2017年1月中旬、高金利通貨としてFXで人気のある「トルコリラ」がドル・円ベースともに下落し、動揺が広がっている。
トルコリラ円が33円前後をつけていた矢先、2営業日続けて下落し、1月13日現在は中央銀行による介入とそれに伴うトルコリラ上昇により30円台前半まで戻しているものの一時は28円台に割り込むまでの円高・トルコリラ安となった。
トルコリラの下落理由
今回トルコリラが急落した理由は「経常収支の赤字拡大予測」が原因だ。
マーケットは今月発表される11月のトルコ経常収支における赤字が拡大するとの見込みを受け急遽トルコリラを売り、リスク回避を図った。
その後、11月決算が発表され、赤字額はマーケット予想が「275億リラ」だったのに対し実数が「227億リラ」であったため下落幅は下げ止まり、その後トルコ当局における「必要があれば為替介入を行う」という旨の発言もうけ、反発しているというのが今回の動きだ。
もっとも、市場予想より赤字額が低かったとはいえ前月10月の赤字額は「166億リラ(発表時168億リラから修正)」であったため、赤字が拡大しているということに変わりはない。
トルコという国家の現状
基本的に「高金利通貨は長期的に見れば下落」するため、よく考えられる「高金利通貨を買って持ち続ければとりあえず儲けられる」といったおいしい話は実現不可能である。
もっとも高金利通貨の経済基盤が強化され、通貨が強くなればその限りではないため一概に「絶対に不可能」というわけではないが、とりわけトルコという国家はこの条件を満たすことが難しいというのが現状だ。
その理由として挙げられるのは「経常収支の赤字」だ。
上記の今回の下落理由要因として解説した赤字拡大であるが、これは何も今回に始まったことではない。
トルコの経常収支推移をみてみると2002年を境に赤字に転落しており、その後2017年現在に至るまで一度も「黒字決算」を迎えられた年度はない。
これだけでなくGDPと経常収支を対比して推移を計測する方式で推移をおってみても2002年度よりマイナス圏に入っており、これは明確に経済情勢が悪化しているということを示している。
またIMF(国際通貨基金)が公開している経常収支の推移予測においても「現状、赤字を改善する見込みはないといえる」というデータが公開されており、今後も厳しい経済情勢が続きそうだ。
さらにトルコに追い打ちをかけるのが「ISなどによるテロ発生とそれに伴うカントリーリスクの上昇」だ。2013-2015年よりトルコ軍とISによる軍事的衝突の激化とそれに伴うテロといった報復行動による国家としての安全性毀損、軍事・国防にかかわる費用の増額など、トルコにとっては踏んだり蹴ったりという状況だ。
これらを総合的に加味すると中央銀行がテコ入れを行ったところで「ベースとなる国家が不安定」であることから、あまり長期投資に向いていないというのが現状ではないかと筆者は考える。
現状を踏まえた上でのトルコリラ投資
ここまでが情勢分析だけを踏まえた上での運用可否の意見であるが、投資におけるアドバイスを業務として行っている視点から書くと「それでもトルコには投資余地がある」といえる。その理由は「リスクは高いがそれに応じた高利回り」という余地が存在しているためだ。
基本的に証券投資においては「リスク=リターン」のため、おいしい話というものは存在しない。だが高利回りというおいしい「パイ」がある以上、リスクに対して適切な運用手法・商品を組み合わせれば、リスクを減らしつつある程度の収益を確保することはまだまだ可能であると考える。
たとえばオプションなどでトルコリラに対する「下落」に保険を掛け、急な値動きをフォローしつつ利息を受け取るといった方法や、「FX業者はそれぞれスワップ金利が異なる」ということを利用し、スワップが高いA業者でトルコリラを買いつつスワップの低いB業者で売りを行い、その「差額」をリスクフリーで抜き取る、といった方法などだ。
単純に「買って持つだけ」という方法ではオススメしないが、このようにやりようによってはまだまだ「魅力的な投資対象」であると、筆者は考える。
投資対象としての情勢が不安定で、「リスク=リターン」という原則に「歪み」が生じているいまだからこそ、経済原則に外れたおいしい話を「自ら作り出すこと」ができるかもしれない。
いずれにせよいえるのはおいしい話が「放置され、その辺に転がっている」ということはないことと、こういった状況だからこそ「リスクをチャンスに変えられるかもしれない」ということだ。
今後の情勢を注意して見守りつつ運用方針と対象を決めていき、収益機会を積み上げていきたい。
土居 亮規 AFP、バタフライファイナンシャルパートナーズ
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