建設関連株
(写真=PIXTA ※写真はイメージです)

新年の株式市場が幕を開けたが、いつまでもご祝儀ムードではいられない。2017年は相次ぐテロや難民問題が深刻化する欧州で、主要国が国政選挙を控えるほか、株高に沸く米国も、間もなく就任するトランプ次期米大統領の力量は未知数だ。日本株も決して安泰とは言えない状況の中、株式新聞では建設関連株に注目する。

業界的に粗利益率が高水準を維持する一方、今年は公共投資が本格始動する公算。また、建設現場のイノベーション「i - Construction(アイコンストラクション)」や、国策が後押しする「インフラメンテ」といったプラスアルファの材料にも恵まれ、外部環境に左右されない有力セクターとして一段と存在感を増す可能性が高い。

公共投資、復活へ

建設セクターを取り巻く注目要素は、完成工事高の浮沈を決める建設投資の動向に、利益面で重要な粗利率、さらには、ITを活用して生産性を高める取り組みであるアイコンストラクション、構造物の老朽化問題を受けたインフラメンテの重要性などだ。これらを読み解くことで、有力銘柄が浮上する。

国土交通省の見通しでは、16年度の建設投資は前年度比2%増の51.8兆円と3年ぶりに拡大に転じる見通し。ただ、民間投資が堅調な半面、地方を中心に公共投資の動きは鈍い。直近16年11月の建設工事受注動態統計調査(大手50社)も、建築が前年同月比11%増となった一方で、公共投資を映す土木は同11%減(いずれも国内)と伸び悩んだ。

17年を見通す上で、まずポイントとなるのがこの公共投資の持ち直しの有無だろう。

その点、16年8月に閣議決定された28兆円の大型経済対策の「真水」部分と、10月に成立した第2次補正予算を合わせた公共事業の規模は7.5兆円に上る。これは10年度以降では震災の復興年の11年度(8.3兆円)、アベノミクス元年の12年度(7.6兆円)に次ぐ大きさで、今後の建設セクターの受注の伸び代となる。

中期的にも、20年の東京五輪や、「国土強靭(きょうじん)化」を目的とした水害や土砂災害対策の投資が増えそうだ。一部ではレンタル建機の需要に復調の兆しが出ているもよう。

利益率ピークは杞憂、過去とは異なる豊富な受注残

物量面の次は、収益性が焦点だ。株式市場では、各社の業績改善に寄与してきた建築部門の粗利益率が早晩頭打ちになることへの懸念が根強い。確かに水準的には既に建設バブルの1990年代前半のピークに迫っている。また、鋼材安などによるコスト低下に受注単価が引きずられることで、粗利益率が悪化するとみる向きもある。

しかし、建築粗利率に先行しやすい建築着工単価は、既にバブルの高値を突破している。このため、単純な水準の比較でピークを図ることはできない。また、過去実際に原価ダウンが粗利益率の低下を招いた局面とは、受注残高が増加しているという点で現在は大きく異なる。

豊富な受注残を背景に、各社は工事量を無理に確保する必要には迫られていない。こうしたケースでは、コスト低下が工事単価の下落には直結しにくいと考えられる。

IT化とインフラメンテ、人手不足に対応

一方、人手不足は業界の深刻な問題だ。長期的にはいかに現場を効率化できるかという点が、勝負の分かれ目になるといっても過言ではない。そこで打ち出されたのがアイコンストラクションだ。IoT(モノのインターネット)の導入や3次元データの活用により、省人化を図る。国の予算にも盛り込まれ、公共事業の拡大とともにITを通じた生産性向上が期待される。

西松建のコロコロチェッカー

また、高度経済成長期に整備された社会インフラを大量に抱える日本にとって、それらの補強や更新は喫緊の課題。国も対策に本腰を入れ、このほど産・官・学連携の「インフラメンテナンス国民会議」を設立した。

日本には約70万ある橋梁(きょうりょう)のうち、コンクリートの耐用年数とされる50年が経過するものは23年までに全体の4割強に達し、築50年超のトンネルも同年には全体の3割以上となる見通し。民間の技術と知恵を積極的に取り込むことで、老朽化対策と同時にインフラメンテを成長産業に育成していく。

気になる注目株 - 大林組など有力

建設関連の注目銘柄には、ゼネコンの大林組 <1802> 、西松建設 <1820> 、建機レンタルの西尾レントオール <9699> 、建築ソフトの福井コンピュータホールディングス <9790> 、ひずみ測定機器を手掛ける共和電業 <6853> を挙げる。

大林組は2015年以降の上値のフシである1200円どころを上抜いてくると、その先に広がる需給の真空地帯を一気に駆け上がる期待が高まる。西松建はカメラを搭載したロボットを使って斜張橋の斜材保護管表面を点検する「コロコロチェッカー」に注目。

福井コンHの3次元CADは、アイコンストラクションを追い風に既に収益を押し上げ始めている。西尾レントは土木建設のIT化の流れもとらえ、共和電は土砂崩れなどのモニタリングシステムが有力だ。(1月5日株式新聞掲載記事)

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