英国の国営医療制度、NHS(国民保険サービス)の財政難改善策として、高齢者や身体に不自由のある患者のためにUberを利用するというユニークな発想が、医療コンサルティング・スタートアップ、Ceraから生まれた。

緊急時以外の患者にUberの配車サービスを提供することで、患者の利便性だけではなくNHSの効率性や年間5億ポンド(約697億5411万円)のコスト削減につながると期待されている。

入院の必要がない入院患者が1年間で4割増

福祉大国であるはずの英国だが近年は各セクターが資金繰りに苦戦しており、特に医療、介護面でのサービス縮小が目立つ。病院や介護施設が資金・人手不足などを理由に、次々に閉鎖に追いこまれている。住民税の値上げや20億ポンドの追加資金投入などで対策を打っているが、それで追いつく規模ではなさそうだ。

NHSが直面している深刻な問題のひとつは「bed-blocking(ベッドふさぎ)」と称される、入院している必要のない患者である。退院許可がおりても様々な事情で病院から立ち去ろうとしない、あるいは立ち去れない患者が、昨年には前年比42%増。19万3680人に達したことが最新の統計から判明した。

これらの患者の退院延期の主な原因は、介護にあたれる家族や知人が身近におらず、施設や介護などの手続き完了には時間を要するためだ。その結果、緊急にベッドが必要な患者にベッドが回らないといった問題が、英国各地で日常化し始めた。

Ceraは英国最大規模のNHS信託、バーツ・ヘルスと提携し、患者に最適な医療サービスを手配する医療コンサルタントである。新たな提案はUberの配車サービスを利用して、交通手段へのアクセスにとぼしい高齢患者などが楽に通院できる環境を整えようという試みだ。

一方Uberは2015年に身体に障害者のある乗客をサポートする「UberAssist」、今年1月から車椅子の乗客用サービス「UberWav」などを開始。NHSの患者に交通手段を提供することは新開地開拓のチャンスとなる。

バーツ・ヘルスが3月6日、ウェブサイト上に掲載した情報によるとバーツ・ヘルス自体はUberと正式な契約は結んでいないものの、高齢化社会にともない、今後こうした共有経済のエコシステムが拡大していくと予想される。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)