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(写真= Andrea Izzotti / Shutterstock.com)

人工知能(AI)が日進月歩で進化するなか、米ホワイトハウスは12月20日、AIに関する58ページからなる報告書を公表した。今月で大統領職を去るバラク・オバマ大統領の科学・経済顧問たちが、労働環境の自動化が米国の労働市場や経済に及ぼす影響を総合的に分析・予想した力作で、最後のレガシー(功績の遺産)を残したいオバマ氏の気持ちがにじむ。

「政策上の取り扱いを誤れば経済格差がさらに拡大する」

技術革新のペースが加速し、トラック運転手やタクシー運転手の仕事はこの先10年ほどで、自動運転車に奪われる可能性が現実味を帯びるなど、ロボットが多くの仕事を労働者たちから奪ってしまうと予測されるため、労働者や企業にとっても、重要な意味を持つ未来予想である。

運転関連の仕事を取り上げたCEAの研究では、2015年時点で従事していた372万人のうち、この先20年で最大309万人分の仕事が脅威にさらされる可能性があるとされる。一つの産業がほぼまるごと消滅するという恐ろしい予測だ。

報告書は「AIがある程度、労働者から仕事を奪う。だが自動化で仕事の内容が変化しても、存亡の危機にさらされる職種は全体の9%に過ぎない」という、楽観的な経済協力開発機構(OECD)の研究と、「米国内の仕事の47%が危機にさらされる」とする悲観的なオックスフォード大学の研究の両論をたたき台としている。

ホワイトハウスのスタッフの結論は、「AI導入による失業が必ずしも最悪の結果にはならない」というものだが、「政策上の取り扱いを誤れば、すでに拡大している人々の経済格差がさらに大きくなってしまう」と警鐘を鳴らしている。

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