日本はペットブームと言われて久しく、ペットと暮らすことは一つの文化として定着してきたようです。賃貸物件のオーナーから見た場合、「ペット可」物件をどのように考えればよいのでしょうか。

ペット可物件のニーズ

一般社団法人ペットフード協会が毎年行っている「全国犬猫飼育実態調査」によると、全国の犬の飼育率は2012年以降減少傾向にあり、2015年の飼育率は14.4%となっています。また、猫の飼育率は2015年に10.1%で2012年からほとんど変化せず、10%台で安定しています。

一方で、「今後の飼育意向」(飼いたい・飼い続けたい人の割合)を見てみると、犬に関しては、年々意向が低下しているものの、それでも2015年時点では、24.5%が飼いたいと考えており、実際の飼育率より高くなっています。猫の飼育意向も2015年のデータでは17.2%で、やはり実際の飼育率と比較すると高くなっています。

また、年代別に「今後の飼育意向」を見ると、20代の意向が他の年代よりも高く、犬の飼育意向が2014年には25.7%だったものが、2015年には27.3%になっています。猫の飼育意向も19.2%から20.3%へと上昇しています。 ペットを飼いたいというニーズの背景には、少子高齢化や、未婚層の増加(単身化)があると言われています。若者が集まる大都市部で、「ペットを飼いたい」というニーズは高まっていると考えられます。

ペット可物件にするメリット・デメリット

そうしたニーズの高まりに対応するように、賃貸情報サイトでも「ペット可物件特集」が組まれたり、ペット可物件に強いことを打ち出す不動産会社も出てきたりしています。中にはペットと暮らすことを前提に設計された「ペット共生型」のマンションなども建てられているほどです。

ところで、物件のオーナーから見た場合、「ペット可」にすることにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。 まず、メリットの一つには、空室対策になるという点が挙げられます。「ペット可」の賃貸物件は全体の10%前後と見られており、飼いたい人のニーズに対して絶対数が不足しています。そのため、空室が出た際に「ペット可」物件として入居者を募集すれば、早期に入居者が付く可能性は高まるでしょう。また、一度入居した後も、転勤などよほどの事情がない限り転居せず、空室になりにくい傾向があります。

入居者が立地をあまり重視しないということもメリットの一つと言えるでしょう。ペットを飼う人は、安心してペットと暮らせることを求めています。駅から遠いなど多少の不便がある立地でも、「ペット可なら」と妥協する傾向が強いのです。また、そうした物件は、購入価格が抑えられるので収益性も良くなります。

その一方、実際のところ多くのオーナーが「ペット可」にすることを避けたがるのは、ペット独特の臭いや鳴き声が、住民同士のトラブルを引き起こしやすいと考えるからです。また、壁や床に傷を付けられたり、部屋に臭いが付いてしまったりすると、リフォームの費用がかさむということもあります。敷金を多めに設定するなどの対策はあるものの、デメリットの一つだと言えます。


一度「ペット可」にしたら戻れない?

さて、こうしたメリット・デメリットを踏まえたうえで、オーナーとしては「ペット可」という物件をどう考えるべきでしょうか。 まず区分所有の場合は、「ペット可」物件への条件緩和は、同じマンション内の他のオーナーとの兼ね合いもあり難しいといえるでしょう。 また、一棟マンションのオーナーの場合も、一度「ペット可」にすると「ペット不可」には戻しにくいので、安易には決められません。

ペットと暮らしたい人のニーズが高まっているとは言え、全体から見れば、飼いたいと思っていない人のほうが多いのです。最初から「ペット可」を想定して建てられた物件ならともかく、そうでない物件を後から「ペット可」に変える場合は、すでに住んでいる入居者からの反発も考えられます。

仮に他の入居者の同意を取り付け、全室「ペット可」にしたとしても、今度はペットと住むつもりのない入居者が物件を避ける可能性も出てきます。 「ペット可」にするかどうかは、入居者のライフスタイルと大きく関わっており、物件のコンセプトと言えるでしょう。トレンドに流されるのではなく、「投資」という観点からもよく考えたうえで、判断するようにしましょう。(記事提供: REISM

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