民営化,大阪市,地下鉄,バス
2018年の民営化が決まった大阪市営地下鉄。その先には大阪都構想再挑戦の思惑が見える(写真=筆者)

目次

  1. 大阪市が地下鉄・バス事業を民営化、その目的とは
  2. 地下鉄と市営バスは民営化で新たなスタート
  3. 水道民営化は頓挫、市長は再挑戦の意向
  4. 都構想の住民投票実現に向け腐心する大阪維新

※2017年3月配信記事を再編集したものです。

大阪市が地下鉄・バス事業を民営化、その目的とは

2017年、大阪市が提案していた市営地下鉄、バスの廃止議案など関連3議案が、大阪市議会で可決された。これによって2018年4月、市営地下鉄とバスが民営化され、新たなスタートを切った。市水道局の民営化議案は市議会内で慎重論が根強く、廃案となったが、吉村洋文大阪市長は国会で審議中の水道法改正案が可決されたあと、再チャレンジしたい意向とみられる。

大阪維新出身の吉村市長は、これ以外にも美術館や専修学校の民営化を検討している。相次ぐ民営化の先に見えるのは、2019年の実施を目指している大阪都構想実現の可否を問う住民投票だ。府市の二重行政排除とともに、大阪市の廃止に備えて身軽にする狙いも透けて見える。

地下鉄と市営バスは民営化で新たなスタート

民営化により、地下鉄は市が100%出資する新会社「大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)」に業務を引き継いだ。公営地下鉄の民営化は全国で初めて。バスも大阪メトロの子会社、大阪シティバスに事業譲渡された。

市営地下鉄は御堂筋線、千日前線、谷町線など8路線を持ち、営業区間約130キロ。日本初の公営地下鉄で、大阪市内だけでなく、堺市や吹田市、守口市など近隣6市でも運行している。他に新交通システムの南港ポートタウン線(ニュートラム)を持つ。

2010年度に累積赤字を解消、2015年度は単年度で過去最高の374億円の黒字を出すなど経営は順調に推移している。施設整備のために発行した出資債などを償還した際、国から補てんされてきた地方交付税による財政支援も継続されることになり、民営化しても経営に問題がないとみられている。

新会社に移行すれば、駅周辺のホテル経営など多様な事業展開も可能になる。市交通局は「新会社からの税収や株式配当で年間約100億円が市に入る」と説明している。

市バスは土地信託事業の失敗などから約800億円の累積赤字を抱え、2014年度決算で財政健全化法に基づく経営健全化団体に転落した。民営化にあたっては、市と市営地下鉄が貸付金、出資金計約674億円を放棄したうえで、地下鉄が新たに資金を拠出し、累積赤字を解消した。

市は民営化により8億5000万円の最終黒字が出るとみているが、バス事業の採算性が低く、将来のサービス低下を不安視する声もあるのも事実。このため、市は少なくとも10年間路線を維持すると市議会で約束した。

水道民営化は頓挫、市長は再挑戦の意向