関西を代表する2つのニュータウンの人口の増減で明暗が分かれている。日本初の大規模住宅都市となる大阪府吹田、豊中両市の千里ニュータウンは、団地の建て替えが進み、人口の回復が進んでいる。これに対し、西日本最大規模を誇る大阪府堺、和泉両市の泉北ニュータウンは、急激な人口減少と高齢化の波に翻弄されたままだ。

老朽団地の建て替えがひと足早く千里で進んだことが最大の原因だが、大阪の南北格差や若い世代の都心回帰も影響を与えているようだ。

千里は老朽団地の建て替えで徐々に人口が回復

ニュータウン,人口減少,過疎化
泉北ニュータウンの光明池地区。大型マンションが並ぶが、ニュータウン全体では人口減少と高齢化に苦しんでいる(写真=筆者)

千里ニュータウンは開発面積1160ヘクタール(11.6平方km)、計画人口15万人。日本のニュータウンの先駆けとして1958年、府によって開発決定され、1962年から入居が始まった。1963年に制定された新住宅市街地開発法の初適用地区ともなり、全国のニュータウン開発のモデルとされてきた。

開発面積のうち、集合住宅と緑地・公園が各21%、戸建住宅が20%を占める。集合住宅は府や府住宅供給公社、都市再生機構などが管理し、吹田市に佐竹台、桃山台など8地区、豊中市に新千里東町など4地区がある。大阪市の中心部から北へ12キロの位置。阪急電鉄千里線の延伸など交通網の整備とともに、関西を代表するニュータウンに成長した。

しかし、やがて建物が老朽化し、千里で生まれ育った子どもたちが独立していく。新規入居者は増えず、取り残されたのはリタイアした初期入居者だけ。高齢化したニュータウンは「オールドタウン」とやゆされるようになった。

人口減少も急速に進む。ピーク時の1975年には13万人近くを数えたものの、2007年には8万9000人余りまで減少した。危機感を抱いた府や吹田、豊中の両市は千里ニュータウン再生指針を策定、若い世代の入居を促す団地の建て替えに動きだした。

先行したのは府と府住宅供給公社。府住宅供給公社は2005年から建て替えに着手し、既に計画した約2400戸を終えた。府も2015年春までに約3000戸を建て替えている。9000戸以上を管理する都市再生機構は、2017年度から順次、建て替えに入った。

建て替えは5,6階の低層住宅を高層住宅に集約する方式が主で、室内も若い世代に好まれる内装に改めている。空いた土地にはマンションが進出した。その結果、人口は2011年から徐々に増加に転じ、2013年に9万5000人を突破、2016年は9万9000人台に回復した。吹田市計画調整室は「建て替えの効果が表れてきた」と目を細めている。

泉北は堺市内だけでピーク時より4万人近く減少

一方、泉北ニュータウンは開発面積1557ヘクタール(15.57平方km)、計画人口18万人。規模は千里を上回り、西日本最大級となる。堺市と和泉市に泉ヶ丘、栂(とが)、光明池の3地区があり、公的賃貸住宅やマンションなどが並ぶ。

入居は1967年から始まった。人口がピークに達したのは1992年。16万5000人が暮らしていたが、子どもたちが巣立ったこともあり、人口減少が急ピッチで進み始めた。

堺市のまとめでは、2016年の人口は泉北ニュータウンのほとんどを占める堺市だけで12万6000人。ピーク時より4万人近く減少している。65歳以上の高齢者が全人口に占める割合も、2010年の23.6%が2016年に33.0%まで上がった。

堺市は2010年、泉北ニュータウン再生指針をまとめ、家賃や通学定期補助など子育て世代の誘致を目指す施策を導入した。府住宅供給公社は45平方メートルの部屋2戸を1戸に集約し、90平方メートルの子育て世代向けにリノベーションしている。

近畿大医学部と付属病院が2023年度をめどに泉ヶ丘地区に移転を予定しているほか、今後府営住宅の建て替えが進んでいく見通しだ。住民手作りの図書館がオープンするなど、地域コミュニティーづくりを目指す動きも住民の間で広がっている。

堺市ニュータウン地域再生室は「官民のさまざまな取り組みが進んできた。今後の建て替えと併せてこれらの施策をさらに推進し、人口減少に歯止めをかけたい」としている。

地の利のハンディ克服へ新しいライフスタイルを提唱

人口で明暗が分かれた最大の理由は、千里でひと足早く建て替えが進んだことだ。千里の街開きが5年先だった分、建て替えへの着手も早かったわけだが、地の利の差を指摘する声もある。

千里は電車1本で大阪梅田へ行けるうえ、京都や神戸に向かうにも便利な場所にある。泉北は大阪難波に近いものの、梅田には乗り換えが必要。京都や神戸になるとかなり遠い。職住近接を好む若者の意識も都心から遠い泉北のマイナスになる。府都市居住課は「地の利で不利な面がある」という。

しかも、大阪は古くから富裕層や若い世代が好む高級住宅街が箕面など北部に多く、南北格差が指摘されてきた。府民が抱くイメージも千里など北摂地方と泉北など南大阪では差がある。

これに対し、泉北では若い世代を中心に新しい街づくりの模索が始まっている。郊外の自然の中で暮らすライフスタイルをPRして子育て世代を集めようとするもので、これまでになかった取り組みだ。若者の価値観に見合う環境を整え、新しいライフスタイルを提供できれば、地の利のハンディを克服できる可能性がありそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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