三井不動産を取り巻く事業環境
では、三井不動産を取り巻く事業環境はどうなっているのでしょうか?現在安定した収益を稼ぎ出していますが、東京地区でのオフィス開設による競争の激化が予想されます。日本橋地区に隣接する丸の内地区では、三菱地所を主体とする再開発が予定されています。また、虎ノ門地区でも森ビルを中心とした虎ノ門ヒルズの開設など、東京都心ではオフィスビルの供給が予定されており、三井不動産も日本橋地区の再開発を迫られている状況です。
また、三井不動産は海外事業の売上高に占める割合が低いという課題を抱えております。2014年3月期決算での海外オフィス事業の売上高は全体の2%程度である300億円程度であり、国内に依存した収益構造になっています。国内のオフィス、住宅市場は人口推移から推定すると大きな伸びは期待できません。そこで、市場の伸びが期待できる海外市場へ打って出ることが期待されます。実際、中長期経営計画では、国内設備投資は8,000億円程度としているなか、海外投資を5,000億円程度としており、海外に注力する姿勢を見せています。
調達資金の使い道~国内・海外~
次に、公募増資で得た資金の使い道を見て参ります。公募増資時のリリースによると「2017年までの中期経営計画を発表した2012年の後、アベノミクスの進展、東京五輪の開催決定により東京のさらなる成長が見込め、それらを事業チャンスするために増資を決めた。」とあります、いわば、今回の増資は「攻めの増資」であり、更なる投資を実施したいという三井不動産の意思の現れです。
では、三井不動産が発表した新規投資案件を見てみると、日本橋以外でも豊洲、日比谷、大手町など、オフィス街として需要の高い日本橋以外の地区に出ようという意図が見えます。また、商業施設では大阪府吹田市のエキスポランドの跡地や北陸新幹線の開通で注目される富山県小矢部市に三井アウトレットパークを建設するなど、攻めの投資が見られます。
一方海外では、国内以上に積極的な投資が見られます。例えば、マレーシアのクアラルンプール国際空港隣接地での三井アウトレットパークの建設。中国上海金橋地区でのららぽーと建設。台湾林口地区での合弁でのアウトレットパーク建設計画など、欧米でのオフィスと併せて成長市場であるアジアの購買力を取り込もうという意図での投資を意図しています。
三井不動産の公募増資は、戦略実現のためには不可欠
このように三井不動産の投資計画は野心的なものです。言い換えるとリスクの高い計画であり、銀行借入や社債ではなく公募増資で資金を調達するのは理にかなっているといえると考えられます。
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