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(写真=PIXTA)

ここ数年で「フィンテック」という言葉を耳にする機会が増加している。フィンテックとは、ファイナンスとテクノロジーを組み合わせた造語である。つまり、IT技術を利用した金融サービスのことであり、今後さまざまなイノベーションをもたらす可能性がある分野なのだ。

フィンテックの一例として挙げられるのが、決済機能の拡充である。スマートフォンを利用してクレジットカード決済を可能とするなど、小規模事業者にとって低コストでの売上拡大方法が提供されるようになっている。他にもさまざまな業種において、フィンテックがもたらす恩恵は計り知れないものとなってきているのだ。

保険や不動産といった分野も同様である。最近では「保険テック」や「不動産テック」といった言葉も登場している。それでは、不動産テックとは一体何を示すのだろうか?また、日本ではどのようなサービスが該当するのか?不動産に絞ったフィンテック事例を解説していこう。

不動産テックとは?

不動産テックとは、不動産とテクノロジーの造語である。すなわち、テクノロジーの力で不動産の売却や購入、賃貸などを便利にするサービスが該当する。

たとえば米国のZillow社では、米国における不動産物件に関するあらゆる情報を掲載するデータベースMLS(Multiple Listing Service)を開発している。このデータベースでは99.9%もの米国不動産物件をカバーしており、販売中なのか、すでに取引が成立しているものなのかを調べることができる。また、その不動産が所在する地域の地図、航空写真のほか、地域犯罪率などのデータまで入手可能だ。そのため、MLSは米国不動産を売買する際には業者にとってなくてはならない存在となっている。

米国のRedfin社も不動産情報サイトとして米国で活用されている。RedfinはZillowとは異なり、不動産情報サイトの面だけではなく不動産仲介も担っている。情報の更新も早く、物件をRedfin経由で売却した場合には不動産売買コミッションの一部を顧客に払い戻す、といったシステムを導入している。

IT技術を駆使した不動産情報サイトは日本でも導入されつつある。例えば、ネクストによる「HOME’S プライスマップ」では、首都圏の中古マンションに関して推定参考価格を表示するなど、売買に役立つ情報提供を行っている。

売出中の物件情報収集としては、マイクロソフトとリクルートが共同で運営する「Bing不動産」を利用すると、全国のマンションや一戸建て住宅の売出中の物件を探すことができる。

以上のように、日本でも不動産テックは売買取引などにおいて消費者の利便性を高めている。これまでは一般消費者自身で物件を探すには限界があった。しかし情報サイトにより、情報を得やすく、不動産相場がどのくらいなのか理解できるようになってきた。

ただし、課題もある。それは、日本は海外に比べて中古住宅の流通が少ないことだ。そのため、不動産業界として現在の中古物件の流通度合いを高める必要がある。流通度合いが高まれば、更なる不動産テックによる情報格差是正が発揮されることであろう。

不動産は、一生の中でも高い買い物である。そのためインターネットで検索はするが、購入には一歩踏み出せないこともあるのではないだろうか。また、物件に対する情報の非対称性がどうしても存在する。インターネットだけでは不動産の状態はわからないうえ、適正価格を見分けるのは素人にとっては難しい。こうした問題点を今後解決していく必要があるだろう。

不動産テックはすみ分けにより利便性をさらに高めていくことに

このように、不動産テックは進化しつつあるが、課題が多いのも事実である。フィンテックという言葉が浸透し始めた当初は、「銀行の仕事がなくなる」といった声も聞かれた。実際には金融機関を破壊するようなテクノロジーとはなっておらず、むしろ金融機関と共存共栄の関係を見出しているといって良いだろう。

不動産も同様である。決して不動産テックだけではサービスが完結するものではない。実際に物件を見て購入する際には不動産会社の存在が重要となる。そのため、不動産テックも既存の不動産会社や業界関係者と上手にすみ分けをしながら、消費者の利便性を高めていくことになるだろう。(提供: 百計オンライン

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