お金持ちになる人は、我慢しない。
コンビニ生活で小銭を貯めるのはやめて、
「頭と心が気持ちよくなること」にお金をかけよう
お金との付き合い方は、手元の資産額によって変わります。ここからは、資産ゼロから恒産を貯めようとする方に、アドバイスとなるお話をしましょう。(本記事は、菅下清廣氏の著書『今こそ「お金の教養」を身につけなさい 稼ぎ、貯め、殖やす人の"37のルール"』(PHPビジネス新書)の中から一部を抜粋・編集しています)
知るべきは、「貯め方」よりも「使い方」
まず知るべきは、「貯め方」よりも「使い方」です。テレビでは「残り湯を洗濯に使って月1000円節約!」「お昼をコンビニ弁当にして1日300円節約!」なんて節約術を紹介していますね。お金を貯めようとすると、日常の出費をいかに削るか、というほうに考えがいってしまいます。
でも、小銭を貯めるための節約はやっちゃダメ。資産形成は、楽しくないと続かないのです。では、楽しむためにはどうしたらよいか。まず「ケチらずに使うもの」を決めることです。やりたいことにはお金を使う。楽しいと思うことには糸目をつけちゃいけない。「資産形成は我慢を伴ってはいけない」というのが、私の考えです。ただし、人間が楽しいと思うことにはたくさんの種類があります。
たとえばパチンコ。どんなに楽しくても、お金を投じてはいけない代表例です。次にタバコ。健康に害を及ぼす危険があります。さらには、なんとなく出席する飲み会。お金を投じる意味がありません。
これらがなぜダメなのか、は後述するとして……では何にお金を投じるべきか。ひとつは、能力向上につながることです。お金を得るには、「頭」が必要だからです。
私は27歳のとき、メリルリンチに入社しました。それまで日本の大和証券で働いていたため、証券外務員試験には合格していましたが、アメリカの証券会社で働くにあたり、新たに3つの資格を取得せねばなりませんでした。英語力も不足していた私は当時、四谷の日米英会話学院で猛勉強しました。
いまも勉強の毎日です。いまも毎朝6紙の新聞に目を通していますし、昼も夜も多くの方に合い、情報交換を重ねています。競争の激しいいま、勉強を怠ったら結果は出せないのです。結果が出なければ、当然お金にもつながりません。
なかには、代々の土地持ちで、勉強せずに財をもってしまった人もいるでしょう。でも「知的水準の低い金持ち」は、いつか淘汰されます。勉強によって、金を稼ぐための「能力」や「知識」を磨いていないからです。勉強もせずに飲み歩いたり、意味もなくジェット機を買ったりするのがオチでしょう。
頭を良くするためのお金は惜しんではなりません。読書もセミナーも、自分のためだと思ったら、躊躇せずに投資しましょう。
でも残念ながら、勉強ばかりガリガリしても、お金には好かれません。お金は、知的財産を好むからです。
知的財産とは、金融や経済の知識ばかりを指すのではなく、文化への造詣や好奇心も含みます。ですから映画鑑賞が趣味の人は、映画に投資してもOKです。
心の豊かさは、間接的であれ能力向上につながります。映画を見ると、映画好きの方は、「すごく感動した」「主人公のように強い人間になりたい」と刺激を受けます。これは「いい刺激」でしょう。すると人間は、ボルテージが上がってエネルギーに満ちあふれます。
良いエネルギーがあふれると、私たちは生活習慣や態度を改めようとします。よい習慣や姿勢をもつ人には、いい情報や出会いがもたらされます。それがさらに自己研鑽につながったり、よい仕事や就職のチャンスにつながったりします。
これらが、回り回ってお金を生むのです。もちろん「映画好き」が高じて映画評論家などの「映画専門家」になれたら最高ですが、そこまでなれなくても良質の芸術は、「知的バランス」をよくします。映画でなくても、絵画や演劇、自分が好きだと思うものには積極的に触れにいきましょう。
資産形成に我慢は無用。節約を重ね、ギスギスとした生活を送る必要はありません。頭と心が豊かなる、と感じるものには、積極的に投資してください。
自分のためには堅実に、他人のためには大胆に
「お金持ちは、ケチ」の真相。
気前のいい人とケチな人、もう一度会いたいのは、どっち?
だから、自分のためには堅実に、他人のためには大胆に。
女性には、服やバッグをいくつも持っている方がいますね。それも、(怒られてしまいそうですが)一見同じようなものばかり。「自分へのご褒美」という大義名分まで作って、ブランドもののバッグなんかをせっせと買っています。
でも、そんなに必要ですか?
もちろん私も、服は買います。私はイタリア製の洋服が好きなので、1着あたりの価格は安くはないです。でも何着も買ったりしないです。服は2着同時に着ることはできないですから。1週間、毎日違うスーツを着たって、5着あれば足ります。靴も、長く履けることを重視していいものを買いますが、数は持っていません。
時計なんて、わずか2つだけ。スイスの高級時計メーカー「ピアジェ」のものですが、ビジネス用にシンプルなゴールドを、パーティ用にピンクゴールドを購入したくらいです。いずれも華美ではなく、私好みの薄くてシンプルなものです。
同じブランドものですが、先の女性と私は、おそらく違うポリシーでお金を使っています。価値観は人それぞれですが、私のポリシーは1つだけ。
自分のためには「堅実」に、
他人のためには「大胆」に。
スーツや靴は、仕事のツールです。これらのツールは、自分を着飾るためのものではなく、身だしなみであり、相手に安心してもらうためのツールです。
私の現役時代の顧客は、ヨーロッパの富裕層でした。彼ら・彼女らとお会いするときに1万円のスーツでは、「この人にお金を預けていいのか?」と不安を与えてしまいます。
かといって「着飾ろう」「必要以上に高く見せよう」としては逆効果です。そんなものは見破られてしまいます。着こなせていないからです。私はだから、「スタンダードよりも少し上で、安っぽくないスーツ」を選んでいました。
お金はあるのに、なぜ欲しいものをたくさん買わないのか。それは、私腹を肥やすための買物だから。
では、なぜすごく高いものを買うのか。それは、相手に対する身だしなみだから。
スーツや靴などにかけるお金は、見栄を張るためではなく、相手を思った投資であることを忘れてはなりません。
基準は、相手。お互いのビジネスに合ったスタンダード、もしくはその少し上くらいの服装を心がけます。それ以上の不必要なものにまで、お金を使う必要はありません。
そして、少しせせこましい話も。実は、相手を思ってお金を使った方が、自分へのリターンが大きくなるんです。これ、ホントです。
身近な例を挙げましょう。気前のいい人とケチな人、再び会うならどちらがいいですか。おそらく多くの方が、気前のいい人を希望するでしょう。
それと同じで、相手に意識とお金を使える人には、いい人脈がつきます。いい人はいい情報を持っていますから、困ったときにいい情報を運んでくれるのです。お金はこの「人脈」や「情報」からもたらされます。たとえば、いい転職情報は、ネットではなく先輩や知人からもたらされます。いい情報であればあるほど、一般公開されることなく、大切な人に個別に流通するのです。
お金は、降って湧くものではありません。相手視点でものごとを考えられる人のもとに、集まります。これからは、自分へのご褒美はそこそこに、相手視点でお金を使ってみませんか。
オフィスでは絶対に会えない一流のビジネスマンと出会うには?
お金持ちは、「いい場所」に出入りする。
海外旅行はファーストクラスと一流ホテル。
無理して使って、体感せよ。
自分のためには「堅実」に、
他人のためには「大胆」に。
そう申し上げた直後ではありますが、実は出張時や旅行時、私は必ずファーストクラスに乗り、一流ホテルに泊まります。特に古いホテルよりも新しくてモダンなホテルが好きなので、できたばかりのホテルにはお金を投じます。自分のためには堅実……の私ですが、矛盾はしていません。
きっかけになったのは、ウォール街で働いていたときの先輩からのアドバイスです。その先輩は「とにかくいい場所に出入りしなさい」といいました。
飛行機やホテルに限らず、レストランや会員制クラブ、高級スポーツジム等々。先輩はいつも「いい場所」に出入りしてしました。「いい人」が出入りしているからです。
成功の最大の鍵は、いい人に出会うことだと思っています。金融に限りません。どの人のどんな人生にとっても、いい人に出会うことが成功の鍵になります。いい上司に恵まれるか、いい取引先に恵まれるか、いい夫や妻に恵まれるか、それで人生の豊かさが変わります。
先輩は、「いい人はいい場所にいる」と私に教えてくれました。ですから私は、飛行機ならファーストクラス、新幹線ならグリーン車に乗ります。メリルリンチに入った27歳の頃からの習慣です。
ファーストクラスやグリーン車に乗る人は、おそらく一定のクラスの方でしょう。
正直、若いころの私には身分不相応でした。費用の負担も並ではないです。でも、ファーストクラスに乗ることで、それに見合う自分を作ろうという気持ちにもなるのです。
若きころの私に、ウォール街の「いろは」を教えてくれた先輩は、27歳でメリルリンチに入社したのち、研修でニューヨークに行ったときの教育係です。俳優のポール・ニューマンにそっくりだったので、仮にポールとしましょう。
「ミスター・スガシタ、君が将来ウォール街で成功して大金持ちになるために、最も重要な要素は、グッド・ピープルだ」
これがポールの教えでした。そのうえで、ある会員制高級レストランで、運ばれて来たコーヒーカップのソーサーを裏返してみせました。そこには、先輩の名前が入っていました。コーヒーカップやソーサーだけでなく、そのとき私たちが使っていたすべての食器の裏に、先輩の名前が入っていたのです。
彼はそのレストランで、自分専用の食器を持っていたのでした。その格好いいお金の使い方に、「いつか私も」と思ったものです。
彼はもちろん、会員制の高級スポーツクラブにも通っていました。
「オフィスでは絶対に会えない一流のビジネスマンでも、スポーツクラブのサウナでは裸で付き合える」
見栄やおごりではなく、一流の人のなかに身を置き、その場にふさわしい自分を鍛えることが大切だと教えてくれました。
実際には、ファーストクラスで運命の出会いが……なんていうことはありません。だから試しても、直接的な効果はないと思います。「大枚はたいてファーストクラスに乗ったのに、誰とも知り合えなかったじゃないか」と思われるかもしれません。それでも、一度そのなかに身を置くと、彼ら・彼女らに近づこうという気持ちが嫌でも湧きます。
「ファーストクラスの顧客として恥じない格好をしよう」「せめてキャビンアテンダントには笑顔で接しよう」なんて思うのです。そのために、私は一流の場にお金を投じることを勧めるのです。
ファーストクラスに乗るには、結構なお金が必要です。乗り続けるためにどのくらい収入を増やさねばならないのか、乗って恥ずかしくないためにはどんな振る舞いをするべきなのか、そのためには何が足りないのか。身をもって感じることが、自分を引き上げるきっかけになるのです。
菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。