三菱地所が積極投資に舵を切っています。2014年5月に発表した新中期経営計画では、2014年度からの3年間で1兆円強の投資を予定しております。うち設備投資は8,000億円で、主に丸の内及び海外ビル事業に使うとのことです。また、エクイティ投資は海外を中心に2,000億円程度を予定しています。2014年3月期の設備投資総額は約1,600億円であることから、投資額を増やして積極経営に舵を切ることになります。この三菱地所の戦略転換の理由は何でしょうか?本稿では、三菱地所の収益面、市場環境面、競合との関係から考察して参ります
三菱地所の決算、株価について
三菱地所の2014年3月期決算は、売上高にあたる営業収益が10,752億円(前期比1,481億円、16.0%増)。当期純利益が642億円(前期比187億円、前期比243%増)となり、大幅な増収増益を達成しました。また、三菱地所が中期経営の利益目標として設定しているEBITDA(税払い・税金・償却前利益:キャッシュフローの創成能力を表す指標)も2,463億円(前期比457億円、22.8%増)有利子負債も前期比△1,123億円となり、財務面でも改善しております。また、株価についても5月8日の決算発表時では2,400円台前半だったのが、その後上下を繰り返しながらも上昇傾向にあり、6月20日には2,600円を更新する場面もありました。このように、財務指標面、株価面では好調が続いており、負債も減少していることから、財務面からは積極投資を行う状況は整ったと考えられます。
三菱地所の投資の概要
では、三菱地所は中期経営でどのような投資を行っていくのでしょうか?先日発表した中期経営計画からは、
l 丸の内地域の再開発
l 市街地再開発事業への積極的な取り組み
l アウトレット事業の既存施設の増床、物流施設の継続開発
l 分譲マンションの安定した供給
l 北米、英国を中心に既存のリソースを活かした事業の拡大
等による保有資産の価値向上があげられています。三菱地所の中期経営計画のポイントは「丸の内」「再開発」の2点といえます。特に丸の内については再開発の端境期であり、中期経営の3年に限れば利益面での向上は限定的であるが、将来の成長につなげるとあります。また、再開発の目的は、既存物件の価値を高めてオフィス賃料の向上を目指することであり、例えば丸の内地区のオフィスであれば、底値であった2012年秋と比較して新規テナントの賃料は10~20%、既存テナントの賃料は5~10%の引き上げを行っているとのことです。
2020年までの事業環境
このように三菱地所が丸の内及び他地区にある既存物件の再開発を行う理由はなぜでしょうか?まずは事業環境の面から考えていきます。現在、東京のオフィス需要は高まる中、供給量は落ち着いており、東京23区のオフィス空室率は下図1のように改善傾向にあります。また、アベノミクスによる株価、地価の上昇、2020年の東京五輪の開催決定など、事業環境としては追い風が吹いているといえるでしょう。海外も同様にアメリカを中心に好景気となっており、アジアも成長が見込まれるなど、良い状況が続いています。
出典:三鬼商事