英文,主語,動詞,目的語,3語の英語
(写真=The 21 online)

学生時代、授業で習った難解な英文法に頭を悩ませた経験から、英語に苦手意識を持っている人も多いだろう。しかし、ビジネス英語では複雑な英文法は不要だと言い切るのは、数多くの指導経験を持つ中山裕木子氏。簡単で、かつ確実に伝えられる、「3語の英語」を教えていただいた。

日本人の英語は構文が複雑すぎる

英語を話したり書いたりしているとき、「文法は合っているだろうか?」と考えて、詰まってしまう人は多いのではないでしょうか。

それは、学生時代に習った複雑な文法を、そのまま使おうとしているからです。私たち日本人は難しい文法を使おうと頑張りすぎる傾向があるのです。

その理由は主に2つ。1つは、日本語の文をそのまま英語にしようとしているから。そうすると、英語としては複雑な表現になってしまうのです。

たとえば、「この仕事を引き受けるのは簡単です」というように、日本語では文末に「です」「ます」が来ることが多い。これを英語で言おうとすると、「です」「ます」は英語のbe動詞に当たるので、be動詞を使って「It is easy for me to take this job.」としがちです。でも、「I can easily take this job.」と言ったほうがわかりやすい。「仮主語のit」という複雑な文法を使う必要はありません。

もう1つの理由は、学校の授業では、複雑な文法事項ほど、時間をかけて、丁寧に教わってきたから。その経験から、「英語ではこうした複雑な表現を使わなければならないのだ」と思い込んでいる人が多いのです。

しかし、難しい文法を使いこなすのは大変です。ミスも起こりやすく、伝えるのに時間もかかります。苦労するうえに、コミュニケーションに支障をきたすことが多いわけです。

実際のところ、ネイティブ同士が交わす英語はシンプルです。とくにビジネスの場では、明確に伝えることが最優先。難しい表現をするより、短く、わかりやすく表現することを心がけるべきです。

「主語・動詞・目的語」でたいていのことは伝わる

短く、わかりやすい表現をするためには、どうすればいいのか。それは、「3語で伝える」ことです。

といっても、厳密に3語でなければいけないというわけではなく、「主語・動詞・目的語」の3要素で文を組み立てようということです。

学校で習う英文法の用語で言えば、「SVO」の第3文型に当たります。これより複雑な第4文型(SVOO)や第5文型(SVOC)は、できるだけ使わないようにしましょう。

「この形にうまく当てはめられないこともあるのでは?」と思われるかもしれませんが、少しの工夫で、たいていのことは表現できます。

たとえば、「私は彼女の笑顔が魅力的だと思った」は「I found her smile attractive.」と表現する人が多いでしょうが、「主語・動詞・目的語」の形で、「Her smile attracts me.」と言うことができます。このほうがシンプルですし、動詞を過去形にする必要もありません。

もっと込み入った内容の文でも、この形で表現できます。

「この製品の採用により、費用削減を実現します」なら、「The cost cut will be realized by adopting this product.」と受動態を使った表現をしなくても、「This product will cut cost.」でOK。格段に単純化できます。

気づかれた人もいるかもしれませんが、最も重要なポイントとなるのは動詞の選び方です。具体的な意味を持った動詞を選ぶことで明快な文になるのです。

とはいえ、新しい動詞をたくさん覚える必要はありません。have、 use、 needなど、よく知っている、なじみ深い動詞だけでも、幅広い表現をすることができます。たとえば「この製品に問題が生じています」は、haveを使って、「This product has a problem.」と言えます。

また、受動態を避けて、能動態で表現することも重要です。文を短くすることができますし、ダイナミックな印象にもなります。

「短くて明快な表現だと、わかりやすい一方で、ぶっきらぼうで失礼になるのでは?」と思うかもしれませんが、その心配は無用。ビジネスシーンではむしろ明快な表現が好まれますし、短く言うことで時間的な余裕が生まれるので「落ち着いた人」という好印象にもつながります。

たとえば、3語で「We need a discount.(値引きをしてください)」と伝えるだけでは、相手は不快に思うかもしれません。しかし、続けて、「We have a limited budget this year.(今年はもう予算がギリギリなんです)」と、理由を「主語・動詞・目的語」の形で伝えれば問題ありません。

「3語」で1つの文を作ることで、「1つの文につき、1つの情報を伝える」ことにもなります。すると、聞き手にとっても話を理解しやすくなります。コミュニケーションのストレスを最小化する「3語の英語」を、ぜひ活用してください。

中山裕木子(なかやま・ゆきこ)〔株〕ユー・イングリッシュ代表取締役
1997 年より企業で技術分野の日英翻訳に従事。2000年より特許事務所で翻訳に携わる中で、テクニカルライティングの手法を英語の平易な表現に活かす方法を模索。14年に㈱ユー・イングリッシュを設立。技術翻訳サービス、技術英語指導サービスを提供している。京都大学をはじめ、数々の大学で非常勤講師を務めてきた。近著に『英語は3語で伝わります』(ダイヤモンド社)がある。(取材・構成:林加愛)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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