中学レベルの英語を学び直すだけでいい!?

忙しさや記憶力の低下を理由に、英語の習得を諦める人も多い40代。しかし、彼らこそ英語を学び直すべきだと語るのは、数々の英語関連書籍でベストセラーを連発してきた小池直己氏。しかも、中学レベルの英語をおさらいするだけで、最低限の英語は習得できるという。その具体的な勉強方法を教えてもらった。

英語の基礎は、中学英語でほぼ身につく

グローバル化が進む昨今、英語は欠かせないスキルになりつつあります。しかし、学校を卒業して以来、英語を勉強せずに40代を迎えるビジネスマンは数多くいます。危機感はあるものの、忙しさや記憶力の低下を理由に、英語へのコンプレックスを抱えたまま、習得を諦めてしまっている人もいます。

ただ、そもそも本当に「英語ができない」のでしょうか。私たちの多くは、中高六年間は英語に触れ、基礎は身につけてきたはずです。

実はそこで身につけた英語力は、思っているほど低くはないのです。たとえ、学生時代に勉強したことをほとんど忘れているとしても、一度覚えたことは完全に消え去ることはありません。ポイントを押さえて復習し、その上に新たな知識を加えていくことが、英語を短期間で、効率的に習得する近道なのです。

とはいえ、40代はとにかく時間がありません。中間管理職ともなればひとしおでしょう。そのため、効率的に英語を習得する勉強法が求められます。

では、それはどんな勉強法なのか。そこでお勧めしたいのが、「中学英語」のやり直しです。

というのも、英語の基礎は中学の時点でほとんど学んでいるからです。高校英語は、その知識を応用するだけと言っても過言ではありません。

とくに、多くの方が苦手意識を抱きがちな文法は良い例です。実際に必要とされるのは「be動詞+動詞のing形」や「have+過去分詞」といった時制、「which やwho、that 節」といった関係代名詞くらいですが、これらはすでに中学で習っていることばかり。高校で学ぶことはそれを複雑にしたものにすぎません。

さらに言えば、日常的な英会話においては、関係代名詞すらほとんど使われません。中学英語の中でも、ごく限られた文法のエッセンスを知っているだけでほとんど間に合うのです。英会話に限って言えば、中学英語の文法ですら、すべてをおさらいする必要はないのです。

「1を聞いて10を知る」勉強法を

それでも、本当に中学レベルの英語を学び直すだけで大丈夫なのかと疑う方は多いのではないでしょうか。

とくに、大学受験時に大量の英単語やイディオム、頻出表現を丸暗記していた人ほど、中学英語だけで対応することに不安を感じる傾向があるようです。

しかし、40代からは勉強法を根本的に変えるべきです。必要なのは社会人経験や論理的思考力を駆使し、答えを推測していく「1を聞いて10を知る」勉強法。たとえば、英単語を覚える場合は、語源を通して覚えるようにすると、より効率的です。また、単語の意味を、全体の文脈から類推する習慣をつけておくと、未知の単語に出合ったときでも、意味を推察することができます。

たとえば、多くの企業で受験が求められているTOEICテストですが、ここで出題されるのは、会議や交渉・仕入れの一場面、経理の書類など、ビジネスシーンに関連する問題がほとんど。社会人経験があればあるほど、いくつかの言葉を理解するだけでその場の状況が理解でき、会話の内容を推測することができるのです。むしろ、英語力が高くとも社会人経験がない人のほうが、状況や話の内容を把握するのが難しいはずです。

また、ビジネスメールをはじめとしたビジネス文書においては、会話と違って関係代名詞が頻繁に出てきます。

ただ、それは一番大切な用件に対して、細かな条件を追加するという使われ方がほとんどなのです。それさえ知っていれば、たとえわからない単語があったとしても、どの用件に対してどんな条件を追加しているのか、経験から類推することができるはずです。このように、中学英語の基礎知識に加え、「大人の知恵」を働かせて内容を類推することで、知識不足はある程度カバーできるのです。

むしろ、40代以降に英語を学び直すほうが、ビジネス英語については習得が早いとすら言えるでしょう。

大人の英語勉強法3つの必須ポイント

それでも、あくまで中学英語は基礎。いくら「大人の知恵」である程度カバーできるとしても、次のポイントを守って勉強し続けなければなりません。

1つ目は、具体的な目標設定。たとえば、TOEICテストのスコアが現時点で400点なら、次は450点を目指すなどといったものです。目標があればこそ、それを実現するための具体的な勉強法が見えてきて、自ずと勉強する習慣も身につきます。

2つ目は、「勉強以外の英語」に日頃から触れるようにすること。英語の習得にはやはり「量」も必要ですが、忙しい中、時間を作るのはなかなか難しいものです。そこで、趣味の時間にもなるべく英語に接するようにしましょう。たとえば、サッカーなどのスポーツが好きな人は、海外のスポーツ新聞を読むなど、好きなジャンルの英語に積極的に触れるのです。

また、「Asahi Weekly」などの英字新聞を購読するのもお勧めです。社会の動きを捉えながら英語の勉強もできるという、まさに一石二鳥の教材です。

そして最後は、英語の文法を体系的に学び続けること。英語の基礎である文法に関しては特に、学び続けないと使いこなすことが難しいからです。

とはいえ、分厚い文法書を購入し、内容をすべて頭に叩き込むのはむしろ学習効率が低い。最初にも言ったように、目標とすべきは「中学レベルの英文法をマスターする」で十分なのです。

小池直己(こいけ・なおみ)執筆家
広島大学大学院修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の客員研究員を経て、就実大学教授・大学院教授を歴任。「Asahi Weekly 」のコラムや「NHK教育テレビ」などといったメディアを通じて英語を解説。単著でTOEICテスト対策本・時事英語等の書籍を上梓し、佐藤誠司氏との共著でもベストセラーを多数生み出す。近著に『英語でたのしむ「アドラー心理学」』(PHP研究所)がある。(取材・構成:THE21編集部)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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