花王 <4452> の製品が家に一つもないという人は、まずいないのではないだろうか。私たち消費者にもおなじみの会社であるが、トイレタリー・化粧品という成熟市場を主戦場としながら、4年連続で過去最高営業増益を更新している優良企業でもある。株式市場では27期連続の増配銘柄として、多くの投資家からも一目置かれる存在だ。

今回は、花王に焦点を当てながら長期投資の大切さをみていこう。


5年連続「過去最高営業利益」更新、28期連続増配へ

今年2月2日、花王は2016年12月期決算を発表した。売上は円高の影響もあり1.1%減の1兆4567億円ながら、本業の利益を示す営業利益は10.9%増の1856億円となり、営業利益ベースで4年連続の過去最高益を更新した。

花王の前期末の営業利益率は12.7%で、同業のライオン <4912> の6.2%、資生堂 <4911> の4.3%に比べ高収益を誇っている。ちなみに、トイレタリー・化粧品セクターで花王と並ぶ高収益企業としては、ユニチャーム <8113> の11.0%、小林製薬 <4967> の14.5%などがある。

先に述べた通り、花王は27期連続で増配を実施している企業でもある。これは「連続増配記録」で日本一だ。前期の配当は94円で事前予想を2円上回り前年比14円の増配となった。加えて、花王は自社株買いに積極的な会社でもある。前期は500億円の自社株買いを実行しており、「連続増配」と合わせ株主を重視する会社として、多くの投資家の支持を得ている。

2017年12月期の会社の新予想は、売上0.9%増の1兆4700億円、営業利益は7.8%増の2000億円で、5期連続で史上最高益を更新する見込み。配当は14円増配の108円を予想しており、28期連続増配となる見通しだ。

花王の決算資料によると、2016年の国内トイレタリー市場は前年比2%増、国内化粧品市場は同1%増に過ぎない。花王が主戦場とするマーケットは明らかに成熟している。そうした状況にありながらも、花王は新製品による付加価値増、原価ダウン、経営の効率化など様々な経営努力で製造業では驚異的ともいえる業績を達成しているのだ。

もし、バフェット氏が日本株に積極的に投資していたら?

ところで、「世界一の投資家」といわれるウォーレン・バフェット氏のポートフォリオをご存知だろうか? バフェット氏は、優良株を割安なときに仕込み「超長期保有」することで、複利のメリットを最大限生かして世界一の投資家と呼ばれるまでになった。「割安株投資」「長期投資」で世界を代表する投資家だ。

2016年12月末時点のバフェット氏の主なポートフォリオは、金融株が約34%、生活必需品が約31%。基本的に自分で理解できない会社には投資しないことでも有名で、長期保有する銘柄には、連続増配、分割、自社株買いで会社の価値を上げていく銘柄が多い。株価はそれほど上がらなくても配当や分割、自社株買いで「実質的な価値が高まる」ことを重視しているようだ。また、そうした「実質的な価値が高まる」銘柄をリーマンショック時のような大きく下げた時に大量に仕入れるといった投資スタイルも大きな特徴だ。

バフェット氏の投資スタイルは、特別な情報など必要とせずに誰にでも参考になる手法といえる。それは、世界中に同氏の投資スタイルを手本とした長期運用を実践している投資家がいることからも理解できるだろう。

花王が27年連続増配といっても、米国企業に比べるとまだまだである。米国企業で連続増配のトップは水道会社のアメリカン・ステイツ・ウォーターの62年連続で、他にも50年以上連続増配企業が19社もある。バフェット氏はその19社の中で60年連続増配のプロクター&ギャンブル、54年連続のコカコーラの大株主である。

そんなバフェット氏が、もし日本株に積極的に投資していたら花王の大株主になっていたかも知れない。

花王株を27年間保有していたら一財産?

花王は「バフェット流の長期投資」に最適な銘柄といえる。連続増配が始まったのは、1991年12月期からで前年(1990年12月末)の株価は1090円だった。当時の1株あたりの配当は7円10銭(分割調整後)、それが今期の見込みでは108円まで増配されている。仮に1990年末から花王株を保有していたとすれば配当だけで1042円となり、それだけで最初の投資額の約2倍になる計算だ。しかも、今年の株価は3月29日に年初来高値の6243円をつけている。昨年の史上最高値は6623円だった。1990年末から保有していれば株価は6倍だ。

もちろん、これからも花王の業績が伸び続け、増配をするという確証はない。ただ、長期投資をするうえでその会社が多年にわたり育んできた「企業文化」を見ることは非常に重要だ。花王には株主に利益を還元し続けてきたDNAがある。環境、社会、ガバナンスなどサステイナブルな「社会への貢献」をしているかを見るESG投資においても常にトップクラスのスコアをだす企業である。筆者としては株式市場が大きく下げたときには是非買いたい株であり、NISAなどで長期投資をする若い投資家にも注目して欲しい銘柄の代表だ。(ZUU online 編集部)