住民税は、所得税を年末調整や確定申告によって確定させた場合、基本的に別途申告する必要がないためそもそも申告するものだという印象をあまり抱いていないだろう。今回は、住民税の申告をすべき人とはどのような人なのかを解説すると共に、その手順について紹介する。
住民税の申告が必要な人とは
住民税の申告は、年末調整や確定申告によって所得税を確定させた人ならば基本的に行う必要はない。住民税は各区市町村が賦課徴収を行う地方税であるため、本来所得税とは直接的に関係がない。だが、所得税を年末調整や確定申告によって確定させると、税務署より各区市町村へ確定した所得に関する情報が伝達されるので、別途住民税の申告を行う必要は生じないのである。
住民税の申告が必要な人とは、所得税の申告を行っていない(申告義務のない)人のうち、住民税が課税される人、あるいは年末調整や確定申告ではカバーしていない範囲の控除を受けようとする人である。具体的には、次の通り。
- 給与所得があった人のうち、勤務先から該当区市町村へ「給与支払報告書」の提出がない人
- 給与所得があった人のうち、給与所得以外にも所得があった人
- 地代、家賃、配当、年金などの所得があった人
- 国民健康保険の減免、所得証明等の交付が必要な人(非課税証明が必要な人)
1については、勤務先が正しい事務手続きを行っているか否かによるため各自勤務先へ確認するほかない。
2については、確定申告が不要な場合であっても、住民税については申告義務が生じる。
3についても同様に、特に公的年金等の所得に関しては確定申告において「確定申告不要制度」の適用が認められるが、それ以外の所得がある場合や控除内容に変更などがある場合は住民税の申告義務がある。
4については申告義務ではなく、住民税非課税対象者に適用が認められる各種控除や減免、臨時福祉給付金などを受給するためには申告が必要ということになる。
住民税の税額の計算方法
住民税にはいくつかの種類があり、何を対象として課税された住民税かによってその計算方法や税率が異なる。種類とそれぞれの計算方法は、次の通り。
- 所得割:前年の所得に応じて課せられる
(前年の所得等-所得控除)×税率(10%)-税額控除 - 均等割:住民全てに均一に課せられる
都道府県民税(1,000円)+区市町村民税(3,000円)
※平成26年度から平成35年度までの10年間は、復興財源確保法によるところの防災対策費として各500円が加算され、1,500円+3,500円=5,000円が均等割として課される。
- 利子割:利子所得等に対して課せられる
利子所得等×税率(5%) - 配当割:特定配当等に対して課せられる
特定配当等の額×税率(5%) - 株式等譲渡所得割:上場株式等の譲渡による所得に対して課せられる
上場株式等の譲渡による所得×税率(5%)
なお利子割、配当割、株式等譲渡所得割については、対象となる所得が支払われる段階で金融機関や証券業者によって徴収(特別徴収)されるため、別途申告する必要はない。また所得割と均等割には非課税限度額が定められているが、このうち均等割の非課税限度額については区市町村の定める条例によって条件が異なる場合があるため、所属する区市町村へ確認することをおすすめする。
住民税の申告の仕方
住民税は、各区市町村が用意する住民税申告書へ必要情報を記載し、記入した情報を証明する書類(給与明細書や経費の明細書、所得控除の領収書や明細書・証明書など)を添付して提出することで申告ができる。申告期限は確定申告と同様3月15日とされているが、当該期日が休日である場合などはこの限りではない。
区市町村によっては郵送による提出を受け付けており、また申告書や住民税申告の手引きなどを郵送によって取り寄せることも可能なため、住民税を申告したい場合はまず所属する区市町村の役場へ問い合わせると良いだろう。
住民税の支払い方
住民税は毎年1月1日を基準として住民に賦課がなされ、その後各区市町村が定める期日に合わせ、年4期に分けて住民税納付書によって納付することになる。住民税納付書は第1期支払期日前である5月ごろより送付されるので、これを該当金融機関などへ持ち寄ることで住民税を納めることができる。なお、特別徴収(給与からの天引き)によって住民税を納めている場合は別途支払う必要はない。
住民税非課税の適用を受けたい場合は忘れずに申告
特に非課税限度額を満たしている方は、住民税が非課税で済むからとこれを申告しないのではなく、申告によって非課税証明書を交付してもらった方が得をするという場合も多い。当然住民税の申告には少なからず手間はかかるが、それによって得られるメリットにもぜひ目を向けていただきたい。