西日本最大のビジネス街・大阪市の梅田地区で大学のキャンパス進出が相次いでいる。JR大阪駅や阪急など私鉄のターミナルのすぐ近くでビル建設を進めており、駅地下からそのまま入ることができるキャンパスも登場した。

関西は三大都市圏でひと足早く人口減少に突入した。2018年からは18歳人口が再び減少に転じる「大学の2018年問題」が待ち構える。梅田進出には、学生募集を有利に進め、資金獲得に必要な産学連携を深めることで生き残りを図ろうとする大学の思惑が見え隠れする。

大阪工業大の新キャンパスに学生ら1000人

大学,産学官連携
阪急梅田駅近くにオープンした関西大梅田キャンパス(写真=筆者)

阪急梅田駅から歩いて3分、北区茶屋町に4月、新しいキャンパスが生まれた。大阪工業大が新設したロボティクス&デザイン工学部だ。ロボット工学科、システムデザイン工学科、空間デザイン学科の3学科から成る。

新入生約300人のほか、大阪市旭区の大宮キャンパスにある工学部からも学生が移り、教職員、大学院生を含めて約1000人が集う。新入生が4年になる2020年には、約1300人に達する見込み。

キャンパスが入るのは繁華街の一角に建てられた地下2階、地上21階の自前の高層ビル。高さ125メートル、延べ床面積3万1000平方メートルあり、「OIT梅田タワー」と命名された。企業とロボット開発などを進める交流スペースや、音楽演奏や講演会用のホールが置かれたほか、大阪の街を望める展望レストランも開設されている。

梅田地下街と直結しているため、雨の日に傘を差さずにたどりつけるのが学生にとってうれしいところ。シンガポールで大人気の牡蠣専門店も関西に初出店、学生以外でもにぎわっている。

梅田はJR西日本、大阪市営地下鉄、阪急、阪神が拠点駅を置く。利便性は大阪随一で、都心志向がある学生を集めるのにはうってつけの場所だ。西日本最大のビジネス街であることから、企業と産学連携を図るのにも都合が良い。

新学部初の一般入試には定員の7倍の受験生が殺到した。工学部から新学部に移ったロボット工学科は前年の5.5倍が9.5倍、空間デザイン学科は6.8倍が10.1倍の人気ぶり。大阪工業大は「都心の新キャンパスは学生に好評」と胸を張る。

関西大は社会人教育の拠点を開設

北区鶴野町に2016年10月にオープンしたのが、関西大梅田キャンパス。学部は置かず、社会人教育の拠点としており、異業種交流サロンを設置して新ビジネスの創出を目指している。

建物は自前の地上8階建て。社会人向けの各種講座を開設しているほか、学生や卒業生の就職を支援するキャリアセンター、起業家育成窓口を設けている。ビジネス街との近さを最大限に生かし、社会人学生を集めようとしているわけだ。

ツタヤ書店やスターバックスコーヒーが入居する一方、イベント会場となる250人収容のホールが設けられた。中にはふらっと立ち寄り、イベントに参加する社会人もいるという。関西大は「オープンからの半年間で起業などのイベントを120回開催し、500人ほどが訪れた。梅田が持つ地の利があってこその成果だ」と述べた。

京都市に本部を置く大学では、立命館大が阪神梅田駅から歩いて3分の北区小松原町にあるオフィスビルに2011年、進出した。学生らの就職支援活動や社会人向け大学院を開設したほか、市民向け公開講座を開いている。

立命館大は中央区北浜に大阪オフィスを開設していたが、より高い利便性を求めて梅田地区へ移転した。入居したビルは梅田の地下街と直結している。立命館大は「移転後1年で利用者が1.5倍に増えた」と振り返る。

大阪市によると、梅田地区には2000年の関西学院大をはじめ、宝塚大、同志社大など次々に大学が進出し、24校を数える。オフィスビルに入居してサテライトキャンパスを開設する方式が多いが、自前のビルを建設する例が増えてきた。

進出校には、関西だけでなく、東京や海外の大学もある。大阪市立地交流推進部は「大学が集まり、産学連携が進めば、企業誘致へ道が開ける。都市のイメージアップ効果も大きい」と歓迎している。

忍び寄る「大学の2018年問題」

少子化とともに減少してきた18歳人口は現在、一時的に横ばいで推移しているが、2018年から再び減少に向かう。2016年の総数は119万人。2031年には100万人を割り、2040年には80万人ほどまで減ると推計されている。

逆に1990年に507校だった大学数は、2014年で781校に増えた。 私立大は既に過当競争となり、2015年度で43.2%が定員割れの状態。地方を中心に廃校や吸収合併、キャンパス廃止を強いられるところが相次いでいる。

さらに18歳人口が減少すれば、大都市圏でも大学の淘汰が始まりかねない。このため、各大学は少しでも便利な場所にキャンパスを移し、学生を確保しようとしている。首都圏と関西で都心部への人口集中を防ぐために施設拡大を規制した工場等制限法が、2002年に廃止されたことも大学の都心回帰を後押しした。

中でも大阪は都心回帰の動きが梅田地区に集中している。統合計画がある大阪府立大と大阪市立大はグローバル人材の育成拠点となる新キャンパス設置構想を掲げ、JR大阪駅北側のうめきた2期開発エリアを念頭に置く。大学の梅田集中の流れは今後も続きそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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