ピザ,市場規模,デリバリー
(写真= Phawat / Shutterstock.com)

デリバリー業界にてさまざまなチェーンがしのぎを削る「ピザデリバリー」であるが、ここ数年価格帯が下落し、各企業ともにさまざまな商品開発・サービスなどを開発し、多様化が進んでいる。

近年のピザ市場分析

各企業を比較する前にまず「現在のピザ市場」がどうなっているのかを分析・解説する。

ピザチェーンのフランチャイズ(ブランド企業にロイヤリティを払い、加入者がその企業の商品およびシステムを利用し事業を行うビジネス形態)を比較・分析している比較ネットによると1980年ごろには500億円ほどだったピザ市場が現在は約2600億円と約5倍の市場にまで成長している。

それに伴い、大手である「ピザーラ」「ドミノピザ」「ピザハット」といった企業以外にもさまざまな新規参入業者が出ている。

例えば「1枚380円から」という超低価格を売りとする「センプレピッツァ」や、多少値が張るものの本格イタリアンの味し、ピザの本場イタリア・ナポリの味を提供するというコンセプトで営業を行っている「サルバトーレ」などが上げられる。

こういった市場状況の変化は今後宅配ピザ業界が「激戦化」していくことの大きな前触れであると考えられる。

ポイントは「差別化」、各企業の強み比較

デリバリーピザ業界に限らず、こういった「成熟期」に差し掛かりつつあるビジネスにおいて最も大切なのは「差別化」だ。

ビジネスの初頭の「目新しさ」だけで利益が出る状態からある程度「収益モデル」および「採算性」が見えてくることにより新規参入が増え、それに伴い競争相手が増えるため、「自社を選んでもらう理由」を明確に打ち出せなければ、泥沼の「低価格競争」となってしまい、業界全体のパイを押し下げてしまうためだ。

現在記事を執筆している2017年1月現在の、大手3社である「ピザーラ」「ドミノピザ」「ピザハット」の公式サイトを参照し、一般ユーザーに「差別化ポイントの訴求」がどの程度行われているのか見てみよう。

「ピザーラ」にて目を引くのは「季節の素材」をふんだんに使って作成された「期間限定セット」だ。筆者が参照している現在ではカニの旨みが凝縮された「極旨ウィンタークラブ(Mサイズ 2680円)という商品が大々的にPRされている。素材を活用した変り種」で差別化をしつつ、季節ごとに「今度はどんなメニューがあるのだろう?」と利用顧客へ興味付けを行い、サイトメニューに定期的にアクセスさせるのが狙いだと考察できる。

次に「ドミノピザ」であるが、こちらは「クワトロ・乙女のマヨネーズ(Mサイズ 2600円)」といった「女性向け」の限定メニューを提供している。プチパーティなどにおいて女性に訴求し、あらたな販路を開くのが目的であろう。

また「会員登録を行う事で1000円オフ」や「持ち帰り限定で1枚買うと1枚無料」といった価格ディスカウントをベースに「ネット上で見て注文するだけ」の顧客間結びつきから「実際に店舗に足を運ぶ」「定期的に情報配信する」といったより直接的な繋がりを形成するのが目的であろう。一時的には利益減が発生するかもしれないが、顧客をつなぎとめて固定客にすることが出来れば長期的には収益が安定し、売上を伸ばせる戦略だ。

最後に「ピザハット」であるが、こちらは前出2社と比べると特に目新しい「経営戦略」は見当たらない。確かに事前予約によるディスカウントや複数枚注文によるディスカウントはあるが、これだけで終ってしまえば「ただのお得なプラン」止まりであり、中長期的な「自社を選んでもらう理由」にはならない。極論、先に挙げた1枚380円から提供する「センプレピッツア」が販路を拡大していけば「安いだけ」で選んでいた顧客はそちらに流れることが必至であろう。

もちろん見えない形での経営努力というのはなんらかの形で行っているのだと思われるが、今回は「一般ユーザーに分かる形での経営努力」という視点で比較しているので、あえてその部分は評価しない。原価率を下げるといった安易な価格競争方面の戦略でないことを祈るばかりだ。

大手3社の株式上場状況

これら大手3社であるが、「ピザーラ」はさまざまな飲食店を経営する「株式会社フォーシーズ(非上場)」の一ブランド、「ドミノピザ」は「株式会社ドミノ・ピザジャパン(非上場)」が経営しており、母体であるアメリカの「Domino's Pizza, Inc」はニューヨーク市場に上場しており株式売買ができる(ニューヨーク証券取引コード:DPZ)。

また「ピザハット」も発祥はアメリカであるが、こちらは上場しておらず売買はできない。

もちろん事業戦略がよいからといってそのまま経営改善に繋がるとは言い切れず、安易に企業価値が上がるとはいえない。

だが少なくとも事業の変換期において明確な「ビジョン・方向性」を打ち出せなければ先細りになるのは必至だ。今後の業界動向に注視していきたい。

土居 亮規
AFP、バタフライファイナンシャルパートナーズ