プレミアムフライデー
(写真=PIXTA)

月末の金曜日は早めに仕事を切り上げ、買い物や旅行需要などを喚起させようと、国が旗振り役を務める構想、「プレミアムフライデー」がいよいよ2月24日に始まる。ただ、現時点では大企業を含め導入を見送る企業や団体がほとんどで、経済効果も限定的だとされており、多くの人が冷ややかな目で見ているようだ。そんな中、導入に踏み切ったのはどんな企業なのか。

ソフトバンクなど主な13社はここ

21日、東京駅の地下広場には、ポスターや映像でプレミアムフライデー普及の取り組みが紹介されたほか、過ごすのにオススメの服装やメイクなどを提案するコーナーが設置された。取り組みに賛同する企業や団体によるキックオフイベント。近くのホールで開かれたセレモニーでは、アサヒビールやローソンなど7社の役員らが、自社の社員に午後3時の退社を促すことを説明したり、当日に店舗で発売する限定商品などをアピールした。

プレミアムフライデー実現に向け、官民連携で設立した推進協議会では、趣旨に賛同する企業などがPRに使える統一ロゴマークを制定。このロゴマークの使用申請をした業者がサイトで公表されているが、その数は2200以上になった。ただ、これらの企業の顔ぶれをみると、アパレルや外食などサービス業が多く、消費をしてもらう立場のようで、このすべての企業が社員に対して導入しているかどうかは不明だ。

では、社員に導入することを表明しているのはどこか。現在、導入企業について国は統計をとっていないので、報道ベースで名前が挙がっている13社をピックアップしてみた(日経新聞など参照、リストは順不同)。

西日本鉄道
富士フイルムホールディングス
ユニ・チャーム
清水建設
三菱自動車
住友商事
ヒューリック
森永製菓
大和ハウス
ソフトバンク
エヌ・デーソフトウェア
日産自動車
コマツ

これらの社では、対象日の午後3時以降はできるだけ会議を設けないようにしたり、働く時間を自分で柔軟に決められるフレックスタイム制を活用したりして、早上がりを推奨している。また、まず本社の一部の部署で始めて様子を見て、徐々に職場全体に広げていくところもある。

国会運営にも影響、鳥取県は柔軟な対応を

一方、経営に苦しい中小企業では導入が難しいところが多いようだ。「従業員が少なくて仕事のやり繰りが付かない」「月末は経理業務で忙しく無理」「非正規だと早帰りで給料が減る」といった、余裕のないところがほとんどのようだ。

住民サービスを行う自治体では導入しにくいところがほとんどのようだが、鳥取県は少し変則的なスタイルで導入する。職員のフレックスタイムの申請期限を前々週末から前日までに緩和し、庁内端末で届ければ可能になる。また、月末金曜の午後3時以降には会議やイベント、新たな業務や出張などを指示しない方針で、退庁しやすい雰囲気作りをするという。

プレミアムフライデーは国会運営にも影響が出ている。2017年度予算案を24日に衆院本会議で採決する予定だったが、27日に延期した。憲法の規定で予算案は参院送付後30日で自然成立するため、27日に衆院を通過すれば参院の審議がどうであれ、年度内に成立することが確実になる。24日に国会審議が遅くなれば省庁や国会職員の帰宅が遅くなるため、配慮するべきだという判断が参院審議よりも優先されたことになる。

経済効果はいかほど?

上述の推進協議会が解説しているPRサイトでは、「ちょっと長めの休日で普段は行けない『2.5日旅へ』」「大切な人と夕方からゆっくり『アーリーディナー』」「友達みんなで集まってゆっくり『夕飲み』」「平日昼間に好きな街を『アフタヌーン街歩き』」など、協賛企業があの手この手で過ごし方を提案している。

経済効果はいかほどになるのだろうか。

みずほ総研は旅行需要に限定してプレミアムフライデーが消費効果を押し上げる効果について試算している。それによると、普及があまり進まない場合、旅行消費額は0.2〜0.3兆円(名目民間最終消費支出の0.09%)程度の増加にとどまるという。ただ、普及が進展すれば、同0.5〜0.6兆円(0.2%)程度となるといい、「プレミアムフライデーが浸透すれば、旅行支出が個人消費を一定程度、下支えする可能性が示唆された」としている。

また、ほかの曜日と比べて金曜日に支出が56%と最も増加するのが「外食」であること、月末の金曜はほかの金曜よりも外食支出額が12%増加することから、「早帰りの普及で外食産業が消費を下支えする可能性がある」としている。

「習い事をしたい」女性は意欲的

「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」が、働いている男女1603人を対象にネット上で行った意識調査によると、「勤務先で導入するか」という問いに「導入する」と回答したのは3.4%だった。

「プレミアムフライデーの導入の有無にかかわらず、どのように過ごしたいか」との質問に対し、1位は「家でゆっくり過ごす」(58.5%)、2位は「買い物に行く」(35.8%)、3位は「映画を見に行く」(20.8%)、4位は「家事をする」(20.3%)、5位は「仕事以外の友達と飲みに行く」(19.0%)となった。過ごすのが家の中か外かでは半々となり、男女別で「何もしない」が男性が女性を上回り、「習い事をする」は女性が男性を上回ったことからも、女性の方がこの時間を意欲的に過ごしたいとの気持ちが強いようだ。

プレミアムフライデーの根幹にあるのは働き方改革だ。すべての企業がより人間らしい生き方、働き方についてより真剣に考える機会としたいものだ。(フリーライター 飛鳥一咲)

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