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米国では非常に有名な1冊

2017年の米経済政策は「ある小説」で理解できる レイ・ダリオ氏のお墨付き

レイ・ダリオ,2017年,米国経済見通し
(写真= GongTo/Shutterstock.com)

世界最大級のヘッジファンド「ブリッジ・ウォーター・アソシエイツ」の創業者であり、世界的な投資家であるレイ・ダリオ氏がトランプ次期米国大統領の経済政策を理解するために役立つ小説としてアイン・ランド氏の小説を紹介し、一部で話題になっている。

アイン・ランドという名前は日本ではほとんど馴染みがないが、米国では1987年から2006年という長期間に渡ってFRB議長を歴任したアラン・グリーンスパン元FRB議長にも影響を与えるなど、非常に有名な人物である。

では、レイ・ダリオ氏も推薦するアイン・ランド氏とは一体どのような人物で、どのような著作があるのだろうか。今回はトランプ氏の経済政策を理解するために役立つというアイン・ランド氏の著作について解説していこう。

アイン・ランド氏とは何者か?

アイン・ランド氏はロシア系米国人の女性小説家・思想家であり、オブジェクティビズム(客観主義)と呼ばれる思想体系を提唱したことでも知られる。ランド氏は1905年にロシアで生まれ、子供時代はロシアで教育を受け1926年に米国に移住した過去を持つ。1982年に亡くなっているため、死後35年近くが経過しているが現在も米国ではリバタリアン(個人の自由や経済的自由を重要視する政治思想の持ち主)や保守派に対して強い影響力を持っている。

ランド氏は執筆したフィクションの中で自身の思想を表現しており、代表作としては「水源」と「肩をすくめるアトラス」が非常によく知られている。この二作品はベストセラーとなっており、日本語にも翻訳されて出版されている。

ランド氏の著作でも上記の特に有名な二作品はフィクションだが、その後はノンフィクションに転向し、自身の思想の伝播に努めた。

ランド氏の思想のポイント

ランド氏は国家の権威を重要視する(すなわち国家を第一に考える)国家主義や集産主義を否定し、個人の合理的な幸福の追求を支持した。人間の生きる目的を幸福の追求と考え、個人の権利を守り幸福の追求を支持するために適した社会体制として自由放任資本主義を支持した。また、倫理的利他主義(自分の利益よりも他人の利益を優先する考え方)も否定している。

つまり、ランド氏の思想の根幹は個人の幸福を優先する個人主義であり、非常に資本主義的な思想であり、現代の米国社会にも大きく通ずるものであった。そのため、現在でもランド氏の思想は保守派やリバタリアンの間で大きな影響力を持っているのである。しかし、学術界ではランド氏の思想はほとんど認められていない。

個人の幸福の追求、個人主義、自由放任資本主義、この3つの言葉だけ並べてみても、なんとなくトランプ氏の考え方に近いと思えてこないだろうか。トランプ氏は資本主義社会を生き抜いてきたビジネスマンであり、まさにアメリカンドリームの象徴である。

レイ・ダリオ氏もトランプ政権は弱く非生産的な社会主義的人間や政策ではなく、利益を生み出せる強い人間を好むと指摘している。ランド氏の著作を読めば、トランプ氏のマインドセット(考え方)をつかむことができるだろうとダリオ氏は述べている。

ランド氏の代表作「水源」と「肩をすくめるアトラス」の概要

それではランド氏の代表作である「水源」と「肩をすくめるアトラス」の概要について簡単に紹介しよう。

水源は若い建築家ロークが、様々な妨害に合いながらも建築に対する自分の信念を貫き、最後は成功を手にする物語である。ロークは非常に個人主義的な建築家であり、伝統的な建築を重視すべきという従来の建築家達と対立していたが、様々な妨害にあいながらも最後は高層ビルの設計依頼までも受けるようになり、愛した女性とも結ばれる。

自身の信念を貫くロークが最後に成功を収めるという物語は、個人主義は集産主義に勝利するというランド氏の思想を反映したものだといえるだろう。

肩をすくめるアトラスでは国家が経済を統制し、産業家達を攻撃した結果、産業家が次々と失踪し、リーダーを失った産業や社会が崩壊していく米国が描かれている。失踪した産業家達は政府に対するストライキを画策していた。最後は全国民向けのラジオ放送を乗っ取り、この世界を再編成すると宣言する。

作品の中では資本主義、個人主義が支持され、国家主義的な政府の強制的な権力が否定されており、ランドの思想が色濃く反映された作品となっている。

上記のように、ランド氏の代表的な著作では個人主義や資本主義が集産主義、国家主義に勝利するという姿が暗に描かれている。ランド氏の小説は共和党議員や保守派の政治評論家にも非常に強い影響を与えたと言われており、米国では非常に有名である。資本主義の象徴的な存在であり、右派的思考が強いを見られるトランプ氏の今後の経済政策を考えるうえで、たしかにランド氏の著作は参考になるかもしれない。(アナリスト 樟葉空)

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