中国,NBA,八百長
(写真= melis /Shutterstock.com)

NBAヒューストン・ロケッツで大活躍した姚明(ヤオ・ミン、1980年~)が2月23日、中国バスケットボール協会主席に就任した。中国ではもろ手を挙げての歓迎ムードである。新聞は「履歴、能力とも出色、余人をもって代えがたし」「中国社会の進取、創新の象徴」と賛美した。姚明新主席は、平日に北京の協会で勤務し、週末に自宅のある上海へ帰るという。片手間の名誉職ではない。また新主席の就任は中国体育界の改革シグナルと報じている。期待の大きさは中国スポーツのいびつさの裏返しでもある。

大人気のNBA

中国では一昔前まで身体を動すにはまず卓球だった。チーム球技は楽しむ場所がない。大都市の学校はせまくグランドも体育館もない。バスケットはゴールさえ備え付ければそれなりに楽しめ、人数もサッカーの半分ですむ。今ではプレイする球技として中国で最も人気の高いスポーツになった。これにはNBAの影響も見逃せない。

NBAは中国で最も人気の高い観戦スポーツだ。スポーツニュースのトップはNBAである。その後国内プロリーグ(CBA)を放映する。バスケットボール全体の放映時間は概ねNBAで3分の2、CBAは3分の1だ。また大手ネットニュース「騰訊新聞」では、体育(スポーツ)の他にNBAが単独項目として立てられている。別の大手「今日頭条」では、体育にアクセスすると、NBA、CBA、スーパーリーグ(プロサッカー国内リーグ)、セリエA、の順に項目が並んでいる。NBA人気は断トツだ。これは姚明その人の貢献が大きい。

姚明は9歳のとき地元上海の少年体育学校で訓練を開始し、18歳で中国代表に選抜された。CBAでの活躍が認められたのではない。ナショナルチームの監督は、各地のスポーツエリート養成校から選手を抜擢するだけである。

姚明は1999~2001年、CBAや代表チームで活躍した後、2002年、NBAヒューストン・ロケッツと契約する。以降2011年7月にケガで引退するまで活躍した。姚明の活躍とその高額な年棒1768万ドル(2010-11シーズン)は中国人をNBAのとりこにした。

2016年には中国人初のNBA殿堂入りまで果たした。これはイチローがMLBの殿堂入りしたようなものである。

国内リーグCBAは1995年、12チームで開幕している。当初参加チームは、瀋陽軍区隊、南京軍区隊、空軍隊など、半分は軍関係のチームだった。学生スポーツや市民スポーツの頂点としてプロリーグが誕生したのではなかった。

サッカーの次はバスケ

中国は自らを「金メダル大国だがスポーツ強国ではない」と規定している。オリンピックでの国威発揚用に選ばれたスポーツエリートが単独で存在し、それ以外に広範な市民、学生スポーツのすそ野というものはない。国民もNBAと欧州サッカーは鑑賞しても、国内リーグにはそれほど関心がない。他のスポーツはオリンピック絡み以外には話題にも上らない。

米国はすべてのスポーツでトップ水準にある。その米国への対抗を国是とする中国政府は2015年、サッカー好きの習近平主席の肝いりで、強化策「中国足球改革総体方案」を公布した。現在は各地方政府が予算措置をとり、グラウンド整備やサッカークラブ設立に努めている。

次はバスケットである。ここには存在感は抜群の姚明がいる。政府は人気を利用しようと、これまでも全国政治協商委員、北京冬季オリンピック宣伝大使、CBA副理事長などのポストを提供した。今度はバスケットボール協会主席に据え、人気スポーツの振興を託したのだ。

今後中国バスケットボール協会は、主席弁公会議を新設し新主席の日常活動を全面的にサポートする。新主席は人事権を含む全権を掌握する。そして国際的声望を生かし、中国のスポーツ界を公衆とともに刷新するのが使命だ。当人も就任初日から中国バスケット殿堂の設立、マスコミとの新協力構想を語るなど意欲満々だった。

スポーツ風土そのものを改革

中国では2013年2月、プロサッカーのスーパーリーグで大規模な八百長事件が摘発された。元代表選手を含む33人が永久追放、上海申花、天津泰達など強豪チームを含む12のクラブがタイトルはく奪などの厳罰に処されている。日本でこんなことが発覚すれば天地をひっくり返した大騒ぎだが、中国ではそうはならない。何しろ汚職腐敗に聖域はないのである。国民の反応も「ああ、やっぱりやっていたか。仕方ない。何しろここは中国だからな」くらいのものであった。

姚明主席が挑むのは、こうした中国の風土そのものである。これに改革の風穴を開けるのは、NBAで真剣勝負を繰り返してきた彼以外にない。マスコミの大歓迎には、ここまで含めた期待が込められている。今後その手腕に大きな注目が集まるだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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