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建築制限を緩和する条例が施行された大阪市住之江区の咲洲。副都心構想がありながら、今も広大な遊休地が広がる(写真=筆者)

目次

  1. 大阪市の人工島「咲洲」
  2. 業務エリアでホテルやマンションの建設が可能に
  3. 開発の遅れはニュータウンの人口減少にも影響
  4. 市は舞洲、夢洲と合わせ、ベイエリア副都心化に全力

※2017年6月配信記事を再編集したものです。

大阪市の人工島「咲洲」

開発促進へ条例改正大阪市住之江区の人工島・咲洲(さきしま)の建築制限を緩和する条例が2017年、市議会で改正され、施行された。ホテルやマンションの建築を条件付きで認めるもので、訪日外国人観光客の急増で不足が続く宿泊施設を確保するのが最大の目的だ。

咲洲はバブル期に大型施設を建設したものの、第三セクターのワールドトレードセンター(現・大阪府咲洲庁舎)やアジア太平洋トレードセンターが経営破たんし、市に多額の負債を残した。今も草の茂る遊休地が広がるだけに、市はホテルやマンション誘致で一気に開発を進めたい考えだ。

業務エリアでホテルやマンションの建設が可能に

規制が緩和されたのは、市が1989年の都市計画決定で副都心を目指すと位置づけていた咲洲の業務限定エリア・コスモスクエア1期地区約70ヘクタールの一部で、ホテルやマンションを組み合わせた複合施設の建築が可能になった。

コスモスクエア地区は市の誘致に応じ、スポーツ用品のミズノ<8022> 、日立造船 <7004> が進出したものの、バブル崩壊後はオフィスの立地が滞っている。大阪府咲洲庁舎となったワールドトレードセンターの付近には、広大な遊休地が広がり、草が生い茂ったまま。人通りは少なく、かつて想定した臨海副都心には程遠いのが現状だ。

北側のコスモスクエア2期地区は2004年に都市計画を見直し、一部にマンションが立地したが、1期地区は建築規制でホテルやマンションが建てられず、開発が遅れてきた。地区内では総合商社の住友商事 <8053> 、伊藤忠商事 <8001> が、それぞれ2ヘクタールを超す土地を所有する。ともに今後、市と連携して対応を検討しているようだ。

さらに、市はコスモスクエア駅近くの遊休地約4.4ヘクタールを活用するため、プロポーザル方式で開発事業者を募集。2018年1月、大阪の不動産会社、アーク不動産を事業者に選定した。同社は約10年かけてマンションやスポーツ施設、ホテルの入る複合施設などを整備するという。 大阪観光局によると、2016年に大阪府内を訪れた外国人観光客は対前年比3割増の941万人。宿泊施設の稼働率は東京を上回る混雑ぶりで、予約の取りにくい状況が続いている。市都市計画課は「市内の宿泊施設不足に対応するのが最大の狙い」と説明したが、規制緩和を遊休地開発の好機とも受け止めている。

開発の遅れはニュータウンの人口減少にも影響