お金持ちは、お金の使い方にこだわりがある。
フェラーリに乗る人が一流とは限らない。

いくら手元にお金があっても、私がお金をかけない、投資しない領域があります。それは、スポーツカーやクルーザーといった贅沢品です。

「お金持ちになってフェラーリに乗りたい」と目標に掲げられることも多いですが、その真意は「フェラーリに乗る人間」「プライベートジェットを買える人間」として評価されたい、というところにあるのではないでしょうか。

なんとなく「見栄」に感じてしまうので、私には不必要です。それよりも、私は何より自分をリラックスさせるためにお金を使います。私の場合、プライベートジェットを持つより、シンガポール航空のファーストクラスに乗った方がよほどリラックスします。

(本記事は、菅下清廣氏の著書『今こそ「お金の教養」を身につけなさい 稼ぎ、貯め、殖やす人の”37のルール”』(PHPビジネス新書)の中から一部を抜粋・編集しています)

もしあなたが何にお金を使ったらいいか悩むなら、基準を明確にするといいでしょう。私の基準は前出の通り、「自分のものは堅実に、他人のためには大胆に」。でもこれは私の基準であって、人それぞれの物差しがあってよいのです。

大切なのは自分にとって大事なものはなにか?

ちなみに私の知人の基準は「なんでも一流のものを選ぶ」こと。歳は私とほぼ同じで、親もお金持ちの二代目社長です。

二代目にも、色々なタイプがいます。若い頃から高級車を乗りまわし、遊び回って、最後はお酒とドラッグに溺れて身を滅ぼす……これが最悪のパターンです。しかし私の知人の彼は、とても「気持ちがよくて、芯のある」二代目。

愛車はベントレー、ゴルフクラブはオークションに出せるくらいの一級品。でも、これらは「見栄」ではありません。彼の人生にとって、最も大事なものは「こだわり」だそうで、その「こだわり」のためにはお金に糸目をつけません。

彼は、趣味で美術品を集めています。一度、買い付けに同行させてもらったことがありました。商談場所も、京都の高級旅館「俵屋」。鑑定士や秘書など、諸々十名位の大所帯が同行します。自分でも目利きはできるようですが、専門家にも同時に鑑定してもらい、掛け軸などを選んでいました。

高級旅館に泊まっていたので食事も美味しいはずですが、そこでは食べず、日本料理の老舗「吉兆」に出向きました。もちろん、先斗町のきれいどころもお呼びして。

すべてが一流で、何もかも完璧を追及しているのがわかりました。成金的な豪奢さよりも「質」を求め、「本物」のためにお金を使う、そんな意気込みを感じました。「質」を求めるには見栄えや下馬評ではなく、それなりの勉強で培った審美眼が必要です。いわゆる二世ですが、「頭のいい二世」だと感心したものです。

大切なのは、「自分にとって大事なものは何か」というコンセプトをもつこと。そのコンセプトに沿ったものであれば、迷うことなく使ってみるといいでしょう。

もっとも良くないのは……

私の場合、本は10冊だろうが惜しまずに買います。DVDも借りずに買います。レンタルできるのに買うのは贅沢ではないか、と思われるかもしれませんが、贅沢ではありません。返す時間が惜しいです。返す時間に、もう一冊読めます。

最も良くないのが、「とにかく使わないこと」です。毎晩貯め込んだ札束をこけ樽の壺から引き出して枚数を数えるなんて、もってのほか。

この本でも、突然クビになっても1〜2年やっていけるだけの恒産は必要だと説いていますが、それにしてもお金は、使わないと自分に戻ってきません。

最近は、ワンマイル族と呼ばれる人たちがいるようです。航空会社のマイルを貯める人ではありません。自分の家から1マイル以内だけで生活している人のことです。

家は小さな賃貸ワンルーム。家財道具はすべて中古品で、趣味は近所の公園や商店街の散歩。その上で、稼ぎを丸ごと貯蓄するのだそうです。お金は貯まるかもしれませんが、自分のための投資をしていない分、学びもありません。これでは、人生先細りです。

必要な貯蓄のため以外のお金は、財布から出しましょう。お金は、使い方によっては人生を豊かにすることができますが、お金に使われると「お金の亡者」になります。すべてを切りつめて貯め込んでいる人も、やはりお金に「使われている」と言えるでしょう。

コンセプトを明確にもち、必要なものには積極的に投資をする。使ってはじめて、自分にはどのくらいの稼ぎが必要かわかるのです。今の収入でどうやりくりするか、というだけでなく、今の収入で足りない分をどう稼ぐのかも考えたいところです。

『『今こそ「お金の教養」を身につけなさい 稼ぎ、貯め、殖やす人の"37のルール"』PHPビジネス新書( 2013/5/19)画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
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あなたにとって、重要な人脈とは?

お金持ちは、「他業種の一流」を大事にする。
業界内での人脈づくりなら、ライバルもとっくにやっている。

お金は、「人」のために使うべきです。でも不必要な交際費は、無駄以外の何ものでもありません。あなたにも心当たりがありませんか? 同僚からなんとなく誘われた飲み会、友達の友達のお誕生日会……本当に出席しなければいけませんか?20代には、結婚式に出過ぎて出費がかさむと嘆く人もいます。

普段の自分の食事はコンビニ弁当なのに、なぜ律儀にご祝儀を配って回るのでしょう。一生の大親友の結婚ならまだしも、大した付き合いもない人の結婚式に、隅から隅まで出席する必要はないのではないでしょうか?

無駄な人付き合いは、お金だけでなく時間も奪います。私は原則として、仕事で必要な方には夜でも会いますが、それ以外は完全プライベートにしています。行きたくもない居酒屋でためにならない話をしても、つまらないですし、プライベートな時間がなくなるだけです。

また私は、日曜は人付き合いに使いません。冠婚葬祭もパスです。先日も、大学の同窓会のお誘いを断ってしまいました。お金がもったいないのではなく、私にとって日曜日は、身体と心をリラックスさせるために必要な休暇なのです。

大ファンである大沢在昌氏の『新宿鮫』(掛け値なしにオススメします!)を読んだり、トム・クルーズ主演の映画『アウトロー』を見たりと、本当に好きなことをして過ごしたいのです。知的恒産にもなるし、気分転換にもなる。

私は映画が好きなので、映画館で映画を見るときも、プレミアムシートでゆったりと自分をリラックスさせ、自分の心と体を休める時間として使っています。

単なる遊び仲間と過ごす時間に、お金を使う必要はありません。かわりに、学びを得られる人脈や大切なパートナー、自分を高めてくれる大切な人へのお金は、惜しんではダメ。線引きをしましょう。

ではあなたにとって、重要な人脈とは何か。それは「他業界の一流」との人脈です。

ビジネスに直結する人脈を得ようとすると、どうしても同業種や業界の人に目がいきがちです。でも、そこに勝てる人脈はありません。ライバルもとっくにやっているからです。

私は1989年に、機関投資家や政府系資金の財務戦略や政策提言を担うラザード・ジャパン・アセット・マネジメントに入社しました。

そこで学んだのは、何万人もの従業員を抱える大企業の社長より、社員10名の一流画廊の店主の方が、はるかにすごい人脈を持っていたということです。

一流の成功者は、一流の文化に触れます。だから画商に人脈がつくのです。その画商との人脈を大切にすることで、私は顧客開拓や情報収集に活かすことができました。

大事なのは、自分の業界以外で一流の人脈をつくること。他業界の一流の人脈は、あなたのライバルがもっていない人脈を抱えています。

とはいえ、一流の方との人脈構築は、簡単ではありません。また知り合えたとしても、ただ「教えてください」「紹介してください」では、大人の付き合いとは言えないでしょう。

そんなとき思い出して欲しいのは、のちの豊臣秀吉である木下藤吉郎です。仕えていた殿様の草履を懐に入れて温めていたという彼は、相手のためを思い、知恵と工夫を自ら「ギブ」することで、結果として有益な「テイク」がもたらされました。

人脈構築も同じです。私がメリルリンチで法人営業を担当していたとき、大手商社の財務部長に自分なりの情報を日々お持ちしていたのですが、全く相手にされませんでした。

でももう一度自分が持っていった情報を見直し、財務部長が望んでいることを最優先で考えられるようになったとき、大きな取引が舞い込んだのです。それが私をトップセールスマンに押し上げました。

もし、なんとなく誘われるままに参加している飲み会があるなら、「参加する人は一流か」を考えてみてください。場の雰囲気に流されれば流されるほど、あなたは一流から遠ざかります。

菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。