中国の春節休暇中は新聞もほぼ1週間休刊だった。春節明けの地方紙は休暇中の事件を「春節期間大事記」としてまとめた。国内4件、国際4件である。国際の4件中3件は米国関連であり、さらに2件はトランプ大統領だ。マティス米国防長官の訪韓・訪日の報道も、極めて抑え気味のトーンに終始した。
やはり米国の出方ばかり気にして、他は目に入らないように見える。記事を分析し今後の展開を占ってみよう。
春節期間中の4大国際事件
新聞休刊中の4大国際事件とは以下の通りである。
1 アフリカ・ガンビアのバロウ新大統領が国連職員に伴われて帰国した。前ジャメ大統領の居座りに失敗し問題はこれで解決を見た。
2 トランプ米大統領は、中東・アフリカ7カ国民の米国入国を一時的に差し止める大統領令に署名した。
3 トランプ米大統領は、規制緩和に関する大統領令に署名した。連邦政府各部門は新しい規制を1つ導入するには、既存の規制を2つ廃 止しなければならないとした。
4 米国カーネギーメロン大学の人工知能Libratusと4人のプロによるポーカー対決はLibratusの完全勝利に終わり、人類はAIに敗北。
アフリカ1、米国3と中国ならではの感覚である。
マティス長官の訪韓報道
人民日報系の参考消息網は、米韓国防相会談により米韓軍事演習を大規模化、北朝鮮への圧力強化で合意したこと、迎撃ミサイルシステム(Thaad)韓国配備を再確認したことを伝えた。今年3月に予定される演習では、米国の戦略兵器や、原子力空母カール・ヴィンソンの参加も検討中である。
これは米国は北朝鮮の核攻撃に対し、圧倒的な反撃体制を維持することを明確に示した北朝鮮への警告シグナルである。中国はお荷物でしかない北朝鮮を米国に何とかしてほしいと願っている。その本音をかくしつつ、いやに客観的な報道ぶりだ。
いつも韓国に激しくかみついていたThaad配備の件は、今回改めて再確認されたにもかかわらず扱いはとても小さい。ロシアは韓国にThaad配備の撤回を要求した、などと人の口を借りた表現である。いつもの韓国に対する高飛車な語り口はは全く感じない。
マティス長官の訪日報道
同じ参考消息網は、安倍-マティス会談のポイントを短く伝えている。
1 トランプ大統領が選挙戦で強調した米軍駐留経費の日本負担増に関する言及はなかった。
2 トランプ政権でも米国は、アジア太平洋地区に関与し同盟関係を強化する。情勢は〝峻厳”という認識を共有した。
3 安倍首相は、日本の防衛力の強化を表明、マティス長官はこれを高く評価した。
翌日の総括記事は、〝マティス訪日、釣魚島(尖閣諸島)の共同防衛を確認、米国は中国封じ込めを意図”という見出しである。ただし内容は共同通信などほとんど日本メディアからの転載である。
1 米国は日本の防衛義務を課した「日米安保条約第5条」を遵守する。
2 日本政府は尖閣諸島へ第5条の及ぶことを確認し、中国をけん制することを希望し、それがかなった。
3 安倍首相はトランプ政権下でも日米同盟は揺るぎないと国内外に示すことを期待している。
などとこれまた淡々とした報道ぶりに終始している。
身構える中国だが……
マティス米国防長官が就任後真っ先に日韓へ飛び、韓国でミサイル防衛システム配備、日本で安保条約が尖閣に及ぶこと、の2つを確認したことは中国にとって大きな痛手である。本来なら口を極めて非難すべき大問題のはずである。ところが官製メディアにいつもの宣伝臭や強烈な不満表明はない。迫力を欠くどころか音無しの構えに近い。
ネットメディアでも休暇の影響かユーザーの関心は薄い。2月10日の日米首脳会談を見極めたい、ということはありそうだ。それを含めトランプ政権のペースにはまらないよう、を身を固くして見守っているのだろう。
3月5日から開催される全人代まですでに1カ月を切った。さらに秋には5年に一度の党大会が開催される。実績をアピールしなければならない政治(人事)の季節である。対米関係で不慮の失点などお断り、と誰しも思っているに違いない。当面党内情勢ををにらみながら、煮え切らない反応が続くのではないだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
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