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三井不動産は2014年5月27日、3254億円の資金調達を目的とする公募増資を発表しました。公募増資による増加株式数は1億株であり、現在の発行済株式総数8億8142万株の12%に相当します。この増資を受け三井不動産の株価は発表翌日の5月28日には158円安の3182円をつけたもの、6月に入ってからは順調に上昇し、3400円台で推移しております。本稿では三井不動産の公募増資の目的と戦略との関連性について見てまいります。


三井不動産の現状、財務、株価面から

三井不動産の2014年3月期決算は、売上高が前期比696億円(+4.8%)の増収である1兆5152億円(2期連続過去最高)。当期純利益も前期比173億円(+29.3%)の増益の768億円と非常に好調でした。主に個人向け住宅の販売戸数の増加が売上、利益増のドライバとなっています。三井不動産の財務指標、株価を三菱地所、住友不動産と比較すると、売上・純利益ともに3社の中でトップにあります。しかし、時価総額は三菱商事とほぼ互角。資本の効率性、一株当たり利益という面では住友不動産に劣っており、今後は資本の効率性をいかに高めていくかが課題となります。

図1 三井不動産・三菱商事・住友不動産の株価・財務指標

三井不動産

< 8801 >

三菱地所

< 8802 >

住友不動産

< 8830 >

株価(円)

3,405

2,500

4,342

時価総額(億円)

33,417

34,759

20,671

売上高(億円)

15,152

10,752

7,802

純利益(億円)

768

642

696

EPS(円)

87.50

46.34

147.02

ROE(%)

6.26%

5.01%

10.44%

PER(倍)

33.23

57.82

26.73


三井不動産の戦略

では、三井不動産は経営目標を達成するために、どのような戦略をとっているのでしょうか?三井不動産の事業の特色としてはオフィス、商業施設、住宅のポートフォリオのバランスが良いことです。売上高のうちオフィス賃貸が約20%、商業施設が約10%、住宅分譲が27%、プロパティマネジメントが21%、三井ホームおよびその他事業が22%となり、1つの事業に依存しない構造になっています。また、各事業での主な戦略を見てみると、オフィス賃貸は日本橋地区に集中投資(図2)商業施設は三井アウトレットパークを全国展開(図3)とオフィス賃貸は選択と集中、商業施設は全国展開となります。このように事業ごとに違った戦略を展開することは、収益源の多様化、リスクヘッジという観点ではよいですが、どうしても多額の投資金額が必要となります。この戦略を採用していることが、増資金額が大規模になった要因と考えます。

図2 日本橋周辺での三井不動産の開発状況(三井不動産IR資料より)

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図3 全国展開する三井アウトレットパーク(三井不動産IR資料より)

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