覚えているようで意外と忘れている!?
中学英語は英語の基礎。とはいえ、実際には意外と忘れていることも多い。そこで今回は、改めて知っておいたほうがいい中学英語の文法のエッセンスを、英語関連のベストセラーを数多く生み出してきた佐藤誠司氏にうかがった。
まずは「超基本」英文法のルール!
単数形と複数形
英語では、単数と複数の区別が非常に重要。それにより主語や動詞の形が変化するからだ。たとえば「There is a notebook.」は複数形だと「There are notebooks.」となる。ご存じのとおり複数形にする場合は「desk」→「desks」のように名詞の後ろに「s」をつけるのが基本だが、「bus」→「buses」のように、最後の単語がs,sh,ch,xなどで終わる場合はesをつける、「lady」→「ladies」のように、単語の最後が「y」で終わるときは「yをiに変えてes」をつけることがあるなど、つい忘れがちなルールも。また、「child」→「children」のように、不規則に変化する単語もある。なお、「pants」や「shoes」のように、2つセットで使うものは常に複数形で表わすというルールも存在する。
動詞
動詞とは、動作や状態を表わす言葉のこと。「A+動詞+B」(AはBをする)というのが、英語の最も基本的な文型だ。動詞は主語や時制によってさまざまな形に変化するが、多くの人が忘れがちなのがいわゆる「3単現のs」。たとえば、「I play tennis.」(私はテニスをする)という文の主語が「彼」という三人称ならば、「He plays tennis.」と、動詞に「s」がつく。主語が「彼女」の場合も同様。ただ、主語が複数になると「Ken and Mary play tennis.」と、動詞に「s」はつかない。むしろ「主語が単数のときにsをつけるが、Iとyouを除く」といったほうがわかりやすい。ちなみにsをつける場合のルールは複数形のsと同様で、「study」ならば「studies」となる。なお、否定文や疑問文の場合は、三人称であっても「s」を取り、代わりに「does」を用いる。たとえば、「He doesn’t play tennis.」「Doeshe play tennis?」と言う。
形容詞
形容詞とは、「大きい」「長い」「賢い」のように、名詞を詳しく説明する言葉のこと。主に2つの使い方がある。「That house is big.」(あの家は大きい)のような「A is B」のパターンと、「That’s a big house.」(あれは大きい家だ)という「名詞の前に置く」というパターン。前者は「AはBです」のように、主語を説明する言葉として使う。後者はここでは、「大きな家」という意味になり、動詞を挟まずに名詞を修飾する。つい忘れがちなのが、「a」「an」「this」「that」や数字の後ろに形容詞を置くというルール。たとえば、「1羽の大きな鳥」は、「big a bird」ではなく「a big bird」と表現する。英語では語順が非常に重要なので、覚えておこう。
副詞
副詞とは、形容詞や動詞や他の副詞、つまり「名詞以外」を修飾する言葉のこと。「very」「slowly」「fast」などが代表的なものだ。「kind」→「kindly」のように、「形容詞+ly」で副詞になることが多い。ただ、「fast」のように形容詞でも副詞でも同じ形のものや、「good」(上手な)と「well」(上手に)のように形がまったく違う場合もあるので注意。副詞は、どんな言葉を修飾するかで、語順が変化する。たとえば、「The fish is very big.」(その魚はとても大きい)のように形容詞を修飾する際は、副詞は形容詞の前に置く。一方で、「He runs fast.」(彼は速く走る)など、動詞を説明する際は、副詞を動詞の後ろに置く。また、「He runs very fast.」(彼はとっても速く走る)のように、「副詞の前に置いて副詞を修飾する」ことも可能。副詞をどこに置くかは混乱しがちなので、ルールを今一度確認しておこう。
前置詞
名詞の前に置かれ、他の言葉との関係を表わすのが前置詞。「in」「on」「at」などだ。「A is on the desk」(Aは~の上にある/いる)など、名詞の前に置かれるから「前置詞」だ。「動詞+前置詞」の形で使用されることが多い。「My father works at that factory.」(私の父はあの工場で働いています)の「で」や、「I get up at seven.」(私は7時に起きます)の「に」といったように、場所や時間などを表わす。覚えるべき前置詞の数は多く、場所を表わす前置詞だけでも代表的な言葉に「at」と「in」があり、前者は比較的狭い場所を表わすのに対し、後者は比較的広い場所を表わすなど、適宜使い分けが求められる。他にも「I go to school by bus.」(私はバスで通学しています)のby「~によって」といった言葉や、「I play tennis with Masao.」(私はマサオと一緒にテニスをします)のwith「~と一緒に」なども前置詞だ。
今さら聞けない「5つの文型」
続いて学び直すのは「文型」。学生時代に、何の役に立つのかわからないまま、ひたすら「5つの文型」を暗記させられた記憶があるのではないだろうか。実は文型をマスターすることには、2つのメリットがある。
1つ目は、英語の処理スピードが速くなること。英文はこの5つのパターンに集約できることがわかると、日本語への翻訳も自ずとパターン化されるので、情報処理のスピードが圧倒的に速くなるのだ。
2つ目は、論旨を的確に理解できるようになること。文型がわかると、文章のどこに重要な情報があるかが推測できる。すると、たとえ意味のわからない単語があったとしても、最も重要な「文の核」だけを探し当てることができるのだ。
英語の基本的な文型は後述する第3文型「S(主語)+V(動詞)+O(目的語)」だが、目的語を必要としない動詞もある。これを「自動詞」といい、「die」「stand」「stop」などが該当する。自動詞を用い、主語と動詞だけで完結するのがこのSVの文型だ。ちなみにこの文章ではM(修飾語)がついており、詳しく文章を説明する働きをしているが、このMは省略可能。注目すべき文の核は、あくまで「Myfather died.」だ
Cは「補語」と言い、SVCの形においては「S=C」の関係を示す。例文では、「彼の息子=医者」である。補語には名詞以外に形容詞も入る。たとえば「She looks happy.」(彼女は嬉しそうだ)は、彼女の気持ち=嬉しいなので第2文型だ。一方、後述するSVO(等3文型)ではS=Oにはならない。ちなみにSVCの基本形はおなじみの「S is C.」。このisの代わりに「become」や「get」「keep」などの動詞が使われるのだ。
この形が英語の基本的な文型。「SはOをVする」となる。ここで用いられる動詞は「他動詞」と言い、目的語に作用したり、何かしらの力を加える動詞を指す。例文でいえば、「あなた」という対象に「愛する」という力が働いていることになる。他動詞は第1文型を作る自動詞と違い、目的語なしで単独で使うことはできない。また第2文型(SVC)では「S=C」の関係だったが、SVOではS=Oにはならない。
第3文型のSVOに対し、目的語Oが2つある文型で「SはO1にO2をVする」となる。O1には人、O2には物が入ることが多い。例文では、O1=「彼」に対して、O2=「いくらかのお金」をあげた、となる。「give」の他には「teach」(O1にO2を教える)や「lend」(O1にO2を貸す)、「show」(O1 にO2を見せる)、「send」(O1に O2を送る)などの動詞が使われる。
第4文型ではOが2つだったが、こちらはOとCが1つずつ。この文例のようにmakeを使う場合は「OをCにする」となる。ポイントは、目的語と補語がイコールの関係になっていること。例文なら「君=幸せ」ということだ。「make」はSVOOの文型でも用いることができ、その場合は「O1にO2を作ってやる」となるが、SVOCの場合の「make」は「作る」ではなく、「~させる」という使役の意味で使われる。他には「call」(OをCと呼ぶ)、「find」(OがCだとわかる)などの動詞も使われる。
今さら聞けない時制
学生時代、私たちを悩ませてきた「時制」と「関係代名詞」。ただ、ビジネス文書において、時制や関係代名詞がたくさん使われるので、避けては通れない。そこで、中学時代に学んだ時制と関係代名詞のエッセンスをおさらいし、苦手意識を克服しよう。
過去形とは、過去の出来事を表わすこと。その際、動詞はさまざまな形に変化する。たとえば「be動詞」を使った「They are kind. 」(彼らは優しい)は、「They were kind. 」(彼らは優しかった)になる。一方、一般動詞を過去形にする際は、動詞の後ろに「-ed」をつけるのが基本。たとえば、「I help my father.」(私は父の手伝いをする)ならば、「I helped my father. 」(私は父の手伝いをした)となる。ただし、「go」→「went」や「get」→「got」といった不規則に変化する動詞もあるので注意。
現在進行形とは、「今まさに何かをしている」状態を指す。たとえば、「A baby is sleeping in the bed. 」は、「今まさに赤ん坊がベッドの中で眠っている」様子を表わしている。注意したいのは、進行形にできるのは「動作」を表わす動詞だけということ。「love 」や「want 」といった「状態」を表わす動詞は進行形にできない。現在進行形は「動詞の原型+ing」となる。その際、「come」→「coming 」のように、「e」で終わる動詞は、eを取ってから後ろにingをつける。また、「cut 」→「cutting 」のように、「m 」「n 」「t」で終わる単語は最後の文字を重ねてingをつける。
続いて、未来の出来事を表わす未来系の表現。これは簡単で、基本的に「will+動詞の原型」という形で表現される。たとえば、「He will be busy tomorrow. 」であれば、「彼は明日忙しいでしょう」という意味になる。ちなみに、「will」は「~するつもりだ」という「意志」を表わすこともある。同じ意味で「be going to~」という表現もある。
動詞の変化形の1つである「過去分詞」を用い、「主語+have(has)+過去分詞」とするのが基本パターン。過去分詞は過去形と同じく動詞の後ろに「-ed」をつけるのが基本だが、「drink 」→「drunk 」のように不規則に変化するパターンも多いので注意。ややこしいのが過去形との違い。現在完了形は「現在が過去に影響を受けている」場合に用いられる。たとえば、「He lost his purse.」という過去形の文章では、「サイフを失くした」という事実だけを述べている。一方、現在完了形の「He has lost his purse. 」という文章は、「彼はサイフをなくし、それが現在に影響している」、つまり「財布をなくして今、困っている」というニュアンスまで含んでいるのだ。また、現在完了形は「経験」「継続」をも示す。たとえば、「I have never seen a UFO. 」であれば、「私はUFOを1度も見たことがない」という「経験」を表わす。また、「I have studied English for two years.」であれば、「私は英語を2年間勉強している」という「継続」を表わすのだ。
今さら聞けない関係代名詞
関係代名詞とは、前にある名詞(先行詞)を説明する働きを持つ品詞のこと。「名詞+関係代名詞~」という形で使われ、日本語では~する[である]〇〇(名詞)」となる。ただ、関係代名詞をいちいち「~する」などと日本語訳する必要はない。「名詞の後ろに修飾語句が続く目印」として覚えておけば十分だ。関係代名詞には、「who」「which」「that」があり、先行詞が人のときは「who」、モノのときは「which」、「that」はどちらでも使用可能だ。
この例では、「the book 」の後に入る「that 」が関係代名詞となる。関係代名詞が作る修飾語のかたまりを「関係詞節」というが、これは、関係詞を取り除いても文章が成り立つのがポイント。考え方としては、「This is the book.」a の文がメインとなり、「the book 」を先行詞として、「I read it yesterday. 」b の文章を後ろにくっつける。その際、b の文章の「it 」は「the book 」のことだから、この「it」を関係代名詞「that」に置き換え、さらに一番前に出すのだ。つまり、「I read that yesterday 」として、「that 」を前に出し、「that I read yesterday 」とする。日本語訳では「これは、私が昨日読んだ本です」となる。
先ほどの例では目的語(O)のitを関係代名詞のthatで置き換えたが、主語(S)を関係代名詞で置き換える場合もある。②の例では、「This isthe car 」と「The car won the race 」に分解でき、最初の文の「the car 」が次の文では主語になっている。そこで、「the car 」を「that 」に変え、「That won the race 」となる。ちなみに目的格の関係代名詞は省略可能だが、主格の場合は省略できない。なお、thatは先行詞が人でも物でも使えるが、「which」は物、「who」は人が先行詞の場合に使う。「who」の場合は目的格と主格の場合で使い分けることもある。たとえば、③の「That is the teacher whoteaches English. 」(あれが、英語を教えている先生です)は「That is the teacher. 」と「He teaches English.」という文を1つにしたもので、先行詞である「the teacher 」=「He」なので、主格である。このときは「who 」を使用する。一方、④の「That is the man who(m) I met there.」(あの人が、私がそこで会った男の人です)は、「That is the man. 」と「I met him there. 」となり、「the man 」=「him 」なので目的格である。このときは「whom 」を使う。なお、whomはwhoで代用してもよい。
佐藤誠司(さとう・せいし)㈲佐藤教育研究所主宰
東京大学英文科卒業後、私立中学や高校教諭を経て、現在は㈲佐藤教育研究所を主宰。英語全般にわたる著作活動を行なっている。著書に『英作文のためのやさしい英文法』(岩波ジュニア新書)や『中学英語を5日間でやり直す本』(PHP研究所)など、多数。(取材・構成:THE21編集部)(『
The 21 online
』2017年2月号より)
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