IMF(国際通貨基金)は昨年10月に今年の米GDP成長率は2.8%になると予想したが、現在は1.6%に下方修正されている。同様に、OECD(経済協力開発機構)は昨年11月に2.5%と予想したが、結局1.5%に留まることになりそうだ。

今年に限らず、ここ数年の米国経済は期待を裏切り続けている。それにもかかわらず、2017年も成長の加速が見込まれており、楽観的なムードが広がっている。

来年は期待通りの成長を達成できるのだろうか? 2017年の米国経済を展望してみたい。

OECDはトランプノミクスを歓迎?

10月4日、IMFは2017年の米国経済の成長率が1.8%となる見通しを発表した。大統領選前の発表であることから「トランプノミクス」は考慮されておらず、控えめな数字となっている。

一方、11月28日にはOECDが同様の見通しを発表している。それによると、2017年の米成長率は2.3%と前回9月の見通しから0.2%ポイント上方修正され、2016年の1.5%からも大きく改善する見通しとなっている。

OECDの見通しにはトランプ次期政権での経済政策が反映されており、「トランプノミクス」により米成長率は2017年に0.4%ポイント、2018年に0.8%ポイントとそれぞれ押し上げられると試算している。

確かにトランプ次期大統領は、減税や公共投資など拡張的な財政政策を公約としている。だが、財源については不明であり、実施されるにしても過大な期待を寄せるのは時期尚早と言わざるを得ない。世界的に景気が停滞する中、「トランプノミクスを起爆剤とした回復期待」が広がっているものの、筆者としては手放しで歓迎しにくいのが偽らざる気持ちだ。

FRBは見通しに慎重、予想はあくまで期待値か?

ちなみに、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の公表によると、2017年の米GDP成長率は2.1%と2016年の1.9%を上回る見通しである。ただし、前回9月の見通しからは0.1%ポイントの上方修正にとどまっている。新政権の発足前ということもあり、トランプノミクスは十分に織り込まれてはいない。

それはさておき、過去のFRBの見通しを検証すると、テーパリング(量的緩和の縮小)開始後は常に予想された成長率を達成できない傾向にある。

具体的には、2013年12月の2014年の成長率見通しは3.0%だったが、2014年12月には2.1%まで下方修正されている。同様に2015年は2.8%から2.1%へ、2016年は2.4%から1.9%へと低下しているのが実情だ。

12月のFOMCでも「米経済は利上げに耐えられる」との文言が繰り返されたが、テーパリングや利上げの実施と強気な見通しはセットとなる傾向がある。つまり、「利上げに耐えられる」ことを前提としている以上、成長見通しは高めの予想とならざるを得ないのかも知れない。

だが、先に示した経験則を踏まえると、テーパリングや利上げによる金融引き締め効果により、実際には予想された数字には届かない恐れがある。2017年の米成長率は2.0%を下回る可能性も否定できないのだ。