関正生,丸暗記不要,英会話,英単語学習法
(写真=The 21 online)

最速で結果が出る「ズルい」勉強法とは?

学生時代、必死に覚えた英単語を思い出せず、会話もままならない……。その原因は、「単語や会話文を丸暗記してきたことにある」と語るのは、有名英語講師である関正生氏。しかし、学生時代のおさらいと+αの勉強で、ビジネスシーンで必要な最低限の英語はマスターできるという。今までに学んだ知識をムダにしない勉強法とは?

「英語が話せない」のは頭でっかちの思い込み?

英会話上達への近道、それは、英会話への苦手意識を克服することに尽きます。本来、日常会話程度ならば、中学で習う英語でも通じるはずなのです。

にもかかわらず、英語が話せない日本人が多いのは、学校教育の中で「話す練習」が圧倒的に足りなかったからです。

それに、学校では「こんなときはこう返す」と英会話を機械的に丸暗記しがちです。こんなふうに頭でっかちになってしまっては、英語で会話などできません。

そこで、会話嫌いの呪いを解く、3つのマインドセットをお教えしましょう。

まず、会話ですべての英語を聞き取れる必要などありません。それよりも大切なのは「状況把握力」です。

たとえば、飛行機で客室乗務員が飲み物を載せたカートを押しながら「Would you drink……?」と早口で話しかけてきたとき。全部聞き取れなくても、状況と断片的に聞き取れた言葉で、何を聞かれているかは理解できるはず。ビジネスシーンも同様です。たとえ言葉の前後がわからなかったとしても、基本的な用語さえ聞き取ることができれば、状況や相手の表情から、かなり理解できるものだからです。

次に大切なのは、「異文化理解」。会話はまず直訳すべきなのですが、それでも理解できないとしたら、英語圏独特の文化が背景にある場合があります。

たとえば「draw up」という言葉。直訳では「上に引く」ですが、英語では「止まる」という表現になります。これは、馬車を止める際、手綱を上に引く動作から来ているのです。日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、もし、直訳で理解できなくても、文化的背景を知っていれば、推測することが可能なのです。

そして最後にモノを言うのは「メンタルの強さ」です。私がよく行くシンガポールでは英語が公用語の1つなのですが、「シングリッシュ」と揶揄されるほど訛りの強い英語が話されており、政府が対策に乗り出しているほど。

しかし、当の現地人は「俺の英語がわからないのか」と言わんばかりに、シングリッシュを押し出してきます。このメンタルの強さ、日本人も大いに見習いたいところです。ネイティブではない以上、完璧に話せないのは当たり前。日本人だけが、英語をうまく話せないわけではないのです。

最短で成果を出すなら「単語+文法」を攻略せよ

40代のビジネスマンは、勉強する時間が限られています。もし、最短で効率的に英語を学びたいのならば「単語+文法」から始めるのがお勧めです。

その理由は2つ。単語が理解できれば、会話全体を類推できるから。また、言葉のルールブックである文法を学べば、フレーズを丸暗記する必要がなくなるからです。

たとえば、助動詞willを見てみましょう。中学ではまず、「~でしょう」という使い方を習います。さらに高校では、習慣や習性、拒絶といった使い方を習います。しかし、そんなにいくつもの用例を覚えなくとも「絶対?する」という言葉の核心さえ掴めば、さまざまな例文を丸暗記する必要はなくなるのです。

その単語の覚え方ですが、40代にもなって英単語を丸暗記するのはキツいと感じる人も少なくないでしょう。そもそも、そんなキツいことをやる必要などありません。英単語を丸暗記するのはムダが多く、非効率的な勉強法だからです。

まずは受験英語にありがちな「英単語は丸暗記するもの」という発想を捨てましょう。単語の勉強とは「リソースを使うもの」。つまり、今ある知識を使って、語彙を広げていく作業なのです。

とくに40代ともなると、ある程度の単語は頭に入っているはず。その発想からアプローチすると、中学レベルの単語をおさらいしながら語彙力を鍛えていくことが可能です。

そのためにはいくつかの方法がありますが、1つは「リアリティをもたせること」。具体的なイメージと紐づけて、英単語にリアリティを持たせてあげるのです。

たとえば、choke(息苦しくさせる)という言葉があります。格闘技好きなら、相手の首を絞めつけ窒息させるような必殺技choke sleeper と結びつけることができます。

あるいは、女性であれば、首に巻きつけるタイトな飾りであるchoker をイメージするほうがなじみ深いでしょう。どちらも首を締めつけるという意味から、chokeを使っているというわけです。

また「すでに知っている英単語を強化する」という手も有効です。

たとえば、カクテルやウィスキーをかき混ぜる棒をmuddler(マドラー)と言います。そこからmuddleが(混ぜる)という意味だと簡単に覚えられるでしょう。このように、すでに知っている単語や何気なく使っている単語をリンクさせていくだけで、丸暗記するよりも記憶に定着しやすくすることができます。

とはいえ、単語の勉強は地味なので、何か刺激がないと長続きしません。ときどきリスニングやスピーキングをおりまぜながら、モチベーションアップを図る進め方がお勧めです。

語学は、コツコツと積み重ねることが絶対的に必要なのですが、その一方で、飽きやすいという特徴があるのです。

次から、楽しみながら続けられる英会話習得法と単語習得法をご紹介していきます。

これらを参考にしていただきながら、地道な努力と楽しみながらの勉強を交互に進め、長続きする英語学習をしていきましょう。

「中学レベルの英語」でも大丈夫! 英会話のコツ

1.主語を固定する

言いたい言葉が英語で出てこない……。そんなときは、見切り発車で「(I 私は)」から始めてしまおう。すると、主語を固定することで、次に動詞を探すステップに集中できる。さらに、自分の考えや希望を伝えるときは、たいてい「I」から始まるのが一般的。何かと使える便利なフレーズとして「I’d like to?」(?したい)がある。「I'd like to have a water. 」や「I'd like to know your opinion. 」、「I'd like to visit your country.」などは言えるようにしておきたい。

2.汎用性のある表現を知る

難しい英単語よりも、あらゆるシーンで使える言葉を覚えよう。「available」「comfortable」「OK」はその一例。「available」は直訳すれば「利用できる」の意味。ただ、「Are you available today?」(今日空いてる?)、「This ticket is available」(このチケットは使える)といった使い方もできる。また、「快適な」を意味する「comfortable」も、「I'm comfortable with cooking.」(私は料理に自信がある)といった使い方ができる。最も汎用性が高い言葉は「OK」。「Isit OK?」「 Are you OK?」は、状況やニュアンスでさまざまな意味を帯びる便利な言葉だ。

3.日本語で記憶のトリガーを引く

頭に浮かんだ事象をそのまま英語で表現するには、脳に「英語回路」ができていないとなかなか難しい。どうしても英語が思い浮かばないときは、窮余の策として「まず日本語で言ってみる」という手がある。日本語で「私は駅に行きたいんです」と小さな声でつぶやくと、その後「I want to go to the station.」と詰まりながらも英語が出てくることが多いのだ。これは、日本語でもいいのでとりあえず言ってみることで、言語の記憶を掘り起こすトリガーが引かれるから。いざというときのために覚えておこう。

4.英和辞典よりも日本語の辞典を引け

辞書や参考書にある訳語は、馴染みの薄い言葉が多いもの。たとえば、arbitraryという単語は「恣意的な」という訳語がついているが、日常的に使う言葉ではないため、とっさに口から出てこない。それよりも、「気まぐれ/自分勝手」といった具合に、普段使う言葉に落とし込んで覚えよう。馴染みのある言葉だと、会話の中ですっと使うことができる。そのためには、英和辞典や参考書で調べた意味をそのまま覚えるのではなく、場合によって、日本語の辞書で調べて、簡単な日本語に変換してから覚えるのがお勧めだ。

5.画像が浮かぶくらい音読する

話すたびに、頭の中で「英語→日本語」と変換して理解しているようでは、スムーズな会話は成り立たたない。日本語を経由せず、英語をストレートに理解できる「英語回路」を作る方法は「音読」に尽きる。たとえば、「証明書」はcertificateという。しかし、ただこの単語の字面を覚えるだけでは、会話で音を聞いても一瞬で理解することはできない。声に出して読み、舌になじませ、耳に馴染んだときに、初めて意味が脳に一発で伝わる回路ができるのだ。

6.知らない英単語は聞き返せ!

知らない単語に出合ったら、恥ずかしがらずに聞き返すべき。そのとき覚えておきたいのは、「What do you mean by ○○?」(○○ってどういう意味?) や、「what should I say in this situation?」(こんなとき何て言うの?)というフレーズ。ある単語が聞き取れなかったときは、「what 」で代用する。たとえば、「He loves surfing.」の「surfing」が聞き取れなかったら、「He loves what?」と聞き返す。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。むしろ「言葉を覚えるチャンス到来!」と考えて、積極的にどんどん聞いていこう。

7.全部聞こうとしない

日本語でも周囲がうるさかったり、訛りが強かったりすると相手の言葉が半分ぐらいしか理解できないことがある。それでも大意は理解できるもの。それは英語も同じ。わかる単語を拾いながら、シチュエーションを読めば大筋はくみ取れることが多い。だから、そのシチュエーションに関連する重要単語やフレーズだけは聞き逃さないことが大切になる。たとえば、電話で話す際は「hung up」(電話を切る)、会議では「wrap up」(会議を終える)といった言葉は確実に使うはず。それらを予習しておくといいだろう。

8.単語が出てこないときは、相手に言わせる

伝えたい言葉をどう英語で言ったらいいかわからない場合、相手に答えを言わせてしまうのも一つの手。たとえば、望遠鏡という英単語がわからないとき。「Galileo used it.You use it to watch stars.」というように、自分の知っている言葉で表現してみる。そうして、連想ゲームのように聞いていけば、「Telescope!」と相手が正解にたどりついてくれるはず。ここで使える便利な表現は「You use it to?」(?するために使う)や「a kind of ?」(?みたいなもの)というフレーズ。汎用性が高いので、ぜひ覚えておこう。

40代から英単語を覚える7つのポイント

1.英語→日本語の順で覚える

ある言語学者の研究によると「母国語→外国語」ルートの言葉の覚え方は、「外国語→母国語」ルートで覚えるのに比べ、約4倍の労力を要するという。つまり、「日本語→英語」で250語の単語を必死に覚えている間に、「英語→日本語」で覚えれば、1,000語はマスターできるということになる。とにかく早く語彙力を高めて成果につなげたいのならば、「英語→日本語」の順番で覚えるのが正解。つまり「社長→president」というルートではなく、「president→社長」というルートで覚えるべきなのだ。

2.カタすぎる訳語は崩す!

辞書やテキストに記載された英単語やイディオムの訳語は「カタすぎる」ことが多い。このカタすぎる訳語が、記憶の定着や言葉の理解を阻害している。たとえば、「as soon as?」は、学校では「?するやいなや」と習うが、日常生活ではこんな日本語は使わない。それよりも、現代語に置き換えて「?次第すぐに」と覚えよう。すると「I’ll call you as soon as I get home」は「帰り次第すぐに、電話します」となって、たちまち生きた言葉になる。まわりくどい表現の訳語は、言い換えてみると記憶に定着しやすくなる。

3.語句の「パーツ」に注目

効率的に英単語を覚えたいのならば、「語句のパーツ」に着目するのもお勧め。たとえば、頭につくsur-という接頭語は、「上」という意味がある。つまり、surfaceは「sur上+face顔」で「表面」という意味になり、surchargeは「sur上+charge料金」で「追加料金」の意味になる。言葉の成り立ちから入るため、丸暗記しなくても記憶に残りやすくなる。この他にも、dis(- 否定)、sub(- 下)、pre(- 前)など接頭語はいくつもある。この型を知っておけば、初めて出合う言葉でも、なんとなく意味が類推できるようになる。

4.2つに分解して覚える

英語には、2つ以上の語から成り立っている言葉がたくさんある。たとえば、「overlook」(大目に見る/見落とす)は、over(向こう)+look(見る)の組み合わせ。わざと向こうを見れば「大目に見る」となり、うっかり向こうばかり見ていれば「見落とす」ことになる。また、masterpiece(傑作)は、master(巨匠)+piece(1つ)で、「巨匠が作った1つの作品=傑作」という意味になる。このように、長くてとっつきにくそうな単語でも、分解してみると2、3のシンプルな単語から成り立っていることは多々あるのだ。

5.「ingを取るだけ」で覚える

カタカナ英語として定着しているingがついた単語をよく見かける。たとえば、サラダにかけるドレッシングは、dress(飾る)に「-ing」がついた言葉で「サラダを飾る」という意味。また、予約が重なるダブルブッキングという言葉があるが、booking(予約をとる)は、book(帳簿・本)に「-ing」をつけた言葉。bookには、帳簿に書き込むという意味があり、派生して予約するという意味になった。本来の意味がわかれば、dressing the shop windows(ショーウインドを飾る)、book a room(部屋を予約する)も覚えやすい。

6.派生語は無視して1つだけを覚える

1つの単語につき、複数の意味や反意語・同義語を併記した単語帳は多いが、無視すること。まずは、「これだけは覚える」という最小の分量で学んだほうが、結果として記憶の定着率がいいからだ。たとえば、chargeという動詞は「請求する/突撃する/圧迫する/告発する」など複数の意味がある。初めて出合う単語の意味を全部覚えようとしたら、頭の中で整理しきれず中途半端な記憶になってしまう。「charge=請求する」の意味だけ覚えれば、「記憶の核」ができ、脳に定着する。核につけ足していくほうが容易なのだ。

7.理屈を理解し、感覚的イディオムの意味をつかむ

「stand by」「stand for」など「基本動詞+前置詞」で成り立つイディオムは、前置詞しだいで意味が大きく変わるクセモノ。しかし、「直訳」してみると意外と意味が見えてくる。たとえば、stand by(傍観する/味方する/待機する)。前置詞byの原義は「近くに」という意味なので、「by(近くに)+stand(立つ)」。直訳で意味を押さえれば、意味を感覚的につかめる。前置詞を「記号」として暗記するのではなく、どのような意味を持っているのかを理解すれば、イディオムは丸暗記ナシでマスターできるのだ。

関 正生(せき・まさお)英語講師・語学書作家
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。TOEICテスト990点満点取得。予備校デビュー1年目から、講義を担当する校舎すべてで、常に最多の受講者数を記録。現在はリクルート運営のオンライン予備校「受験サプリ」、TOEICテスト対策「資格サプリ」でも講師を務める。『世界一わかりやすい英語の発音の授業』(KADOKAWA )など、英語に関する著書多数。週刊英和新聞『朝日ウィークリー』でコラム連載中。(取材・構成:麻生泰子)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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