世界経済フォーラム(WEF)が1月に発表した「2017年包括的成長指数(IGI)」で、日本は先進国中24位となった。所得格差が過去最大の水準にまで達した近年、経済成長への悪影響を懸念する声が高まっている。

一例を挙げると、先進国の経済成長率中央値は過去5年間で2.4%減少。ひとり当たりの平均GDP(国内総生産)成長率は1%にも満たない。経済成長を促すうえで欠かせない包括力拡大に向け、積極的かつ効果的に取り組んでいる25カ国を見てみよう。

IGIとは?

IGIは世界109カ国・地域における不平等・貧困の解消への取り組み、総体的な生活水準の向上に対する努力を評価した指針だ。

「教育・能力開発」「雇用・労働補償」「実質経済投資への金融仲介」「資産形成・起業家精神」「財政移転」「基本的なサービス・インフラ」「汚職・利益」を主要支柱と15の副支柱で構成された評価項目に基づいて、各国の包括金融レベルが数値化されている。

最高得点は7点。首位のノルウェーが6.02ポイントである点を考慮すると、各国改善すべき課題があることは明白だ。問題点は各国・地域によって異なるため、それぞれの背景にあった対策が包括力成長のカギとなるが、労働力、公平性、技能、経済の向上が基盤となることは共通するだろう。

先進国中、従属人口指数と負債率が最も高い日本

日本のIGI度は先進国中24位。良好な状態とはいい難い。5年間の長期的な総合傾向では‐0.6( 18位)。経済成長傾向が2.3%(15位)、包括傾向‐0.2%(13位)、世代間の平等傾向は4.7%(25位)となっており、いずれも上位入りを逃している。

高評価をうけたのは、健康寿命と比較的貧富の差が低めという点だ。しかし実際には16%の世帯が所得中央値の半分以下の収入での生活を余技なくされている現実に加え、従属人口指数と負債率が先進国中最も高いというリスクも指摘されている。

WEFは日本が抱える問題の根本には、世代間の平等性が横たわっていると分析。また男女間の所得格差も根強い点も挙げている。女性の労働力の活性化なくして経済成長は望めないといわれるこれからの社会で、アベノミクス戦略である「女性の社会進出」がどれほどの効果をあげるかが、日本経済の今後を大きく左右すると予測される。

希望材料としては、技術者の育成につながる高水準な教育を含め、包括的成長を促進するうえで必須となる基盤が整っていることが挙げられている。

日本よりも包括化の進む韓国

日本を抑え14位となった韓国。特に貯蓄率、教育支出、人口構成の見直しが功を奏し、過去5年間の包括向上率では8位に輝いた。

しかし雇用率が高いにも関わらず貧困率が高いという矛盾点が、総体的な包括成長の足かせになっている。ここでも女性の労働力不足、男女間の賃金格差が要因のひとつとして挙げられているほか、家賃の高騰などにも焦点が当たっている。

包括的環境の創出を意識した社会保障制度改革なども、今後の課題となるだろう。

包括的成長指数(IGI)上位25カ国

25位 イスラエル(4.28)ひとり当たりのGDP 22位
24位 日本(4.36)17位
23位 米国(4.44)9位
22位 エストニア(4.52)30位
21位 英国(4.69)19位
20位 スロベニア(4.75)25位
19位 チェコ(4.78)28位
18位 フランス(4.83)18位
17位 スロバキア(4.88)29位
16位 ベルギー(4.89)16位
15位 カナダ(4.90)11位
14位 韓国(4.95)24位
13位 ドイツ(4.99)15位
12位 アイルランド(5.01)5位
11位 フィンランド(5.04)14位

10位 オーストリア(5.05)12位
9位 ニュージーランド(5.09)20位
8位 オーストラリア(5.18)7位
7位 オランダ(5.28)10位
6位 スウェーデン(5.30)6位
5位 デンマーク(5.31)4位
4位 アイスランド(5.48)13位
3位 スイス(5.75)3位
2位 ルクセンブルク(5.86)1位
1位 ノルウェー(6.02)2位

(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)