地銀, 金融庁, 報告書
(画像=Webサイトより)

目次

  1. 大阪を舞台にした関西地銀の新たな戦い
  2. 全国23県で地銀の存続が困難
  3. 過疎地域では既に高齢者人口も減少へ
  4. 大都市大阪に地方の地銀が続々と

※2018年6月配信記事を再編集したものです。

大阪を舞台にした関西地銀の新たな戦い

地方の急激な人口減少と日本銀行のマイナス金利政策のダブルパンチが、地方銀行の経営に深刻な打撃を与えている。今後も地方経済の急速な縮小で貸出の大幅減少が見込まれることから、金融庁有識者会議は地銀1行でも存続困難な地域が青森、奈良など23県に及ぶとする衝撃的な報告書をまとめた。

こうした状況の中、関西や周辺の地銀は人口や企業が多い大阪府へ進出しようとする動きを強めている。大都市を舞台に地銀の生き残りをかけた激しい戦いが幕を開けた。

全国23県で地銀の存続が困難

金融庁有識者会議の報告書では、都道府県境が入った日本の白地図にところどころ、赤い色が塗られている。2016年3月の各地銀決算を基に都道府県内で得られる本業(貸し出しと手数料ビジネスの合計)の収益で地銀1行分の営業経費がまかなえないと予測された地域で、地図は九州から四国、中国、南近畿、北陸、北東北を赤く染めている。

報告書をまとめたのは、金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」(座長・村本孔成城大名誉教授)。東京都を除く全道府県を2行での競争が可能な地域、1行単独なら存続可能な地域、1行でも不採算の地域に分類した。

その結果、2行存続が可能と判断されたのは、神奈川、愛知、大阪、福岡など10府県。1行なら存続可能が北海道、長野、京都、熊本など13道府県で、1行でも存続困難とされたのが秋田、群馬、和歌山、島根、長崎など23県に上る。

地銀は貸出利ざやの縮小を貸出残高の増加で補おうとしているが、株式配当金、投信解約益を除く資金利益は2007年度以降、落ち込み続けている。2007年度に全国合わせて4兆5000億円近かった総額は、2016年度で3兆5000億円余りになった。

これに伴い、本業利益も右肩下がりが続く。2016年度は4000億円を下回り、2007年度の半分以下に。当然のように本業赤字の銀行は急増を続け、2016年度で半数を上回る54行に達した。「地銀冬の時代」が続いているわけだ。

報告書は「今後も人口や企業数の減少で貸出需要が縮むと考えられ、収益をさらに悪化させる要因となる。地銀の体力が奪われれば、金融仲介機能の発揮に悪影響が及ぶ」と厳しい見方を示している。

過疎地域では既に高齢者人口も減少へ