を立てておく、というのは大事なことだろう。
日本の学費、教育費の実態
日本の場合、国公立大学で年間学費がおよそ50万円、私立大学で70~100万程度(医薬系の場合はその数倍)というのがベーシックだが、財務省では今後国立大学の値上げを行うというような意見も出ている。あまり人気のない大学や地方大学の場合、収入難による経営悪化など学校側の問題もあり、難しい課題となってきていると言えるだろう。
その反面でほぼ半分の私立大学では定員割れという事態が起きており、大学に進学することの意味が再び問われている。
OECDが毎年発行している『図表で見る教育:OECDインディケータ』によると、他OECD加盟国と比較すると、教育費の自己負担が多いとされており、またそれに対する支援制度も整っていない、ということが明らかになっている。
プランをもって奨学金を利用しよう
ここまで見てきたように、奨学金は使い方次第によってはとても役に立つものではあるが、デメリットも兼ね揃えているものであると言えるだろう。
奨学金、と言えば聞こえはいいが、借金、学生ローンだとして批判の声も多く、その体制には改善の余地があるのかもしれない。
何度も書いてきたように、奨学金利用の際はどのようなタイプのものを利用するのか?そしてどのように返済を行っていくのか?等といったことを重々確認する必要があるのではないだろうか。