東芝上場廃止,二部降格
(写真=testing/Shutterstock.com)

米国の発電子会社「ウェスチングハウス」を中心とした東芝 <6502> の巨額損失問題が2016年末に明らかになった。その影響もあり、当初予定だった2017年2月14日の「2016年4~12月期の決算発表」を延期していたが、3月14日に再延期を発表したことで、東芝の株式上場が危ぶまれる事態となっている。次の提出期限は2017年4月11日となり、今後の行方に注目が集まっている。上場廃止か東証二部降格か、そんなニュースがこの数ヶ月ずっと注目されてきた。

しかし東芝のニュースを見て、上場廃止の前にそもそも東証一部、東証二部の違いについてよくわからないという方もいるだろう。そんな方のために、各市場の上場要件を解説したうえで、さいごに市場変更に注目した投資手法についても紹介していきたい。

東証一部、二部上場のために必要なこと

東芝の株式は日本の主たる株式市場である東京証券取引所の一部に上場している。東京証券取引所には、一部や二部、JASDAQ(ジャスダック)、マザーズとに分かれていて、一部と二部は比較的大企業向け、JASDAQとマザーズは新興市場向けと区分されている。

東証一部指定の主な要件は以下の通りだ。
・株主数が2200人以上
・時価総額が40億円以上
・流通株式が2万単位以上
・最近2年間の経常利益の合計5億円以上、または時価総額が500億円以上
・最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし等

東証二部指定の主な要件は以下の通りだ。
・株主数が2000人未満
・時価総額が20億円未満の場合、9月以内に20億以上にならない時、
・流通株式数が10000単位未満、
・流通株式時価総額が10億円未満
・債務超過の状態になった時

東証一部が大企業、東証二部が中小企業というイメージでよいだろう。報道の通りであれば、東芝は上場している東証一部から二部に降格することになる。なお、上場するための基準があれば当然上場を廃止する基準も定められている。気になる方は以下で確認していただきたい。

◯JPX 上場廃止基準
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/delisting/index.html

東芝に限らず、上場企業が市場を変更することはよくあることだ。例えば、スマートホンゲームの「パズドラ」で人気を集めるガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765> は2015年9月に、ジャスダック(スタンダード)から、東証一部に上場市場を変更した。

新興市場の場合は、企業の業務内容やイメージに合わせて、あえて東証マザーズやジャスダックに上場する企業も多い。例えば、スマートホンゲームの「モンスト」で人気を集めるミクシィ <2121> は東証マザーズに上場している。

ただし、マザーズは市場第一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの株式市場と位置付けられている。そのため、上場後10年を経過した場合、上場廃止、マザーズ上場の継続、二部市場への市場変更を選択しなければならない点は覚えておきたい。

東証一部指定替え銘柄を狙うには?

ジャスダックや東証マザーズ、東証二部から、東証一部等の上位の市場に変更することを指定替えと言う。一般的に、東証一部に指定替えの発表があると、その株式の株価は急騰する傾向にある。と言うのも、東証一部銘柄に投資する投資信託(ファンド)は数多く存在する。東証一部に指定替えした銘柄はTOPIXなどの指数や、ファンドに組み込まれる機会が増加するため、株式への買い需要が発生するからだ。

数多くある上場銘柄の中から、東証一部への指定替えを考えている銘柄を探し出すことは可能なのだろうか。答えは可能だ。

東証一部の昇格基準(前述)を見るとわかるが、株主数や時価総額が要件になっている。そのため、要件を満たすために、上場企業は東証一部に昇格するために努力する。例えば、株主数が少ない場合には、株主優待を新設したり拡充したりして、個人投資家の注目を集めようと努力する。他には、立会外分売を利用して大株主の株を幅広く売却して、個人株主の数を増やそうとする。様々な企業努力を行うことができる。

最近は、株主優待の新設や拡充を発表した銘柄に、株主優待の獲得を目的とした優待族や指定替えを狙った投資家の買いが集まり、株価が急騰する場合も多くなってきている。中長期的に好材料でも、短期的には材料出尽くしとなって株価が値下がりする場合もある。高値掴みには注意したい。

このような施策を行っている企業は、東証一部への指定替えを検討している可能性が高いと考えられる。さらに、そもそもジャスダックや東証マザーズから東証二部に昇格した銘柄は、東証一部への昇格意欲が高い企業が多い。そのため、上場企業がどのような方針に基づいて行動しているのかを調査することで、東証一部への昇格を予想して先回り買いを行うことが可能になるのだ。

指定替え銘柄に投資する際の注意点

とは言え、要件が揃っていても、東証一部に指定替えできるとは限らない。さらに、いつ昇格するかもわからない。個人投資家の思惑による先回り買いで株価上昇が先行し、いざ指定替えにならなかった場合には、失望売りが膨らむ場合も多い。

株式投資と言うと、すぐに大きく利益を得られるイメージがある。しかし、東証一部への指定替えによる投資法は、東証一部への指定替えが決まるまで時間と投資資金が拘束される側面は否めない。

最後に、日本取引所グループの市場変更銘柄一覧では、過去に東証一部に市場を変更した銘柄は日本取引所の市場銘柄一覧で確認できる。まずは過去に東証一部への指定替えを達成した銘柄の傾向を分析し、東証一部指定替え銘柄を探す参考にしたい。

◯日本取引所グループ/市場変更銘柄一覧
http://www.jpx.co.jp/listing/stocks/transfers/index.html

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、 メルマガ 発行、講演活動、株塾を行う。