はじめに
「東京一極集中」の弊害が指摘される中、関西では、西日本の中心としてのかつての地位と賑わいを取り戻そうと、自治体や経済界によるさまざまな取り組みが行われている。また、日本を訪れる外国人観光客が急増する中、関西に目を向ける観光客も増えてきている。
関西は東京を補完する西の一極としてよみがえることができるのか。関西の現状を報告する。
※2018年5月配信記事を再編集したものです。
ミナミに活気をもたらした外国人観光客
大阪ミナミへの訪日外国人観光客急増が大阪経済に異変を起こしている。外国人観光客が集中する難波、心斎橋などミナミの地価は、公示地価の最高価格が1970年の調査開始以来、初めて梅田などキタを上回った。難波の高島屋大阪店は2018年2月期の年間売上高が66年ぶりに東京日本橋店などを抑えて同社の国内店舗でトップに立っている。
ミナミでは商店街の売り上げが急増しているほか、外国資本の不動産売買も活発化してきた。新今宮などミナミの周辺地域で相次ぐホテル投資も、ミナミの地価を押し上げる格好となり、当分の間勢いはとまりそうもない。
黒門市場は朝から押すな押すなの大盛況
浪速っ子の胃袋を江戸時代から支えてきた大阪市中央区日本橋の黒門市場。200店近い店舗が並ぶアーケード内は、午前中から観光客で混雑が続く。話す言葉は英語のほか、中国語や韓国語。ほとんどが外国人で、食べ歩きを目当てに集まってきた。
精肉店で人気は1枚2,500円の神戸牛ステーキ。鮮魚店では3,000円を超すマグロの切り身が飛ぶように売れている。黒門市場商店街振興組合のまとめでは、2017年の来場者は1日平均約3万人に達した。実に5年前の1.7倍だという。台湾からグループで来た女性(22)は「ミナミは安くておいしい。絶対にまた来る」と笑顔を見せる。
外国人観光客の増加を意識して商店街振興組合では従業員向けの英会話教室を開くなど外国人対策に力を入れてきた。多くの店が外国人向けにテイクアウトの食べ物を並べ、片言の英語や中国語で売り込んでいる。
黒門市場商店街振興組合の山本善規理事長は「外国人観光客の定番はかつて、京都と奈良だったが、黒門市場でおいしいものを食べる楽しみが定着した。外国人の好みが爆買いから体験に変わりつつあることも追い風になった」と胸を張る。
大阪観光局のまとめによると、大阪府を訪れる外国人観光客は2017年で初めて年間1,000万人を超え、1,111万人に達した。三菱総合研究所によると、2016年にミナミを訪れた外国人観光客は700万人を超え、キタの550万人、京都市東山地区の480万人を上回り、関西でトップに立っている。