経済状況は昨年と酷似、成長鈍化を警戒へ
トランプラリーに利上げも加わり、大統領選挙から年末にかけては「金利の上昇とドル高」が速いペースで進んでいる。「金利上昇とドル高」は昨年12月にも見られ、状況は酷似している。
米GDP成長率は昨年10〜12月期が0.9%、今年1〜3月期が0.8%と低下したが、「金利上昇とドル高」が影響したことに疑う余地はない。
ちなみに、大統領選挙後にドルは4.5%近く上昇し、10年物国債利回りは0.8%ポイント程度上昇している。
ブレイナードFRB理事は「20%のドルの上昇は2.0%の利上げに相当する」と試算しており、単純に当てはめるとこの2カ月弱のドル高は「ほぼ2回分の利上げ」に匹敵する計算だ。
さらに、12月のFOMCでも利上げを実施したことを考え合わせると、金融引き締めの影響で再び成長が鈍化しても不思議ではない。
米景気に減速の兆し、新興国経済にも注意が必要
現実問題として、米景気減速の兆しはすでに見え始めている。
ニューヨーク連銀が公表しているナウキャストによると、12月16日現在での10〜12月期の米GDP成長率は1.8%。7〜9月期の3.2%から急ブレーキがかかる見通しで、さらに来年1〜3月期も1.7%と冴えない数字が並んでいる。
11月の米雇用統計では失業率が低下したが、失業者が職探しを諦めたことを示唆しており、内容は良くない。さらに賃金まで低下している。
11月の米鉱工業生産指数は前月比0.4%低下し、事前予想も下回った。11月の米小売売上高も前月比でわずか0.1%の増加にとどまり、事前予想にも届いていない。
金利の上昇はローン金利と連動するので、自動車販売や住宅販売の行方も懸念される。金利の上昇で駆け込み需要が発生する可能性があり、目先的には堅調な数字が出るかも知れないが、強い数字となればそれだけ反動が大きくなる恐れがある。
米経済指標は悪い数字ばかりが並んでいるわけではないのだが、これまでのところ2017年に「景気が加速」する確証を持つことができない。それどころか、ドル高と金利上昇を受けて「減速」を警戒すべき局面となっている。
昨年との類似でいえば、ドル高による新興国から資金流出が危惧される中、人民元の下落が続いている点も気掛かりだ。
景気後退リスクが高まれば、FRBは利上げ先送りへ
2017年の米経済は2016年とほぼ同じパターンとなりそうだ。すなわち、年前半は低成長となり、最終的には2.0%以下の成長に落ち着くというのが、筆者が描くメインシナリオである。
FRBによる利上げ、米国債利回りの上昇、そしてドル高といった要因が昨年12月と酷似しており、さらにドル高を受けた新興国の状況も同様となっている。原油価格も年初来の高値圏にあり、OPECの減産遵守に懐疑的な見方も少なくないことから、反落する恐れもありそうだ。
とはいえ、今年と同様に、米国経済の成長鈍化や新興国経済の混乱などが見られれば、FRBが利上げを先送りし、金利が低下してドル高も是正されることが見込まれるので、景気の後退リスクは小さいだろう。
筆者としても、予想ぐらいは明るい未来を期待したいところであるが、現状では楽観的になれるほど「明るい未来は待っていない」と言わざるを得ない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)
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