PwC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)による「2050年の世界レポート」の最新版が発表され、新興国経済が予想以上の速度で急成長を遂げると予測されていることなどが判明した。
日本を含む先進国は米国をのぞき、軒並み後退すると結論づけられている。まずは2016年と2050年の購買力平価(PPP)調節後のGDP成長率を見てみよう。
購買力平価(PPP)調節後のGDP(国内総生産)トップ20カ国
20位 ベトナム(2016年順位:32位)
19位 フィリピン(28位)
18位 韓国(13位)
17位 イラン(18位)
16位 パキスタン(24位)
15位 エジプト(21位)
14位 ナイジェリア(22位)
13位 サウジアラビア(15位)
12位 フランス(10位)
11位 トルコ(14位)
10位 英国(9位)
9位 ドイツ(5位)
8位 日本(4位)
7位 メキシコ(11位)
6位 ロシア(6位)
5位 ブラジル(7位)
4位 インドネシア(8位)
3位 米国(2位)
2位 インド(3位)
1位 中国(1位)
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日本は2030年を境に大きく失速、代わって新興国が飛躍
このレポートはPwCが2006年以降定期的に更新しているもので、作成時期から2050年にかけての主要32カ国のGDPを測定・予測したものだ。人口動態・資本投資・教育水準・技術進歩がもたらす傾向を考慮にいれている。
初版のレポートから一貫して、インドが日本から「世界3大経済大国」の座を略奪すると予想されてきた。2013年版ではかろうじて5位で踏みとどまっていたが、最新版では8位にまで後退するという結果に。インドの経済成長に拍車がかかった近年、2030年を境に日本の経済成長を急速に追い越すと見られている。
独、英、仏といった現経済大国も大幅に順位を下げ、代わってインドネシア、ブラジル、メキシコといった新興国が市場を支配する。中国は不動の1位。米露はさほど変動がないものの、米はインドに2位を明け渡すことになりそうだ。
2011年版以降、最も急速な成長が期待できる2大中期発展国として分析対象に加わったポーランドとマレーシアは、対照的な予想結果がでている。マレーシアが27位から24位に前進するのに対し、ポーランドは23位から30位まで転落する。
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経済規模は2倍に、平均成長率は徐々に低下
PwCはランキングの変動を「先進国の経済後退を予期するものではなく、あくまで新興国の経済成長速度の加速を示すもの」としている。つまり先進国経済も成長を続けるが、新興国経済の勢いに圧倒されるということだ。
IMF(国際通貨基金)のデータによると、新興国は2000年以降年間平均5.8%という速度で成長中だ。1.8%前後で低迷している先進国との差は埋めようがない。
特にベトナム、フィリピン、ナイジェリアの3カ国は、予想平均GDP成長率が4.2%から5.1%と飛躍的な成長を遂げる潜在性を秘めている。しかしいずれの新興国にとっても、成長を後押しする政策および経済基盤の維持が必須条件となることはいうまでもない。
長年にわたり世界経済を発展させてきた先進国は、高齢社会化による労働人口の縮小などで成長速度が鈍化し、EU加盟国が世界のGDPを占める割合は10%以下にまで落ちこむと予想。
世界的な年間平均成長率の予想は2020年までは3.5%。その後2.7%に失速し、2031年以降は2.5%、2041年以降は2.4%と低下していく。テクノロジーの進化が生産性をより一層拡大させ、経済自体は2倍以上の規模に膨張するとPwCは見ている。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)
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