毎年、新入社員を迎えるこの時期になると、「今年の新人は〇〇タイプ」という話題を耳にするようになる。いつの時代も特別な人種のように扱われてきた新入社員だが、このところは「モンスター新人」が注目されているらしい。「モンスター新人」に関するアンケートによると、新入社員との間に価値観や世代の違いを感じたことのある人は、67.9%もいることが分かった。

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(写真=PIXTA)

7割近くが価値観・世代の違いを実感

キャリア情報事業・人材紹介事業のキャリアデザインセンターが運営するビジネスパーソン向けメディア「typeメンバーズパーク」が1月に行ったもの。

回答者は20代、30代が多いと思われるが、「新入社員との間に価値観や世代の違いを感じたことがあるか?」との問いには、7割近くが「はい」と答えている。新人が起こした具体的なエピソードとしては、「先輩に教えてもらったことが理解できずにキレる」「プライベートの飲み会を優先し、上司の送別会を欠席する」などが紹介されている。

また、「『それはないでしょ!』と感じた言動」については、「会社を辞めるので上司にも伝えて欲しいとLINEで頼まれた」といったコメントも。新人に対しては、「目上の人をナメている」「やる気を感じない」という印象が強いようだ。

「さとり世代」は欲がない?

2017年に入社する新入社員の多くは、1994年生まれだ。いわゆる「ゆとり教育世代」であり、「さとり世代」とも呼ばれる。「さとり世代」には「堅実」「欲がない」「恋愛に興味がない」「海外旅行への関心が薄い」「気が合わない人とは付き合わない」などの特徴があるとされている。

実際のところはどうなのだろう。2013年に東京広告協会が発表した大学生の「ゆとり教育」に関する意識調査に、興味深い結果が出ている。「さとり世代」を対象に、自分の性格に当てはまる項目をたずねたところ、「海外旅行に興味がある」に当てはまる人は65.8%、「浪費しがちだ」は58.6%、「草食系である」は40.1%という結果となった。世間一般で言われている「さとり世代」の特徴は、必ずしも多数派のものではないということがうかがえる。

物事をタイプ別にグルーピングすると、理解しやすくなったり見えやすくなったりすることがある。世代ごとのタイプを知ることで、相手への接し方を工夫することもできるだろう。傾向を知ることは大切だが、言うまでもなく人には“個性”がある。先入観だけで人格を決めつけることは避けたいものだ。

「モンスター」はあらゆる世代に

冒頭に紹介した「モンスター新人」に関するアンケートでは、「後輩や部下を本気で叱ったことはあるか」という質問もしている。結果は「はい」が30.9%。3割近くの人が、新人に対して「これは見過ごせない」という場面に遭遇し、実際に叱ったことがある、という結果だ。

叱る原因となった具体的なエピソードとしては、「お客様との電話中、無理な要求をされたらしくキレて電話を切っていた」「仕事中にポケモンGOをしていた」「『直行します』と?をついて遅刻を繰り返していた」などが挙げられている。

しかし、困った社員、常識外れの社員を「モンスター」と呼ぶのは、何も新入社員に限ったことではない。パワハラだらけの「モンスター上司」もいるだろうし、極端に自分本位な「中堅モンスター社員」もいるだろう。そんななか、価値観が合わないというだけで「モンスター新人」と呼ばれる新入社員がいるのは、何だか気の毒な気もするのだ。

「モンスター新人」って何だ?

アンケートでは、回答者自身が新人のころの失敗エピソードについても紹介している。たとえば「仕事が終わらないまま帰ってしまい、休みの日に先輩に対応させてしまった」「同期のグループチャットと勘違いして、上司本人に『部長マジうざい』と送信した」「先輩の運転で営業回りをしていた時、助手席でずっと寝ていた」など、数々の失敗が綴られている。

「あの時は、とんでもないミスをしたな」と自身の失敗を思い起こすことによって、新人たちの思いがけない行動にも少しは理解が芽生えるかもしれない。相手を理解しようとせずにレッテルだけ貼っていては、いつになっても平行線のままだ。

小学生の頃からケータイで遊び、中学・高校からスマホを手にしていた世代の新人たちとは、思考回路が違うのも当然だ。それを分かっていながら、価値観の違いを理由に「モンスター」と呼ぶのは、実像を見ようとしていないからだろう。社会にはびこる「モンスター新人」の多くは、私たちの先入観やレッテルがつくった虚像なのかもしれない。(渡邊祐子、フリーライター)

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