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(写真=Photographer-J/Shutterstock.com)

コンピューターが、チェスや将棋・囲碁の対戦で人間に勝利するなど、昨今の人工知能の技術進歩には著しいものがあります。

金融市場もまた、日々刻々と進化する人工知能の影響を大きく受けている分野の一つです。私たちがオンライン・トレードを行っている間も、ロボ・トレーダーが活発な取引を行っています。金融市場における人工知能の普及は、世界中で始まってきています。

人工知能が金融市場の主役に

ヘッジファンドは、限られた企業や資産家などから私的に資金を集めて運用しています。投資単価が高額で、常に利益を追求していく投機的なスタイルで運用されるのが常です。

ヘッジファンド業界の中で、世界最大といわれているのがブリッジウォーターです。リーマン・ショックを予測し、大きな損失を逃れたことでも知られています。創業者のレイ・ダリオ氏は「フォーブスに載らない影の億万長者」ともいわれる存在です。

この、ブリッジウォーターが2012年に引き抜いたのが、IBMで人工知能「ワトソン」の開発チームを率いたデービッド・フェルッチ氏です。さらに2016年3月には、アップルでiPodを立ち上げ、Palmの会長も務めたジョン・ルービンスタイン氏を引き抜き、共同最高経営責任者として採用しました。

実際、ウォール街ではIBMやグーグルから優秀な技術者を引き抜く動きが加速しています。金融市場の裏舞台では、人工知能の優劣が投資の成否を分ける時代になりつつあるのです。

2016年は日本のロボアドバイザー元年

これらの動きは、「ファイナンス」と「テクノロジー」を組み合わせた造語である「フィンテック(FinTech)」という言葉で表され、日本でも普及しつつあります。

ですが、現在の日本では決済サービスやセキュリティー、クラウドファンディングに代表される“既存のサービスをさらにIT技術でより便利にしたもの”という位置づけで語られがちです。人工知能が市場を席捲し、個人の資産運用サービスにおいても活躍している欧米諸国からは大きく後れをとった状態が続いていました。

しかし、2016年になって日本でもようやく新しい動きが出てきました。先陣を切ったのが株式会社お金のデザインです。2016年2月に、ロボアドバイザーによる資産運用サービス「THEO(テオ)」の提供を開始しました。これは人工知能にお金の運用を一任するというもので、質問に回答した内容から適切な投資スタイルを判断し、所定の期間、継続に運用を行ってくれます。

THEOが投資するのは国内外のETF(上場投資信託)ですが、10万円からスタートできること、手数料が1%と一般的なラップ口座よりも低額なことが評判となり、若年層の投資初心者を中心に利用者が拡大しています。

また、2016年7月にはウェルスナビ株式会社が「WealthNavi(ウェルスナビ)」いうサービスを一般公開しました。WealthNaviはアメリカで上場しているETFのみが投資対象となっています。最低預入金額は100万円からとTHEOに比べて高額ですが、自動積立投資や自動税金最適化など、他にはない機能が実装しているのが特徴です。

このほかにも、「楽ラップ」「MSV LIFE」などのロボアドバイザーサービスが続々と登場しています。

ロボットへの任せ方を判断するのは人

ロボアドバイザーは、自動でポートフォリオを組んでくれるうえに、運用まで一任できるというサービスです。

利用するにあたって重要なのは、投資ロジックや投資先が異なる複数のロボアドバイザーの中からどのサービスを選ぶのかと、全資産の何割をどのくらいの期間ロボアドバイザーに任せるのかという判断です。また、大きなライフイベントが予定される場合には、自ら投資内容を見直していく必要もあります。

ロボットに運用を任せることも含めて、投資は自己判断で行わなければなりません。(提供: IFAオンライン

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