韓国経済,慰安婦像
(写真=Thinkstock/Getty Images)

韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置された問題が波紋を広げている。慰安婦問題については「最終的かつ不可逆的な解決」として日韓で合意したのに、これまであったソウルの像が撤去されないばかりか、釜山にまでに設置されたのにはさすがに日本政府も業を煮やし、駐韓大使の一時帰国やハイレベル経済協議の延期などの対抗措置を取ったのだ。今のところ韓国側からは撤去する意思や歩み寄る姿勢はうかがえないのだが、政治も経済も低調なかの国は大丈夫なのか。

「ウィーン条約」に違反している可能性が高い

慰安婦をめぐる日韓合意は2015年12月、慰安婦問題について日韓両政府で「最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認する」というもの。日本政府からは10億円が拠出されて元慰安婦を支援する財団が設立された一方、ソウルの日本大使館前の慰安婦像については「韓国政府が適切に解決できるように努力する」としている。日本政府からの拠出金を使ってすでに個々の元慰安婦に見舞金が支払われているが、ソウルの像が撤去されるどころか釜山でも増殖することになり、日本側は反発した。

そもそも、韓国のこうした行為は外国公館の安寧を妨害したり品位を損なったりすることを防止する義務を定めた「ウィーン条約」に違反している可能性が高い。韓国側も国際的に分があるのは日本のほうだと認めているからこそ、合意に盛り込んだと思われる。

日本が行った主な対抗措置は、駐韓大使の一時帰国と日韓通貨スワップ協定再会協議の中断だ。これに対し、韓国は弾劾により職務停止となっている朴槿恵大統領に代わり、黄教安首相が「両政府だけでなく、全当事者が合意の趣旨と精神を尊重し、韓日関係発展のため努力し続けることが必要だ」くらいの発言をするにとどまっている。

野党からは「合意は無効」、次期大統領候補予定者の潘基文前国連事務総長からは「10億円は返せ」などと強硬な意見が噴出。朴槿恵政権がレームダックに陥っており、韓国は伝統的に国民の感情的な世論に配慮した政治運営がされる傾向が強いことを考慮してもなお、国家間の合意に対して誠実に向き合っているとは言い難い。2017年1月11日の日経新聞社説でも日本政府の対応について「やむを得ない」としている。

韓国経済へのダメージを考える

こうした状況は韓国経済にとってどれだけマイナスなのだろうか。
そもそも韓国は外需依存が高いが、輸出シェア25%を占める対中国貿易が振るわないうえ、大統領汚職事件に伴う財閥系企業の低調で、目下の韓国経済はかなり苦しい。2016年11月の若年層の失業率は8.2%にもなった。全体の失業率は2016年に3.7%だったのが2017年には3.9%に悪化するとの予測もある。

嘉悦大学教授の高橋洋一氏は2017年1月12日の「DIAMOND online」で「最悪の場合、1997年に起こったアジア通貨危機の再来の可能性すらあると思っている」と指摘。この経済危機は「朝鮮戦争以来、最大の国難」と呼ばれている。同年末に韓国は、デフォルト寸前の状況にまで追い込まれた。これにより IMFが韓国の経済に介入し、財閥解体が行われ、2001年には失業率は4.0%に達した。

こうした状況で、日韓通貨スワップ協定の協議再開の中断は韓国にとって非常に苦しい。スワップ協定とは自国の通貨危機の際、自国通貨の預入や債券の担保等と引き換えに一定のレートで協定相手国の通貨を融通しあうことを定める協定のこと。通貨危機に陥る可能性の高い国の方にメリットが大きく、2015年に両国は協定を打ち切っていたが、韓国の申し出で協議が再開されていた。

ただ、よほどのことがない限り、日本側から救いの手を差し伸べることはもうないだろう。通貨スワップとは事実上、相互貸借と同じであるだけに、国家間の合意を安易に破棄するような国とは、協議できるはずがないからだ。

麻生太郎副総理兼財務相もが「約束した話が守られないなら(韓国に)貸した金も返ってこない」と述べたのもその現れだろう。

そもそも日韓合意は職務停止中の朴槿恵大統領によってなされたものだ。韓国大統領の歴史を紐解けば、職務を終えた元大統領の末路は亡命、自殺、逮捕など哀れなものが多い。前の大統領を全否定することで新たな大統領の短い歴史が始まり、再び全否定される。その繰り返しといっても過言ではない。「韓国では前の大統領が決めたことは国家間の約束ですら反故にされる」との歴史がここでまた繰り返されるのなら、「貸した金が棒引きにされてしまう」と恐れるのも当然だろう。これでは海外投資家は韓国から手を引くかもしれない。

国際関係すら不安に陥れかねない

さらなる混乱を懸念する意見もある。産経新聞政治部の阿比留瑠偉編集委員は同12日のコラムで、慰安婦像設置の背景に新北朝鮮勢力の暗躍と、韓国世論がそれを認識していながらその影響を軽視していることを指摘。「誰が(次期)大統領になるにしろ韓国の従中、反米・反日、親北の左派路線は今後ますます強まりそうで、在韓米軍の撤退すら現実味を帯びてきそうだ」と述べている。韓国は自国の経済危機のみならず、国際関係すら不安に陥れかねないというのだ。

ただ、13日には尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が国会で「国際社会では外交公館の前にいかなる造形物も設置することは望ましくないというのが一般的だ」と述べた。少数派とはいえ、政府の中からこうした国外の視点を意識した発言が出てきたことはまだ救いかもしれない。(飛鳥一咲 フリーライター)

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