銀行,経営,組織論
(写真=Thinkstock/Getty Images)

「お帰りなさい。お疲れ様でした」
「なんだよ、こんなの内勤にさせりゃいいだろ」

私が銀行に入った頃は営業をしている人間が一番威張っていた。外回りの営業担当者が帰ってくると、皆が一斉に仕事の手を止め、労をねぎらった。支店のなかでは営業担当者だけは特別扱いで、面倒な事務作業は内勤の人間に下請けさせることが常だった。

「銀行では営業が一番エラいんだ。みんな営業に喰わしてもらってるようなもんだからさ、当然だろ」これがかつての銀行の常識だった。

ところが、今はどうだろう。「この伝票、書き方間違ってますよ。何度言ったら分かるんですか。きちんと事務やって下さいね!」「忙しいのは営業だけじゃないんです。きちんと事務をやってもらわないと皆が困ります」といった具合に営業担当者の肩身は狭い。いまや稼ぐ人間よりも、人事・総務・監査・事務といった間接部門の人間が銀行内部で幅をきかせているのだ。

「無駄な仕事を増やす」ことが仕事といえるのか?

私は営業が威張っていた時代が正しかったとは、必ずしも思わない。皆が小さな仕事を嫌い、大きな仕事ばかりをやろうとすれば、組織は成り立たない。目立たぬところで「地味にすごい」仕事をしてくれる人たちに大きな仕事は支えられているのだ。人にはそれぞれ適性がある。それぞれが「得意とする分野」で組織に貢献することが大切なのだ。

しかし、昨今は「無駄な仕事を増やす」ことを得意としている人間が幅をきかせていることも事実だ。彼ら間接部門の人間が組織にどんな貢献をしているのか、首をかしげたくなることが多いのも確かである。

具体的に、私が勤める銀行の「無駄な仕事」を紹介しよう。金融商品の販売に携わる私は、出勤するとまずパソコンを立ち上げ一日の予定を確認する。そこには、いくつもの部署から大量の通達が発せられている。これらすべての通達に目を通し、理解しようとすれば、業務をこなす時間はなくなってしまう。それほど多くの通達が毎日発せられる。

では、それらすべての通達が重要かというと、必ずしもそうとは限らない。なかには、重要度が低く「わざわざこんなことを通達する必要があるのか?」と思うようなものさえある。通達の重要度を見分け、優先順位を考える時間が無駄なのだ。

銀行では「意味のない報告」が実に多い

通達だけではない。我々は、さまざまな報告も求められる。営業の進捗状況、部下の時間外労働や休暇取得状況の報告、事務改善の報告、内部監査の報告、顧客満足度向上運動の報告……ありとあらゆる部署から様々な報告を求められる。

当然これらのなかには、どう考えても重要度が低く、形骸化しているものもある。報告させておいて、それをフィードバックするわけでも業務の改善に活用しようというわけでもない。「こんな報告止めればいいのに」現場の誰もがそう思っているに、その声は届かない。

それどころか、報告が遅れようものなら、担当部署からお叱りの内線電話がかかってくる。「報告の期日が守られていません。どうして、こんなことになるんですか。期日が守れなかった理由を『報告』して下さい」と。おいおい、また報告かよ……決して冗談ではなく、実際にそんなやり取りがされている。

報告が遅れた理由なんて簡単だ。「重要度が低い報告なので、忘れていた」に過ぎない。だが、現実には「……かかる事態が二度と発生しないように、現場で勉強会を行い再発防止に努めます」そんな報告書を作成して担当部署に提出しなければならない。

まったく、馬鹿げている。営業の最前線に立つ我々は、いまや本来の営業活動よりも、「無駄な仕事を増やす」連中のために多くの時間と労力を奪われているのだ。

「誤った成果主義」のなれの果て

なぜ、こんなことになってしまったのだろう。原因として考えられるのは「誤った成果主義」である。

営業の現場に成果主義が導入されるのは当然のことだが、「数値で実績をアピールできない」間接部門にまで成果主義が及んでいる。

銀行全体が地盤沈下を起こして久しい。到底実現不可能な営業目標が現場に示達される。それに対し、間接部門には明確な目標があるわけではない。ともかく「成果をアピールする」ために、彼らはやたらと無駄な報告や勉強会、研修、会議を開く。酷いときは会議に次ぐ会議で1日が終わってしまうこともある。

ようするに、彼らの「アリバイづくり」に我々現場の人間が利用されているだけなのだ。決して大げさな話ではない。これは「営業妨害」と言って良い。そう、我々営業の敵は身内にいるのである。

「業務妨害」で点数を稼ぐ人間

もちろん、これは銀行の営業に限った話ではないだろう。あなたの会社にも、あなたの「業務を妨害」することで点数を稼いでいる人間がいないだろうか。

事実、「誤った成果主義」は銀行の人事評価にも影響を及ぼしている。組織内では地道に取り組んでいる人間よりも、声が大きい人間、パフォーマンスが上手な人間の評価が高くなりがちである。無駄な仕事を増やす「誤った成果主義」が組織を腐らせているにもかかわらずだ。

発言力を持った間接部門は我々に「無駄な仕事」をさせることで、自らの成果をアピールしようと躍起になっている。彼らの営業妨害、業務妨害が銀行にどれほどの損失をもたらしているのか、彼らは気づいていない。(或る銀行員)

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